ツイッターが大学を風刺するアカウントの所有権を大学側に提供するという事件
小さな事件ではあるのですが、意味するところが大きいので頭の中で警報がなりました。
ニューヨーク州立大学(略称 SUNY)ジェネセオ校の学生が、大学のソーシャルメディア対応などを風刺する目的でアカウントを作って運用していたところ、ある日アカウントにログインできなくなったのだそうです。
ここまででしたら、報告されてアカウントが BAN されたのだろうかで済むのですが、なんとそのアカウントの所有権が大学側に移管されていたというのですから驚くわけです。
この大学はニューヨークというので華やかな街を連想してしまいますが、ニューヨーク州立大学グループの一つで、どちらかというとカナダ国境に近い田舎町に存在します。
ここに在学しているアイザイア・ケリー氏は、寮の暖房が丸一日停止したり、図書館がアスベスト問題で閉館したりといったトラブルを茶化す目的で @SUNYGenseeo というアカウントを作ってつぶやいていました。
大学の公式アカウントは @SUNYGeneseo で e の場所が一箇所違うだけで、バナー画像なども模倣していたそうです。
大学を茶化すくらいのことはアメリカの法律でいうならば言論の自由に含まれますので問題がありませんが、アカウントのIDや画像を模倣するのはツイッターの利用規約的にはなりすましに該当しますので、大学側から報告が行われたならばアカウントが凍結されるのは理解できます。
しかし火曜日にアカウントにログインできないことに気づいたアイザイア・ケリーさんはそれだけではなく、アカウントのプロフィール写真などが変更され、つぶやきがすべて削除され、かわりに大学管轄の警察アカウントのツイートがRTされていて、アカウントが何者かの手に渡っていることがわかったのだといいます。また、アカウントのメールアドレスは大学の管理人のものと推測できるアドレスに変更されていました。
ケリーさんは当初、大学側が彼のメールを盗聴し、そこからアカウントをハッキングしたのではないかと批判しました。アメリカの edu ドメインの多くでは、管理上の理由で生徒のメールはこうした場合に閲覧可能な運用をされている場合もあって、それを疑ったわけです。
大学側はこれに対して「批判をしたり大学を茶化すことは容認するが、なりすますことで他のひとに害が及ぶのは容認できない」と表明した上で、アカウントに変更を加えたのは大学当局だと認めるツイートを発信しました。ただし、ハッキングは否定しています。
そこで浮かび上がったのが、ツイッター自体によってアカウントの情報が大学側に提供されていたということです。ツイッターはこれに対して「手違いがあった」と認めており、どうしてアカウントが大学側に渡されたのか調査中だとのことです。
これは大いに問題のある話で、権力をもった人や組織を、社会的に弱い立場にある人がツイッターを使うことで糾弾できるのはSNSの大きな利点の一つです。それはもちろん、その人のプライバシーが守られていることが前提です。
たとえなりすましをしていたアカウントとはいえ、その情報が大学側に渡るのでは、安心してツイッターを使うことなどできません。たとえば政府や企業を批判する立場のアカウントの個人情報が、その政府や企業に横流しされているようなものです。
こういうことが間違っても起こらないようでなければ、安心してSNSなど使えないのですが、このきな臭くなっている世の中で、安心なものなどなにもないのかという気持ちになってきますね。
引き続き、この件についてはフォローしておこうと思います。