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青空怪談 〜青空文庫の怖い話50選〜

青空文庫に収録されている怪談や怖い話、超常現象にまつわる話などを50作品、個人的な尺度で選出し、簡単な説明や寸評を付けてまとめました。名付けて「青空怪談」…全然怖くなさそうですね。私的に怖い話が好きで、読むついでに取ったメモがもったいないから共有した、そんな流れです。

怖い話と言っても、様々な恐怖に慣れてしまった現代人にも通用するほどの怖い話は多くありません。だいたい童話や伝承、論文調の作品など、掲載した作品のジャンルは多岐に渡ります。ですので、恐怖を取り扱った面白い文学作品集、としてお読みになると良いでしょう。

また、本来は掲載順も考慮するべきなのですが、そういった編集作業には学がないため、アスキーコード順に掲載しています。つまり何の意図も介在しない並びです。説明を参考にお好きな作品をお好きな順番でお読みください。説明が長い作品ほど面白い傾向にあります。

なお、PCでお読みになる際は、拙作の青空文庫用ブックマークレットを使うと目の負担を軽減できる上に雰囲気も出るのでお薦めです。

長くなりましたが、下記事項にも目をお通しください。
※ 数分から1、2時間くらいで読み切れる短い作品のみ掲載しています。
※ お急ぎの方は👻の憑いている作品をお読みください。特に怖い話です。
※ ほとんどの作品が昭和初期かそれ以前に著されたものです。時代背景を配慮の上でお読みください。

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あじさい

佐藤春夫著。男と女、その女の子供。微妙な関係の重苦しい日常を切り取った作品。だがもちろん、霊も出る。しかし霊の存在は描写せず、存在を匂わせるに留めることでより存在を意識させている秀逸な作品でもある。「子供にだけ見えている」類の話では本作が原点だろうか。

ヴィール夫人の亡霊(「世界怪談名作集」より)

ダニエル・デフォー著、岡本綺堂訳。ある婦人の元へ友人の亡霊が訪ねてくる話。訪ねてくるだけではあるが、18世紀の英国では有名な実話らしく、著者もこの奇妙な事件が真実であることを懇切丁寧に説明している。幽霊を信じていない人向け。

おいてけ堀

田中貢太郎著。本所七不思議のひとつでもある有名な古典怪談の再話。のっぺらぼうの話と言った方が通りが早いか。同じ著者による「築地の川獺」や小泉八雲の「貉」ではカワウソやムジナがのっぺらぼうに化けているので、獣の仕業と考えれば愛嬌も湧くだろう。それはさておき、古典なので一度は読んでおきたい。

田中貢太郎について少し。貢太郎の怪談は青空文庫でも最多を誇っているが、事実を淡々と描写するだけに留めているせいか、ほとんどの作品が怖くない。逆に文学的色合いの濃い作品では、その描写が良いとも言えるが…何にせよ貢太郎の作品に過度の恐怖を求めるのは止め、あくまで文学作品として接することをお薦めする。

ダゴン DAGON

H. P. ラヴクラフト著、大堀竜太郎訳。2015年の翻訳。言うまでもなく、ラヴクラフトの代表作のひとつ。太平洋上で遭難同然となった主人公だったが、一夜明けてみると奇怪な島に漂着していた。そこで見た想像を絶する恐怖とは───と言った出だしから、誰もが知る有名なフレーズで終わる短編怪奇小説。ラヴクラフトにしては大変短い作品なのでさっくり読める。

同様に短いながらも有名なHPL作品「ニャルラトホテプ」も青空文庫に収録されているが、こちらはほぼ散文詩なので怖くはない。

ろくろ首 ROKURO-KUBI

小泉八雲著、田部隆次訳。豪胆な僧による化け物退治の話。ろくろ首と言っても現代において良く知られる「首が伸びる類のろくろ首」ではなく、「首が飛ぶ類のろくろ首」であり、その生態(?)と対処の仕方、そしてもちろん話の筋も面白かった。ちなみに飛ぶ類を「抜け首」と呼び、中国の妖怪「飛頭蛮」が元になっているらしい。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の人となりについては、次男である稲垣巖による回顧録「父八雲を語る」に詳しい。彼が怪談を書く理由、小泉夫人の役回りなどをわかりやすく説明してくれている。「ヘルンさん言葉」は意外だった。

一寸怪

泉鏡花著。明治の世では怪談会というものが流行ったようで、鏡花のような著名な文筆家となると、そこで語った内容が作品として残されている。これもそのひとつ。初めは現代にも語り継がれている簡単な降霊術の紹介と、閑話休題的な話がひとつ、そしてざっくばらんな怪談話がいくつか…と思いきや最後に共通点を挙げて終わり、という内容。怖くはないが、当時の世相が伺い知れるため、史料としても読む価値がある。

怪談一夜草紙

岡本綺堂著。「住むと祟られる」と噂の屋敷で起こった怪事件。その真相は何か、推理しながら読むと面白い。結果的に説明のつかない点は残るものの、それがまた良いし、後味が悪い点も個人的には○。

岡本綺堂について。綺堂は劇作家でもあり小説家でもあり、翻訳家でもある。古今東西あらゆる題材を取り扱い、完成度の高い作品を数多く世に送り出した。中でも江戸を舞台にした半七捕物帳シリーズが有名で、中には「半七捕物帳 ズウフラ怪談」という怪談めいた作品もある。

👻 怪談女の輪

泉鏡花著。怪談らしい怪談。内容は薄っぺらいものの、表題に違わぬビジュアルが鮮明に浮かび上がり、恐ろしさと共に美しさも感じ取れる良著。

👻 海が呼んだ話

小川未明著。少年の隣家に友達の叔父さんが越してきた。なぜ彼は故郷の海を捨ててまで街へ来たのだろうか?そこには美しくも恐ろしい海の話があった…という童話。体裁こそ子供向けの作品だが、山場は中々強烈。そのためか、今になっても多くの翻案が出回っている(時代からして恐らく本作が初出と思われる)。

海坊主

田中貢太郎著。ある漁師の家に不審極まる坊主がやってくる。海坊主であることは表題からも明らかだが、この理不尽な結末は予想できないだろう。

空中に消えた兵曹

田中貢太郎著。飛行機にまつわる珍しい怪談。件の兵曹がなぜ消えたのかを考えると、高所の閉鎖空間による恐怖も合わさり、なかなか恐ろしいものがある。


蘭郁二郎著。朝一番に線路の上で「ポンコツ」(轢死体)が見つかった。そのポンコツを巡って背筋も凍るような事実が明らかになる。ちょっと読みにくい文章だが、話に無駄がないため苦にはならない。そしてやはり鉄道関連の怪談は今も昔も恐ろしいことを思い知らされた。

血の盃

小酒井不木著。婚礼の最中、女の怨恨が凶事をもたらす。「複雑な必然」をテーマとしているだけに、怪談ではないかもしれないが、しかし超常現象ではないと断定もできない、怖い話。

犬神

小酒井不木著。犬神憑きの一族に生まれた男の物語。退廃的で官能的な描写と後味の悪い結末が待っている。オチから連想した作品かもしれない。

甲州郡内妖怪事件取り調べ報告

井上円了著。「人の問いかけに何でも答える正体不明の声」を妖怪研究で名高い著者が調査し、まとめたもの。つまり調査結果であり、論文でもある。文語体なので読みづらいものの、明治期において実地調査に基づく論理的な思考によって解決していく下りが面白い。現代人から見れば「何もそんなことに本気を出さなくても」と引いてしまうかもしれないが、当時はいまだに狐狸妖怪等の迷信が自然科学よりも信じられていた時代だったので、文明人として啓蒙する心づもりもあったのかもしれない。

最小人間の怪 ――人類のあとを継ぐもの――

海野十三著。N博士は山中で小人と出会った。彼らは人類の後釜として世界に君臨するというのだが…。海野らしいファンタジーな話だが、結末にかけて予想外に気味の悪い展開となる。

海野十三のSF小説は青空文庫にも多く収録されている。中でも「十八時の音楽浴」は現代のライトノベルにも通じる斬新な設定が魅力の快作なのでお薦めするところ(実際ラノベでリメイクされている)。

皿屋敷

田中貢太郎著。山場だけなら誰もが知っている番町皿屋敷の再話。江戸時代から伝わる有名な古典怪談だが、お菊が皿を数える場面以外は記憶にないため、あらためて読むと新鮮だった。本作は典型的な皿屋敷の筋書きを簡潔にしたものなので、古典の復習に丁度良い。

山の怪

田中貢太郎著。猟師が山で怪異と遭う話。内容は無難で読みやすい。オチから察するに狐につままれでもしたのだろうか。前半はどこかで聞いたような展開だが、思い出せない。「ヤマノケ」というネットで有名な怪談もあるが、それとは別物。

四谷怪談

田中貢太郎著。名前だけなら誰もが知っている四谷怪談の再話。内容はまったく記憶にないので、これも古典怪談の復習に良い。ただ、伊右衛門の非道さばかりが際立ち、お岩がただただ不憫に思えるため、精神的に追い込まれる話が好きな人向けかもしれない。

貢太郎は鶴屋南北の狂言「東海道四谷怪談」の再話「南北の東海道四谷怪談」も著しており、そちらの方がより小説の体を成している。また、岡本綺堂は「四谷怪談で描かれる人間関係は事実とは真逆である」という考察を「四谷怪談異説」において論拠を交えて展開している。このように四谷怪談は題材として取り上げられること数限りない古典怪談なので、そういう意味でも一読しておきたい。小栗虫太郎の「人魚謎お岩殺し」など、古典の上に成り立つ話もある。

子供の霊

岡崎雪聲著。他愛もない心霊現象の話だが、著者が実際に体験したことのようで、それはそれで青空文庫に収録されている作品としては珍しいと思われたため、いちおう掲載した次第。初心者向け。

死屍を食う男

葉山嘉樹著。山奥にある旧制中学校の寄宿舎で起きた、誰も知り得ない秘密の事件。言葉選びが上手いせいか読みやすく、冒頭から引き込まれた。昭和初期にネタバレの概念がなかったことは悔やまれる。

ところで田中貢太郎も「死体を喫う学生」という本作とまったく同じ筋の話を書いているが、貢太郎が本作を翻案としたものだろうか?わからないが、本作の方が面白いのでこちらを掲載した。

死体蝋燭

小酒井不木著。嵐の夜に和尚が語る、世にもおぞましい話。それを聞いた小坊主の辿る恐るべき末路。仏の教えも業の深さの前には無力と思い知る、残酷な物語。心してお読みください…。

女の怪異

田中貢太郎著。昭和初期の心淋しい真夜中の街で、菊江という若い女が悪漢に追われていた。ところが、次に追われるようになったのは悪漢の方であった。女怪のビジュアルがシンプルに恐ろしく、個人的には好きな作品。オチも良い。

上床(「世界怪談名作集」より)

フランシス・マリオン・クロフォード著、岡本綺堂訳。カムチャツカ号という船に乗った男が語る異常な事件の話。この語り手の男がいけすかない上に、言い回しも冗長で気に入らないが、ご期待通りの展開になるので元は取れる。クトゥルフ神話を連想させるような恐怖小説。

👻 信号手(「世界怪談名作集」より)

チャールズ・ディケンズ著、岡本綺堂訳。怖い。陰鬱な雰囲気に覆われた舞台で不可思議な事件が起こり、最終的には説明のしようもない事件が発生する。事件も怖いが、怪異そのものの立ちふるまいの描写にも何とも言えない気味の悪さがある。物凄さや迫力はないが、日本の怪談にも通じる静かな恐怖が光る名作。

水郷異聞

田中貢太郎著。美しい湖畔の町を舞台にした男と女の物語。表現も詩的で美しく、怪談としての雰囲気も良い。特に当時における女性の社会的な弱さを描いておきながら、一変して男も一飲みにするような恐ろしさも描いているのが印象深かった。

聖餐祭(「世界怪談名作集」より)

アナトール・フランス著、岡本綺堂訳。ある老婆の身の上に起こった、悲しくも美しい出来事。オチが少し怖い。報われぬ恋が好きな人向け。

西瓜

岡本綺堂著。蔵で見つけた古い書物からスイカにまつわる恐ろしい出来事を知る主人公。しかも怪異はそれだけに留まらなかった…。過去の事件を劇中劇によって再現することで説得力を増している。また、心霊現象が科学信奉により露ほども顧みられなくなった現状へのアンチテーゼとも取れる筋書きだった。全体的に読みやすい、良い怪談。

前妻の怪異

田中貢太郎著。前妻と死に別れた夫と後妻の受難を描く。人によっては感想が変わってくるかもしれない。短いので箸休めにどうぞ。

👻 貸家(「世界怪談名作集」より)

エドワード・ジョージ・アール・ブルワー=リットン著、岡本綺堂訳。「ペンは剣よりも強し」のリットン男爵による怪談の訳本。筋書きは海外のホラー映画のそれに近く、「超常の存在を肯定しながらも限界まで科学的に考察し、最終的にはそれを利用して問題を解決する」という現代ではおなじみの物語形式を確立している。エンターテインメントとして完成されている良著。

茶碗の中 IN A CUP OF TEA

小泉八雲著、田部隆次訳。ある侍が喉の乾きを潤そうと茶を飲みかけたところ、その茶碗の中に見覚えのない男の顔が浮かび上がった。それ以降、侍の周りに怪事が起こり続ける…という話だが、オチがない。オチがないというより、途中で終わっている。この男が何者なのか皆目見当がつかないのも不気味だが、途中で終わっているのも不気味。つまり、そういう話なのかもしれない。

なお、本作は小林正樹監督の「怪談」という映像美の結晶のような映画で実写化されており、やはり非常に不気味なのでお薦めする。

廃宅(「世界怪談名作集」より)

エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン著、岡本綺堂訳。廃屋に住む正体不明の女と、彼女への妄念に取り憑かれた男の話。かなり冗長で密度は薄いものの、真相を探る楽しみはある。話は落ち着くところへ落ち着くので安心して良い。オカルトな展開を含むサイコスリラー。

👻 秘密礼拜式

アルジャナン・ブラックウッド著、森郁夫訳。絹商人のハリスは母国イギリスへ帰る道すがら、青春時代を送ったドイツの母校へ気まぐれに立ち寄った。その気まぐれが邪悪な魂の罠とも知らずに…。南ドイツの厳しくも美しい自然と、厳格なプロテスタントの神秘的な雰囲気が支配する前半から一転、後半はSFホラーな洋ドラを連想させる悪夢のような展開へ。特に事態が悪化する際の不穏な空気は素晴らしい。前半は説明描写が多いものの、後半の緊迫感でしっかり満足できる良著。

なお、著者のアルジャーノン・ブラックウッドは近代イギリス怪奇小説の三巨匠の一人であり、かの有名な魔術結社「黄金の夜明け団」の一員でもあるとのことで、そう聞くと超常現象の描写にも説得力が増す。また、冒頭で言及されるジョン・サイレンスとは著者の代表作「心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿」の主人公。名前を覚えておくと良い。
さらに余談だが、「アルカディア」というSFホラー映画の話の筋が本作と似ている(雰囲気と核心部分は別物だが)。興味があればこちらもぜひ。

飛騨の怪談

岡本綺堂著。「山わろ」という怪異を中心に、複雑な人間模様や危険な探検を描く。怪談というよりは綺堂お得意の活劇に近い。そういうわけであまり怖くはないし、ここに載せるには長文ではあるものの、かなり楽しめた。なお、犬が死ぬ。

ちなみに同じ綺堂の作で「くろん坊」という話にも山わろと似たような怪物が出る。というか綺堂の作品では猿の化物に言及することが度々ある。綺堂にとって山は超自然の存在を隠すための舞台装置なのかもしれない。

百物語

岡本綺堂著。雨の降る夜に若侍達が百物語を催した。そこで彼らが見たものは妖怪变化だったのか、それとも───?侍だらけの城中ということで面白いほど誰も怯えない。おかげで淡々と話が進むため、現実と怪異の境目が曖昧になり、良い意味で不安な気持ちになる良著。

父の怪談

岡本綺堂著。綺堂が父から聞いた話を三話ほど。怪談としては可もなく不可もないが、明治期には怪談が流行したこと、こっくりさんが既にあったこと、動物電気など動物学の知識が膾炙していたことなどが伺い知れて勉強になる。「雨夜の怪談」と内容が重複しており、あちらは文語体で、こちらは口語体。なお、犬が死ぬ。

物凄き人喰い花の怪

国枝史郎著。表題そのままの短編怪奇小説。大正時代にネタバレの概念がなかったのは悔やまれる。内容は怖いというよりグロテスクなSF風味のホラー。心霊学者が登場するものの、心霊的要素はまったくない。しかも心霊現象を頭から否定されるため、心霊肯定派はおおらかな気持ちで読むこと。なお、犬が死ぬ。

👻 墓場

西尾正著。年の割には老けて見えるが至って陽気なペンダア君。彼はなぜイギリスから日本に来たのか。その理由はビッグ・サイプレスのエバーグレーズ(沼沢地)にある古代墓地、そこで起きた怪事件にあった。特筆すべきは携帯電話器という小道具によって目に見えない恐怖を臨場感と共に演出する終盤の山場。最後に放たれる怪異の「声」も意外なもので面白かった。ちなみに本作はある著名な作品の翻案だが、わかる人にはすぐわかると思う。

法華僧の怪異

田中貢太郎著。人には言えぬ秘密を持って出家した尼僧の末路を描く。話は暗いが心地良い大人しさとも言える雰囲気があり、怖くはないが妙な魅力がある。囲碁に人生を狂わされた話として読んでも面白いかもしれない。

萌黄色の茎

田中貢太郎著。最後まで読んでから意味がわかる話。幻想的な情景と相まって多少の怖さもある。異界へ迷い込みたい人向け。

麻畑の一夜

岡本綺堂著。製麻事業に従事する高谷君がフィリピンの小島へ視察に赴いた。彼はそこで現場監督を勤める丸山という男から不可解な連続失踪事件の話を聞く。綺堂の作品は「怪奇」へ倒れるか「現実」へ倒れるか先が読めないところも面白いが、本作もそういった作品のひとつ。大方の読者は「現実」的な推理をするだろうが、もし違っていたら…?

木曽の怪物

岡本綺堂著。綺堂の父が軽井沢へ赴いた際、現地の猟師から聞いた話。正体はわからないが、人を誑かして殺めようという怪物(えてもの)と猟師の苦悩を描く。軽い話だが読みやすい。初心者向け。

山の怪談については、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の「山にまつわる怖い話」というスレッドがこの種の話の宝庫となっている。同じ怪談スレでも有名な「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?」(洒落怖)より小粒で質の良い話が多いので、興味のある方は覗いてみると良い。

夜釣の怪

池田輝方著。女郎屋の主人が夜の川釣りで遭遇した怪異の話。怪異の容貌が若干特異なくらいで、他は何から何まで典型的な実話怪談と言える。ただ非常に短く読みやすい。初心者向け。

👻 幽霊

小野佐世男著。著者が少年時代、古風で風流だが嫌な感じもする新居で体験した心霊現象を綴っている。シチュエーションとしては良くある類のものだが、霊の描写がこれでもかと言わんばかりに克明で、私も苦虫を噛み潰したような顔で読んでいたと思う。怖いを通り越して気持ちが悪い、もうこれ以上読みたくないとすら思える下りもあるので、少しだけ覚悟した方が良い。

幽霊

江戸川乱歩著。怨霊に悩まされる実業家の話であり、ある有名な人物の前日譚でもある。話の筋にはちょっと無理があるものの、読後感は良い。

幽霊(「世界怪談名作集」より)

ギ・ド・モーパッサン著、岡本綺堂訳。大層な前ふりの割には怖くない。怖くはないが、幽霊の仕草から不幸な女性の儚い美しさを感じ取ることができる、静かな怪談。

幽霊滝の伝説 THE LEGEND OF YUREI-DAKI

小泉八雲著、田部隆次訳。怪談話に飽きた女達がある余興を提案した。「幽霊滝の社に置かれた賽銭箱を持ってきた者に、その日の仕事の取り分を全部差し出す」というものだ。果たして、この賭けに一人の女が乗った。その結末は…。正体不明の怪異による、理不尽な仕打ちが脳裏に焼き付く話。

妖蛸

田中貢太郎著。業の深い女とその情夫の末路を描く。表題にもある妖蛸が出現する場面は中々迫力がある。小振りながらもすっきりまとめられた良い怪談。

妖物(「世界怪談名作集」より)

アンブローズ・ビアス著、岡本綺堂訳。「ダムドシング」の訳本。現在でも新鮮な心持ちで読める完成された短編恐怖小説。この宇宙的恐怖がラヴクラフトに影響を与え、クトゥルフ神話の源泉となったのも頷ける。

アイルランドにおける貧民の子女が、その両親ならびに国家にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案

ジョナサン・スウィフト著、sogo訳。貧困下にある18世紀のアイルランドにおいて、貧民が抱える食糧問題を解決するために提案された、至極真面目で、かつ完全に狂っている一私案。先に本文を読んでから、ページ下部のバックグラウンドを読むと良い。怖い話ではないかもしれないが、ある意味怖いので最後に掲載した。

※ HTMLファイルがデッドリンクになっていたため、テキストファイルのURLを掲載しました。

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当然、青空文庫にはここで掲載した作品以外にもたくさんの怪談が収録されています。また当然、私はその一部しか読んでいません。この記事で興味を持たれた方はぜひ他の怪談も探してみてください。

…しかし、どうやって探すのか?その最適解は私にもわかりませんが、Googleのサイト内検索を少しカスタマイズしたものが便利だったので、ここに掲載しておきます。

怪談 site:www.aozora.gr.jp -aozorablog -アクセスランキング -公開作品 -作品一覧 -作品リスト -図書カード

「怪談」の部分をお好きな(かつ不穏で禍々しい)文字列に置き換えて検索してください。運が良ければ素晴らしい(かつ不穏で禍々しい)作品に出会えるでしょう。

最後になりましたが、入力や翻訳に携わられた有志の方々にお礼を申し上げます。

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「ああしんど」

池田蕉園著。化け猫の話。デザートにどうぞ。