Web3はWebではない

WebではないWeb3

 イーサリアムのブログを読むとそう解釈せざるおえない。WebとはWorld Wide Webの略で、インターネット上で、HTMLドキュメントを配信するシステムで、httpプロトコル上で文書をやりとりシステムである。このシステムは、クライアント=サーバーアーキテクチャを前提としている。

 そしてWeb3はWebではない。なぜならhttpプロトコルを使うとは限らないし、HTMLドキュメントをやりとりするとは限らないし、クライアント=サーバーではなくPeer to Peer(P2P)を前提にしている。WebはP2Pではなくクライアント=サーバーなのでWeb3はWebではない。

なぜ定義がおかしいのか?

 Web3の大元の定義がおかしいから説明しにくいし、理解もしにくい。なぜ分かりにくい言い方をしているかと言えば、Web3自体がベンチャーが投資家からお金を巻き上げるためのマーケティング用語だから。

 Web2.0→Web3ではなく、本来、Web3.0=Web3 ではない。Web2.0はWeb1.0(と定義されたものの)延長線上にあるが、Web3はその延長線上には存在しない。

 言い出しっぺのイーサリウムが、この辺りを故意に間違えているせいで混乱を招いている。

※ ちなみにWeb 2.0も定義がガバガバで人によって定義が変わる。

Web3の根幹

 Web3の根幹にあるのはブロックチェーンを利用したDAO(分散型自律組織)、DAOの根本的な思想はFreeNet、BitTorrent、Winny(P2Pのファイル交換システム)と全く同じ。大きな違いはBitTorrentがWinnyが金銭を目的をしていないのに対し、Web3は金儲けのスキームである点。

 仮想通貨の実態は架空通貨だ。なぜなら仮想通貨にはその価値を担保するものが存在しないから。そのためジェットコースターの様に価値が変動する。そのためブロックチェーンとその周辺技術は、その他多数からみれば得体の知れないものだ。

 このような実態を覆い隠すのに便利なのがマーケティング用語だ。コラーゲンと呼ぶと皮膚によさそうな感じがするが、中身はゼラチンに過ぎない。Web3も似たような理由でイメージをよくする為に言い替えている訳だ。

Web3を推進している理由

 マーケティング的に分散管理を声高々に言う理由と言えば、GAFAと言うよりプラットフォーマーと言う大規模サービスがルールを勝手に作って恣意的な運用していることにある。

 Appleのチェックは恣意的で変わりやすく、Tumblrはアダルトコンテンツを突如禁止し(そした自爆した)、Youtubeが意味不明な理由で収益化の解除をするなど、大規模サービスによる検閲が日常的に行われている。クレジットカード会社がインターネットのコンテンツに口出ししていると言う噂もある。また、AppleやGoogleが過剰な手数料を取っていると問題になっている。また人口1%が世界の富の半分を所有している現状がある。特にアメリカではビリオネアが多数おり、その状態が20年近く固定化している。今のインターネットのスキームでは既にイノベーションが起きないとされている。新しいサービスを開発してもプラットフォーマーに買収されたり、パクられたりして終わってしまう。これが若いアメリカ人の妬み嫉みの対象になっている。

 Web3は、この現状から自由になろうと言うリバタリアニズム的な思想を根幹に押し出している訳だ。

 そしてプラットフォーマーが大量のサーバーと資金力で恣意的運用をするなら中央にサーバーを持たず、ユーザーのリソースを利用するサービスを用意すれば良いのでは無いかと主張するのがWeb3のマーケティング的な定義になる。Web3においてリソースを所有するのはプラットフォーマーではなくユーザーなので、ユーザーの方が強いと主張している。しかもP2Pはサーバーを中継しない。P2Pではプラットフォーマーがサーバーを監視する事による検閲は起こらない。しかし、何度も書くがP2PはWebと無関係。

以前のP2PとWeb3の違い

 そしてBitTorrentやWinnyとの違いは、Web3には所有と呼んでいるシステムとしてNFT(非代替性トークン)やDeFi(分散型金融)がある点が違う。言い替えると金儲けの手段が用意されているかいないか。

 この所有のシステムのあるなしの違いが一番大きな差で、無い=共産主義、有る=資本主義を差す。金になりそうな所には欲の皮の突っ張った投資家や政治家がタカるから「有る」システムの方が潰されにくい。そして、所有者を明確化し権利者にお金が渡る仕組みを作っている。NFTもDeFiもその延長選にある。

※ しかしNFTはDRMの代替技術にならないと意味がない。

 そしてブロックチェーンの参加者はシステムへの寄与度が大きいほどと報酬が与えられる仕組みになっている。ブロックチェーンを使ったシステムには所有の概念があるので参加しても電気代だけがかかり見返りがない。そのため、その分を報酬として返すシステムが概ね実装されている。報酬を目当てにブロックチェーンに参加する行為を仮想通貨界隈ではマイニングと呼ぶ事が多い。しかしWeb3ではこのシステムが自己矛盾を引き起こしている(後述)。

メタバースはWeb3ではない

 ここまで書くとメタバースがWeb3でないのは自明である。メタバースはほぼWeb2.0(ここではajaxを差す)かWebではない独自のプロトコルで実装される。そして肝心なメタバース自体が3D技術を利用した何かでありWeb3と全く無関係。しかも今騒いでいるメタバースはFacebook版Second Lifeとその類似サービスに過ぎない。極論を言えばWeb1.0時代のVRMLもメタバースだ。新規性すら無い。同じ物を名前を変えて焼き直ししているだけにすぎない。その理由の一つは3Dにはマシンパワーが必要で、概ねマシンの制約で限界が来てしまい、そこで技術が停滞してしまうからだ。

 しかもメタバースはGAFAの枠組みから全く抜け出していない。そもそもプラットフォーマー支配から脱しようとするWeb3の思想と完全に相反している。

仮想通貨は架空通貨

 通貨の三大機能はいかの3つだ。逆に言えばこれを満たさないものは通貨ではない。

  • 尺度

  • 交換

  • 保存

 そして、仮想通貨は、これらどの機能もみたいしていない。仮想通貨は価値の尺度にならない。なぜならジェットコースターの様に価格が変動する。超インフレ化の貨幣より達が悪い。これは思惑だけ価格が大幅に上下動するからだ。交換するには敷居が高い。取引所に口座を作らないと使えない通貨が通貨な訳がない。同じ理由で保存の機能もない。これは消失事件を何度も起こしていることで明らかだ。ゆえに仮想通貨は架空通貨だ。

Web3の問題

 この分散システムが上手くいくかと言えば恐らく難しい。ビットコインを初めとした仮想通貨のシステムは持つものがより多く持つ様に設計されている。これを本当に平等にしたいなら所有を放棄するしかないがそうなっていない。所有するものがより多く所有出来る様になっている。つまりWeb3は再分配システムではなく所有の集中を起こすシステムだ。結局のところWeb3は、Web2.0時代の株式による富の集中が分散できると主張しているだけにすぎない。Web2.0時代の富の集中は売上げでは無く、株式のインフレーションにより引き起こされている。これはシリコンバレーのIT企業の株価が異業種の同規模の会社より株価が10倍から100倍も高いことに起因している。

 次に肝心なインターネットの回線そのものを大企業が独占している状況はかわらない。どのようなシステムでも回線を遮断されてしまえば終わり。インターネットにはプラットフォーマー以外にもプロバイダーや国家と言う敵が居るのだ。

 それ以上の問題は、電気の消費量があまりに多すぎて地球に優しくない。Web3は電気代が安くないと儲からないシステムになっている。そして、あまりに電気の消費量が多いのでイーサリアムは実装方法を変更している。この実装方法をサービス提供者が変更出来るシステムと言う点が既にWeb3の主張と矛盾している。後からシステム変更が可能と言うのは、GAFAの変わりにイーサリアムによるコンテンツ・コントールが行われる可能性を示唆している。GAFAも初めから傲慢だったわけでは無い。デファクトスタンダードになってから傲慢になったのだ。特にGoogleは、かつては悪の帝国(MicrosoftやYahoo!)の一極支配を覆す救世主だと思われていた。しかし、今は立派な悪の帝国だ。歴史が繰り返されない訳がない。

 かつてFacebookの仮想通貨計画はアメリカ政府に潰された。通貨発行権がアメリカの国力の根幹なので、それを破壊するシステムは概ね潰される。Facebook以外の存続がまだ認められているのは逆に言えば、未だ脅威になっていないから。中国政府は国への脅威になると知っているので既にサービスを遮断し自らから管理を始めている。

オープンソースを破壊するWeb3

マインクラフトがNFT禁止を明言
https://gigazine.net/news/20220721-minecraft-nft/

 MinecraftはNFT禁止を明言した。これはゲームにNFTを持ち込むことでゲームの等価性が破壊されユーザーの大多数を排除されるからだ。これはMinecraftのコミュニティを破壊し、コンテンツそのものを破壊し、フリーライダーがMinecraftを乗っ取る邪悪な行為だ。そもそもMinecraftはゲームでありツールではない。ツールの様に使うのは個人責任で、それで商売をするのはおこがましい。商売をしたいならゲームの範疇から飛び出してはいけないのだ。オンラインゲームで行われているbotやRMTと全く変わらない。ゆえにMinecraftが禁止するのは当然なのだ。

 オープンソースでも同じことが言える。オープンソースは誰でもソースにアクセスすることができ、誰でも同じ様に使えることが保証されている。オープンソースは相互互助会みたいなものだ。互いのリソースを無料で配布することでサービスコストを大幅に引き下げているのだ。Web3はこのオープンソースも破壊する恐れがある。なぜならWeb3の本質が所有=占有にあるからだ。占有されたものは他人が使えない。そうなるとWeb3はインターネットの破壊者にすぎず、革新者ですらない可能性すらある。NFTがDRMの代替技術として供給出来ない限り、芸術界隈で宜しくやっているだけで済ますべきだろう。希少性が価値となる商売に使えるが、コモディティが価値になる商売には害悪でしかないのだ。

蛇足

 ゴールドラッシュで一番儲かるのはツルハシを売ることだぞ。

#SDGs

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