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ぼくの恋愛遍歴

性的マイノリティが気の合うパートナーを見つけることの難しさは過去にも話したが、一応僕には付き合ってもうすぐ1年経つ彼氏がいる。一緒に飲んだり旅行したりする分には楽しい彼だが、共に時間を過ごすにつれモヤモヤする気持ちにさせられる側面もある。
そして、その「モヤモヤする側面」は元彼にはなかった。ただ、その元彼にも別の問題があり結果別れることになった。今回はその辺について話したいと思う。

便宜上、今の彼氏の話から始めようかな。
彼と出会ったのはゲイ用のマッチングアプリだった。ああいうプラットフォームにいる人達の9割はヤリモク。そんな人が多い中、彼からメッセージを貰った。
まず個人的に好印象だったのが、ちゃんと会話できるという点だ。「え、何言ってるの?」と思うかもしれないが、昨今「一言で返す」というのがあまりにも一般化しているため、話も広がらず/深くならず続かないことが往々にしてある。「会話のキャッチボール」というものが無い。そんな一般的な風潮に、出会系プラットフォーム特有の「やれる人探し」がフュージョンしてしまったらそりゃ会話は続きづらい。

ただ、彼は違った。質問にもちゃんと答えるし、質問もし返す。当たり障りのないトピックが多い会話ではあったが、それすら新鮮だった。2人共お酒が好きっていうのもあり、すぐに意気投合しリアルで合うことになる。
出会ってから2ヶ月弱で付き合うことになった。エッチなことは付き合った後に初めてしたので、彼は「ヤリモク」とは対照的な人だった。

第一印象が良くても、次第にネガティブな部分が見えてくるというのは、人間関係に於いて至って普通のことだろう。彼の嫌な部分が顕著になりだしたのは、出会ってから大体4ヶ月が経とうとする頃だった。

まず感じたのは、「彼は好きな人以外に対する接し方がビビるぐらい冷酷である」ということ。僕に対しては基本優しく、デレデレしてきたりするのだが、他の人物と接する時は一気にトーンが変わる。口も悪くなる。
前に彼の友人(ゲイだと知っている)と顔を合わせる機会があった時、その友達は「〇〇って私には冷たいのに恋人に対してはそんなにデレデレするんだね」と驚いていた。それは友達に限らず、店の店員に対してもそうだ。基本無表情で「ありがとうございます」の一言すら言わない。流石に…と思い冗談半分で指摘したこともあるが「そんなことない」の一点張り。

「それほどあなたのこと好きってことじゃん」とポジティブ解釈する人もいるかもしれないが、僕は全然嬉しくない。人によって態度をガラリと変える人は「どっちが本当の顔なんだろ」って思うし、信用できない。

もう一つ引っかかることがある。それは、双方の社会的な意識、社会的な認識における乖離だ。
ある日、彼が突如として「あの政治家って愛妻家なんだって!好感持てる!」と言い放った。この気持ち、分かる人には分かると思うが、こういう一言で僕の中に存在するありとあらゆるバロメーターが一瞬で0にまで下がり、虚無の境地へと誘われる。なぜなら、「社会や政治のことに対して多角的に考えることが無い人なんだな」と思ってしまうからだ。

僕は彼のように印象で物事を判断することに苦言を呈しているので、仮に彼がリベラルな政治家を支持してても、その理由が「あの人パンケーキ好きなんだって!可愛いから支持できる!」的なことだったら当然「そのアプローチは違うでしょ」とツッコみたくなる。愛嬌やカリスマ性がある悪人なんてごまんといる。
こういう事例が少なくないことを考慮するとただ単に「選挙へ行こう」と呼びかけるだけでは意味ないと思ってしまう。

社会意識が無い人を頭ごなしに批判するつもりはない。生活環境によっては、そのようなことにまで意識がいかないこともある。僕の記事内で度々触れているように「社会システム、土台の問題」でもあるからだ。
ここで言いたいのは、あまりにも自分の価値観にはそぐわない価値観を持っている人に対して「モヤモヤする」というのは正当な気持ちだよねという話。単純化するなら「性格の相性と同じぐらい価値観の相性も大事だよね」ということだ。

ここで僕の元彼の話に移行したい。なぜなら元彼は「社会的、政治的な価値観」という観点においてはかなり意気投合する人だったからだ。

軽く元彼と出会った経緯から話すと、元彼はフランス人で、とあるアプリ(出会系アプリではない)で出会った。「自分が興味あるトピックをプロフィールに事細かく設定出来る」というアプリの性質上、自分と同じ趣味であったり自分と同じ分野に興味がある人を見つけやすい。

てなわけで初っ端からまあ会話が弾む弾む。趣味の話から自分の国のこと、お互い性的マイノリティなのでそのへんの話題はもちろん、Joe RoganやAndrew Tate辺りの有害さについて語ったりして盛り上がれる仲だった。イーロン・マスクに関しても化けの皮が剥がれる前から僕達は危惧していた。この先見の明っぷりは褒めて欲しい。

今彼は僕が「精神的に疲れているせいか食欲が湧かない」と言うと「気の所為でしょ」などと平気で言ってくる。
しかし、同じ様な場面で元彼は慎重に言葉を選びながら話を聞いてくれた。メンタルヘルスへの理解が深い人だった。無神経なことを言わず、セーフスペースにいる感じがして凄く良かった。

付き合い出したのは出会ってから約9ヶ月後だった。お互い「告白」という行為が苦手だったのだが、リアルで会う回数も増えてきてから徐々に距離を詰めていき、最終的にタイミングを見計らい「付き合う?」という感じになった。

今彼とは違い、元彼の場合「その人の別の顔」を知るのは早かった。彼は典型的な束縛気質な人だったのだ。
付き合う前ほぼ毎日メッセージでやり取りしてたが、付き合い始めてからというもの、僕がいつも返信するタイミングで返信しないとすぐに「催促メッセージ」を送ってきた。いくら気が合う人とはいっても、こういうとこで適切な距離感が保てない人はキツイ。

何度も「束縛行為」と「距離感」の話をし、理解してもらおうとしたが、徐々に「彼に対する僕の恋愛感情」と「僕に対する彼の恋愛感情」の差が広がっていった。この気持ちを正直に彼に話し、僕も彼のような人と完全に縁を切るのは名残惜しいという気持ちはあったので、話し合った結果「友達関係に戻る」という妥協案で一先ず落ち着いた。

「元彼/元カノと友達関係に戻る」っていうケース、恐らくレアケースだろうが、僕達はそれがベストだという結論に至ったのだ。それ以来メッセージの催促等は無くなった。元彼の束縛癖は「もし自分に興味なくなったら一生会えなくなるかも」という不安感から来るものだったってこともあり、「友達関係までは失いたくない」という僕の気持ちを伝えることで大分安心したようだった。
一度そういう出来事があった後によりを戻す気にはなれないので、元彼に対する恋愛感情は全く無い。気の合う友達、この距離感が一番心地良い。

てなわけで、僕は今の彼氏とどうすればいいのか迷いに迷っている。
一緒に出かけたり他愛もない雑談するぐらいなら楽しい人だ。お互いのスケジュール的に2週間以上会えなくても彼は文句言わないので距離感は元彼よりもリスペクトしてくれている。ただ、上記で挙げたようなモヤモヤがある以上このまま恋人関係を続けてもいいのかって感じ。でも別れ話を切り出す勇気がない。

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