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個人ゲーム開発者の生存戦略(リリース後編)

密かに10こくらい書いたらTwitterで告知しようかなくらいのゆるい気持ちで書いたのですが、たくさん見ていただいてたみたいで、ありがとうございます。まだまだこの業界駆け出しなのに偉そうな事を書いてしまったかもと後悔しておりまして、皆様に不快感を与えてはしないだろうかとビクビクしております。。

まあ後半も書いてしまっていたので、引き続き続けて行こうかなと思います。よろしくおねがいします。

というわけで、前回の続きです。

さて、「兼業開発」もしくは「専業開発」はたまた「ハイブリッド型開発」その他諸々・・、無事生き残ることが出来まして晴れてゲームが開発出来ました。。と言うところから始めたいと思います。

リリース前の下準備などのお話などもまた別途したいなと思うのですが、今回は割愛しまして、とりあえず完成させたというところから。

★今回はいわゆる売れても売れなくてもどちらでも良いホビー開発については少し横に置いておきまして、ゲームを売ってゲームの売上をある程度は見込んで生活を続けていくという目標を持っているという前提でお話します。

何本売らないといけない?

さてここからが問題です。このゲームはいくら売らないといけないのでしょう?コンソールのインディーゲームとして、そうですね1本1,500円のプライスを付けて売ったとしましょうか。そして、次のゲームの完成まで、開発を2年続けたいという目標を掲げましょうか。そして晴れてプロのゲーム開発者となったということで、「専業開発」をしたいという事といたします。

計算してみましょう。他に何もアルバイトや収益を得ないと仮定します。本来フリーランスのような働き方でしたら、やはり色々な浮き沈みを想定して月50万円は稼げるようにしましょうという事はよく言われています。ただ、なかなかそうもいかないので、まずはその半分、月25万円の収益を得る事を目標としてみます。会社員ではないので健康保険や税金などは自分で支払わないといけませんが、これくらいあればまあなんとか生活は維持出来るのではないでしょうか。たぶん。。(東京だと難しいのかもですが)

さて、2年×25万円ですので、ざっくり600万円となります。これが1本めのゲームだけで食っていくのに必要な売上です。そのまま1,500円で割ったらば、4,000本です!お?なんとか見えてくる数字ですね。ただ、プラットフォーム手数料というものがありますので、実はそうはいかないのです。手数料を30%としましょうか。EpicStoreなどのようにもっと安いところもありますがとりあえず。

とすると計算が少し変わってきますね。1本あたりもらえる売上は1,050円になります。(実際はグローバルで売った場合などは国ごとのVATの計算やら諸々でもう少し減りますが今回は割愛)ということなので、計算しなおしてみると、5,715本のDL数が必要となります。まあざっくり6,000本という感じでしょうか。結構必要な数が多くなってしまいましたね〜。

ですので、実は個人的にはやはりゲームの単価は下げたくは無いと思います。「インディーゲーム=安い」と思われるのも嫌ですしね。昨今のインディーゲームがどんどん安くなりつつあるのを少し危惧しています。特に海外の超クオリティのビッグインディーゲームが本当に安い価格で出たりしていたりして、価格低下の流れはなかなか止められそうにありませんね・・。個人的にはなんとか抗いたいと思っているのですが。。

どう売れていく?

さて。1,500円のゲームを売る場合、2年生きるのには6,000本必要ということですが、さて次はまた色々問題もございます。ゲームが一番売れるのはいつだと思いますか?これはもう想像通り「リリース時」です。スマートフォンゲームであれば、違う売れ方ももちろんありますが、まあだいたいはそんな感じです。もちろん最初は売れなくて後からなにかのきっかけてバズってどかっと売れるというパターンや、じわじわ売れていく、などというのももちろんあります。まあ今回はそのパターンはそっと横に置いておきましょうか。

要するに何が言いたいかというと、お金が一気に入ってくるということです。それの何が悪いのかと言うと、悪くはないんですが要するに税金の問題が出てきます。フリーランスは確定申告の時にその年の売上を集計して経費などを控除し、利益に対して所得税をお支払いします。そうするとどうなるかと言いますとその年の所得税がどどっと上がってしまう・・。という問題が発生するのです。2年分と見込んでいたものの大半が一気に・・となると嬉しいような悲しいようなという事態ですね・・。

でもご安心ください。そういった業種の方向けに「平均課税制度」というものがあります。これは、クリエイターなどで印税などによりいっときに沢山の収益が入る方のための制度で、ようするにわけわけして計算することが出来るという制度です。ただ、、けっこうややっこし〜ので、税理士さんなどに相談したり、色々大変ではある制度です。

まあどちらにしても、いっときに大金を得ると色々面倒だ、ということです。税金以前に、銀行口座が膨らんで、ちょっといつもより沢山使いすぎちゃった・・というような事もあるかもですね。

ただ待ってください。6,000本必要と言いましたが実際のところどういう風にゲームって売れていくんでしょうね?こちらを見てください。

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これは、コンソールゲームの売れ方をグラフにしたものです。最初の大きな山がリリース時の売上です。ここでどかーんと売れるのです。そして、その次に小さな山がふたつあります。これは一体?

そう、カンの良い方ならお気づきでしょうが、これは「セール」です。そう、リリース時の次に売れるのはセールなのです。要するに2年の間、リリースをしてその後一定期間経過後セールをして、また間を開けてセールをして、、という繰り返しになるのがゲームの販売ライフサイクルです。これは一般的なインディーゲーム販売ではこんな感じだろうと思われます。(大手のは知らない)

と、いうわけで、リリース時+セール数回、というトータルでその6,000本に到達すればよいので少し気は楽になりますね。ただちょっと待ってください!!セールって、値引きですよね。。なので、1本あたりの収益はもちろん下がります。30%くらいの値引きはいまは当たりまえ、40%,50%,60%オフってのもあります。ですので、実は本数で言えば6,000本では足りないのです。このゲーム販売ライフサイクルのうち、どれくらいがセールのものか、、という事を考えてみますと、これはゲームによりますがとりあえず半分の金額をセールで稼ぎ出そうという事にしましょうか。300万円ですね。40%オフにしますと、630円ほどがひとつのゲームの収益です。なので、セール分で4,800本くらいは必要となる計算です。まあなので、実はトータル7,800本ほどが必要となる計算となります。

さて、このケースですと初回のリリース時に3,000本〜ほどは売らないといけない感じとなります。これは、個人開発インディーゲームのコンソールの売上(DL専売)であればけっこう悪くない数字です。良い数字の部類かと思います。クリエイターの方がパブリッシャーを付けず、個人のSNSや一人で無料でやれる事をやるプロモーションであれば、かなりうまくいった部類と言っていいでしょう。もちろんこれは日本だけでリリースという前提にしております。ということなので、実際問題一人でリリースしてこの数字を出せるのかというと、たいていこれくらいは行けるという数字よりは、少し難易度が高い数字と思っておいていただけると良いかもしれません。

ゲーム販売における生存戦略

うーん、厳しいな・・?というイメージでしょうか?楽勝そう!でしょうか?僕的にはけっこう人生を掛けるにはやはり少し不安を覚える感じです。さてどうしましょう?僕がここでおすすめする戦略としては、マルチプラットフォーム展開&グローバル展開を五月雨方式で行う、という戦略です。

実際はパブリッシャーがゲームを売るときであれば、実はマルチプラットフォームやグローバル展開含めて全て一気にやってしまうのが鉄則のセオリーと言われています。確かにそこに全ての話題性が一気に集約しますし、プロモーションの鮮度もそこに集約しますので、色々費用や人的リソースを投下するパブリッシャーなどの場合で言えば至極当たり前と言えるでしょう。

ただ、個人開発の場合は必ずしもそれだけが戦略ではないと考えます。なぜなら、そのリリース時のスパイク(売れ行きのトンガリ)にいかに集約しようとしても限界がありますし、そこまでに大きなお金を一気に掛けるということではありません。本当にイチかバチかのゲームの見た目やPVや中身、口コミ勝負だからです。企業の場合はそこにお金をつぎ込むので一気にやったほうが効率的ですが、個人の戦い方はお金ではありませんからね。

なので、僕の思うおすすめのリリース後戦略のひとつとしては、まずは1プラットフォーム1リージョンでリリースし、時間を明けて、違うプラットフォームや違うリージョンで立て続けに出していく。です。もちろん最初のような爆発は得られないでしょう。ただ、どこであってもある程度やれば同じラインをえがくはず。そして、それが横にズレて定期的に発生していく、、そんな図式を想像してください。

この戦略のミソは、スパイクをたくさんつくり、売上の波を平準化していくというところにあります。なので、この戦略においてはひとつのスパイクの高さはそれほどでなくとも数を発生させてトータルで売上を稼ぐという所なのです。そして一発のスパイクの高さがそれほどでなくても、スパイクの数を稼げば、トータルではけっこうな数になっている事を狙うという感じです。

これは、リージョンやプラットフォーム間では実際のところは情報や交流の分断があることから取れる戦略といえます。あるリージョンでは既に知られたゲームでも別のリージョンでは全く知られていなかったり、ゲーム機ユーザー間でも案外知られてなかったりするものです。ましてやゲーム機とモバイルでは層も全く違いますので。

さてさて、ここでまた色々問題が出てきます。まずはリージョンの問題。もちろんここは翻訳の問題もあるので純粋にお金がかかります。故に必要となる売上も上がっていってしまうわけですが、ここはそこは置いておきましょう。翻訳がほぼいらないゲームもありますし。

それより問題なのは、「海外は思ったより遠い問題」「海外には恐ろしいほどの数のライバルが居る問題」になります。正直なところ、何もせず海外に出しただけでは、スパイクにすらならなかったりもします。ただ、日本でスパイクを作りだせた実績があるゲームであれば、やはり何かひっかかるものがあったということなので、可能性は高まります。ただしゲームというものは(ゲームに限りませんが)「知られないと売れない」のです。海外に「知ってもらう」ということはかなり大変です。有名なゲームレビューサイトに掲載されたとしても、海外はゲームが多すぎるのですぐに流れていってしまい思ったほどの反応は得られないでしょう。こればっかりは、答えがありません。これをすれば良いという何かがあるわけではありません。おそらくやはりここはコミュニティでの存在感であったり、コネクションであったり、わりとそういった事が大事となってきます。海外のゲームイベントに沢山出展したりアワードに応募してみたり、皆こういう事をひたすら繰り返して認知と存在感を上げていくと思われます。案外近道はなさそうです。

さてどうしよう?とりあえず個人的には「まずは海外についてはタイミングは気にしない」「売れなくとも気にしない」ということをまずはご提言差し上げたいと思います。もちろん、出すには出す方が絶対良いです。ので、できればローカライズはして一緒にグローバルにも出しましょう。(もちろん、お金ができたらPR企業に依頼するとか、パブリッシャーを探すとか色々あるので、そういう戦略をする場合は出さないという手もあります。海外であってももちろん「リリース時」がいちばんつよいのには代わりありませんから)

ということで、おすすめとしては時差的に展開していく戦略としては別プラットフォーム展開をするのです。いまは個人開発者でもUnity等のエンジンを使えばマルチプラットフォーム開発が可能な時代です。なので、やってやれないことはありません。まず最初にNintendo Switchでリリースし、その次にSteamをリリース、最後にモバイルで仕上げる。そういったことも可能となってきます。個人的にはこの3プラットフォームは意外と好む人がばらばらなので、それぞれにある程度の新鮮さをもって受け入れてもらえます。他のプラットフォームで出てたのを見て気になっていた、、という人もけっこういるものです。もちろん、それぞれのプラットフォームでリリースする時は最初と同じくらいには色々なPR活動は必要ですよ。お金をかけたものでなくても。

あとは、更に海外のプロモーション展開するもよし、ニッチなストアを攻めるもよし。。という事です。要するに、こんな言い方はあれかもしれませんが「自分の作った素晴らしいゲーム」という「商材」を何度でも何処にでも売って回るということなのです。

パブリッシャーの存在意義

と、ここまで来てどうでしょう。何かちょっとおかしいなと思いませんか?個人ゲーム開発者だったあなたは、いつのまにか「セールスマン」になっているような気がしてきますね。そして移植作業なんかにも追われている気もします。

そう、実はゲームは「リリースしてからがスタート」なのです。リリースすると、本当に沢山の連絡が来ますしその対応もしていかないといけません。嬉しい嬉しいメディア様からの連絡が来たらそちらも対応したいですし、なんなら自分のゲームを売るためにいろいろなイベントや、今ならオンラインイベント番組などに申し込んでスピーチしたりしたいですよね。あと、上の戦略を行うなら、そちらへの移植開発やはたまたそれぞれのストアの登録、プラットフォーマーとの連絡、リリース準備、それが終わったら、時期を見計らってのセールの準備、セール用のクリエイティブの作成、ツイートなどの計画、などなど・・・。

実はけっこうリリースから次のゲームの開発になかなか取りかかれない、、なんて事は本当によくあるんですね〜。ゲームを作って売るってホントに大変です。なので実は最初に次の開発に2年掛けられる前提でお話しましたが、意外とこういったことに時間を取られてしまいますのですこし計画の見直しは必要になってきそうですね。ただまあ、こういった作業も非常に楽しいものです。このあたりのリリース後のセールス活動やPR活動も含めての「ゲーム開発」ということでぜひ楽しんでもらいたいとも思います。

ただし「次のゲームを早く作りたい!」「面倒な事は嫌じゃ!」「開発しかしたくない」「人前に出たくない」という方もおられるかと思います。となってくるとゲームの開発前後のあれこれについてはおまかせしたいと思うはずです。そこがいわゆる「パブリッシャーの出番」と言うわけですね。

一番いいのは、リリースしてドカーンとめっちゃ売れてあとはほったらかしてもお金がどんどん入ってくる、、ではありますので、そこを目指したいところではありますが「パブリッシャーと組む」メリットは、当たるか当たらないかの不確定性に対する販売戦略やその後の事なども一緒に考えていける、、ということもあるのかもしれませんね。

やはりゲームは水物、ヒットの裏に隠れてなかなかわからない事もありますが、あまり売れないゲームやそこそこのゲーム、色々あると思います。でもやはりそれなりに頑張って作ったゲームが、大ヒットとは言えなくとも、そのあとの戦略をうまく考えて、頑張って作った大事なゲームで生活していけるようにしたいですね。その手助けをするのがパブリッシャーなのかもしれません。

もちろんパブリッシャーを使う時であれば、販売戦略もパブリッシャーに委ねることになります。ので上記の作戦とはまた違う売り方になるでしょうし、だいたいのパブリッシャーは一気に売る戦略になると思います。ただroom6などは資金も潤沢ではありませんのでそういった派手なお金を使う戦略は使えませんが、上記のような一緒に寄り添って長いお付き合い型戦略でいこうかなって今は思っています。今後どうなるかはわかりませんが・・・。ただ僕としてはまずは開発者が開発を続けられるように、色々な可能性を探りながら一緒に考えていけるようなパブリッシャーを目指したいなと思っています。

ただもちろんパブリッシャーを使うわけですから、上の本数よりも更に売らないといけないわけですので、そういった意味ではパブリッシャーも本当に沢山売るためにより一層の努力が必要ですし、ゲーム自体もポテンシャルが高い必要があるかなとは思います。

とはいえ、充分な売上が上がらなくて目標金額に達しなくとも、前回書いたような「兼業開発」などを続けていければまた何回でもチャレンジ出来るはずですし、一回リリースしたあとは、いろいろな可能性が見えてくるはずです。兎にも角にも止めない事、続けること、が大事だと思います。何回でもリリースして経験値や感覚を養うことも本当に大事ですね。買ってくださったユーザー様の声は本当に宝物です。

というわけで

個人開発者の生存戦略と言いつつ、最後はパブリッシャーの話になってしまいましたが、言いたいのはゲームは作って出せば終わりじゃないんだよ〜出したあとが大事なんですよ〜と言うことが書きたかったのでした。

僕個人としては、コンソールゲームのリリースに関わったのはまだ6〜7本ですし、スマートフォンなども入れても十数本程度の駆け出しではありますので、なんだかトンチンカンな事を書いてるかもしれません。これは違うだろとかありましたらいつでもご指摘くださいね。。!

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さて、今回はゲームの「売れ方」や「リリースしたあと」のお話でした。実は他にもいちばん大事な「どうやってゲームが沢山売れるようにするか」「どんなゲームが売れるのか」「どんな準備をするか」というお話もあります。またちょっとこのお話もしたいと思います。ただ、駆け出しパブリッシャーなので不正確で限定的な視点でのお話かもしれませんが。。まあとにかくもう少し本質的なところを細かく分析してみたいなと考えています。わりと当たり前の話が多くなりそうですが。

ではではまた書きます。

ごきげんよう。


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