次期参院選比例代表「議席帯」シミュレーション
先に公開した次期衆院選比例代表のシミュレーションでは、わずかな得票数の差が結果を大きく左右する議席帯とそうでない議席帯の存在を明らかにしたうえで、それが比例ブロックに由来する歪みであるといった議論を行ってきました。けれども比較対象とするべき参院選の全国比例の検討をしていません。
そこで今回は参院選に関して同等のシミュレーションを行い、その議席帯の分布を明らかにしていきます。ドント式など基本的な計算は衆院選と共通するものが多いので、必要に応じて下の記事を参照してください。
参院選の比例代表は全国が一つの区とされているため、全国で合計した票のみを考えるだけでよく、地域分布は検討に入れる必要がありません。その意味で政党の個性は埋没します。
それでは衆院選のシミュレーションのように個々の政党をそれぞれ計算する必要はないのでしょうか。実はそうでもなく、各政党の結果は全く同じものとはなり得ません。なぜなら死票の存在があるからです。
たとえば次の表は、第26回参院選(2022年)全国比例(定数50)のドント式の計算です。獲得された議席は赤い●印で示しました。
細かくて申し訳ありませんが、この表から最も当選ラインに近かった落選者を探すと、自民党の19議席目の96万0855票であることがわかります。つまりこの選挙で1議席を得た政党は、96万0855票を1票でも超えた時点で議席が確定していたというわけです(ぴったり票が同じならくじ引きになります)。
ここで176万8385票で1議席を得た参政党に注目してみましょう。先の96万0855票との差を調べると、参政党が得た票のうち、およそ80万票は端数となって議席に寄与していないことがわかります。このような票は「広義の死票」と呼ばれます。
自民党のような大政党の場合、17議席まで得た後で、18議席目に広義の死票を生じるため、有効に働く票の割合が大きく、議席獲得の効率は一般的に良くなります。対して参政党や社民党、NHK党などでは、1議席目の確保が広義の死票を伴うため効率が悪くなりがちです。
もちろんどの政党も稀にぴったり議席をとることがあるとはいえ、こうした事情は統計的にはやや大政党に有利な傾向をもたらします。そして全国比例であっても各政党の議席計算の結果はわずかに異なってしまうのです。
しかしまず、第一のシミュレーションではその影響は小さいと考えて、全ての政党を統一的に扱ってみましょう。その後に改良した第二のシミュレーションを行うことにします。
第一のシミュレーションでは、一般にA党を考えて、A党に対して最も不利な状況を想定することにします。それはA党の他に政党が1つしか存在せず、A党に入らなかった全ての有効票がその最も大きな政党=単一巨大与党に投じられる場合であると考えることができます。
有権者数と無効率(無効票が投じられた割合)は、最新の国政選挙である第26回参院選(2022年)の値を用いました。すなわち有権者数は105019203人、無効率は2.9754632%です。地域性を考慮する必要がないため、実際に各党がどれだけの票を得たのかといったデータは用いません。定数は現在の50議席として、投票率を45~65%まで、A党の票を0~2000万票まで動かし、A党に入らなかった全ての有効票は単一巨大与党に入っているとして扱います。
選挙と選挙の間には、各政党の勢力が変わるだけでなく、新たな政党が誕生したり、既存の政党が消滅したりします。しかしそうしたことがあっても、無効票を投じる人はあまり変わりません。それをA党と単一巨大与党という単純化したモデルで扱って、リアルな個々の選挙に通用するかを後から確認するわけです。
以下では二つのシミュレーションと妥当性の評価を行います。今回は小さな記事となっていますが、今後も様々な発見を共有できるように頑張っていくので、みちしるべに参加してもらえたらとてもうれしいです。