
第2子の育休に関する記録(前編)
先日第2子の育休(約1か月半)を取得し,満了しました。いつかの誰かのためになるかもしれないと思い,今回の経験を記録に残しておきたいと思います。大学教員という職業に特殊な事情やケースもありますが,職種によらない話も多いかと思います。
ちなみに第1子の時に書いた育休記事はこちらです。
また,同じ業種・分野で私の身近な方々も男性育休についての記事を書いていますのでご参考まで。
育休やそれに関連することについていろんなことを考えていたので,異なる観点から前編・中編・後編の3つに分けて書いています。前編は,育休中にしていたことや育休前後のことが主な話になります。なお,以下には妊娠・出産に関することも書かれていますが,これらはパートナーである妻にその内容を事前に確認してもらったうえで公開しています。
妊娠・出産
まず,第1子の時も思いましたが,子どもを授かること,そして子どもが無事に生まれてくることは奇跡以外の何ものでもないと改めて実感しました。不妊治療などが世間的にかなり認知されてきて,子どもを授かるのが難しい場合があるということはだいぶ理解されてきたと思いますが,授かってから無事に生まれてくるまでもいくつもの困難や壁があります。化学流産,子宮外妊娠,胎嚢確認,心拍確認,〇週の壁,切迫流産・早産など,聞き馴染みのある人もいれば,(特に男性は)子どもがいても案外知らない人も多いかもしれません。
授かること自体もそうですし,いくつもの壁を乗り越えて出産に至るというのはとても奇跡的なことで,妊娠や妊活をしている人は(あるいはそのパートナーも)とてもナーバスな,そしてナイーブな期間を過ごしているということがもっと広く理解されると良いなと思います。そうすれば「生まれてから」だけでなく,「生まれる前」についての配慮・支援の必要性ももっと認知されると思います。
子どもが無事に生まれた後,健やかに育っていくことも同じく奇跡的なことです。自分も含めて,病気や怪我無く子どもが大人になっていくことはとても素晴らしく幸運なことだと思います。
ちなみに,今回は出産に立ち会いました。第1子の時はコロナ禍真っ只中でその余地もなかったのですが,今回はそれがかないました。といっても,帝王切開なのでいわゆる通常の出産の立ち会いとは違うと思いますが(※帝王切開の手術中の立ち会いができる病院は限られると思います),それでも出産の大変さを少しでも知ることができたので良かったなと思います。妊娠・出産する本人は本当に大変です。妊娠してから産まれた後も含めて心身ともに大きな変化が起こり,出産時の恐怖や苦痛は想像だにできません。労り,サポートする以外に男性ができることはずるいくらいに何もありません。仕事や職場においても,この避け難い男女の不平等は強く認識されるべきだと感じます。
育休直前
今回は第1子の時よりも長めに育休を取ることもあり,育休前にいくらか仕事の調整も必要でした。結果的に,育休直前に仕事の締め切りなどが多く来てしまうことになり,それが結構大変でした。育休前後に仕事のしわ寄せがくるのは仕方ないことだととしても,可能な限りスムーズに進めることができると良いなと思いました。あまりにそれが負担だと「育休前後で仕事が集中するくらいなら,あえて育休を取らなくてもよいかな…」という考える人もいると思うので。
育休初期(入院中)
第1子の時と違い,出産直後の妻の入院中は上の子と2人で過ごす日々でした。義理の両親が手伝いに来てくれたのでだいぶ助かりましたが,それがなかったら相当大変だったと思います。それでも朝晩はワンオペだったので,特に登園時間がある朝はいつもバタバタでした。普段の家事をやっていて良かったなと思う部分もありましたが,もちろんそれだけでは足りず,自分がいかに家事を任せていたかを痛感する期間でもありました。この期間は休みをとっていて本当に良かったと思いました。
育休中(退院後)
妻の退院後がメインの育休になりますが,この間は基本的には以前の育休記事で書いたことと同じようなことをしていたので,それらについては省略します。オムツ替えも沐浴も事前に復習していたものの,最初のうちは久しぶりすぎてうまくできませんでした。それでも,一度やり方を思い出してしまえばその後は前回の経験が十分活きたと思います。
今回の育休での大きな違いは,上の子の面倒を見るのが半分くらいを占めていたことです。朝に上の子を園に見送ってからは下の子の面倒を交代で見たりしていましたが,上の子が園から帰ってきてからは公園に連れて行って,その後にスーパーで買い物をして帰ってくるというのが割とルーティーンでした。普段は平日の夕方に子どもとゆっくり時間を過ごすこともないため,これはこれで幸せで尊い時間だったと思います。上の子の面倒を見るということは負担軽減の面で大きかったようで,妻も2人目こそ男性育休を取ったほうがいいと言っていました。園によっては育休中は短時間保育になるところも多いですし(「育休退園」という言葉もあるそうです),パパ・ママを独占できる時間というのも上の子のメンタル面では必要なことだと思います。
育休直前と同様,育休後には仕事のしわ寄せがくるように多くの仕事が詰まっていたので,育休の最後のほうも結構バタバタしていたと思います。これも仕方がないことですが,育休を取る人はそのような心づもりをしておいてもいいかもしれません。
育休中は,扶養や育休に関する書類を大学に提出しなくてはならなかったり,年末調整の書類提出の時期と重なったりして,何だかんだ週に1回は書類提出で大学に行っていた気がします。私は職住近接なので良かったですが,職場が遠い人はこのためだけに外出するのは結構面倒だろうなぁと思いました(こういうのがどんどんオンライン対応できると良いなと思います)。
なお,育休中はちょうど秋学期の開始時期でもありましたので,授業期間でもありました。ただ,幸いなことにこの時期には大人数が受講するような学部の授業は担当しておらず,調整が必要なのは受講者が少人数(ほとんどゼミ生)の大学院授業のみでした。なので,これらの授業については育休中に休んだ分(5回くらい)を育休後に補講する形で対応しました。
育休後
第1子の時に痛感したことですが,本当に大変なのは育休が終わってからです。当然これまでと同じペース・分量で仕事をすることはできませんし,仕事と育児とのバランスを取っていかなくてはなりません。そしてもっと大変なのは,パートナーの育休が終わった後です。特に子どもが熱を出したときなどは,どちらかが仕事を休まなくてはならなかったり,親にも症状が出たりして,共働き育児をしていて最も大変な瞬間かもしれません。
1人目育児をしてよく分かりましたが,朝や夕方以降の時間は子育てしている人にとってはまさにゴールデンタイムです。朝のバタバタした時間に朝食や登園の準備を済ませて送迎し,夕方17時や18時にはお迎えに行って夕飯,お風呂,寝かしつけまでやって20時とか21時です。学外の仕事に関しては夕方以降にオンライン会議などが入ることも多いのですが,様々な事情があるのでそれはやむを得ないとしても,小さい子どもがいる家庭ではその間パートナーにワンオペを強いることになるかもしれないことは理解してほしいと思います(この時間のワンオペは大変ですよ…)。「男性育休取って育休後に毎日帰りが遅くなるなら,育休取らないでいいからできるだけ早く帰ってきて欲しい」という女性の声も耳にしたこともありますが,それくらい夕方から夜にかけては育児が大変な時間帯ということだと思います。
同じく,子どもの年齢にもよりますが,子どもがまだ小さい場合は長期や海外の出張を頻繁にすることもなかなか難しいです。自分の都合で決められたり,早めに調整ができる学会出張などはよいのですが,そうではなく(割と急に)依頼された出張のような場合は意図せず家を空ける期間が続いてしまったり,両親などの第三者からの協力を得られなかったりするので,そうなるとどうしても家庭を優先せざるを得ないこともあります。
パートナーに家事育児の多くを任せている場合は遅い時間の頻繁な会議や定期的な研究会,土日や長期の出張も関係ないのですが,以下の投稿にもあるようにそういう人も少なくなってきていると思います。
今の大学教員に求められる内外の業務って、家事や育児を全部パートナーに任せて全期間(なんなら土日も)全投入してきた先人基準になってて、時代に合わなくなってきてるな、と思うタイミングがある。
— 山田泰之 (@yayamadayay) October 20, 2024
スルッと断れない人とか任期付若手には相当キツイだろうと思う。…
とはいえ,上の世代の人たちが粉骨砕身働いてきてくれたおかげで大学や学会が発展してきたことは間違いないので,そこに対する敬意は持つべきだと思うし,上の世代の人たち(男性たち)全てが家事や育児を任せっきりにしてきたわけでもないと思います。また,自分のキャリアや組織の発展,仕事の社会的意義などを考えれば,何とか頑張ってこなさなくてはいけない仕事も(男女関係なく)当然あるでしょう。これからの世代にとって,個人のウェルビーイングと組織の維持・発展をどう両立していくかを考える事はとても大事なことだと感じます。
以前の育休記事にも書きましたが,子どもがいるいないにかかわらず,どの人も家庭もそれぞれに事情があることは変わらない(持病や親の介護など)と思います。なので,必ずしもすべてを明け透けに話す必要はないですが,お互いが気持ちよく仕事をしていくためにはそれぞれの事情や意向を把握・理解し,尊重し合うことが重要だと感じます。そして,そういう話はなかなかフォーマルな場ではされないので,インフォーマルなコミュニケーションというのも結構大事だなと思っています。