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新卒・中途エンジニアに求められる人物像要件の変化とその背景

10/1にレバテックルーキーEXPOが開催され、各社で採用に関わっている皆様をお迎えし、MCとしてお話をお聞きして来ました。その中でも印象的だったのがエンジニアに求められる要件の変化です。

これまでも事業共感を確認する企業は多く存在していましたが、一段要求レベルが高まったというお話です。

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事業共感を候補者に求めにくかったエンジニアバブル下

2015年から2022年までのエンジニアバブルでは、採用手法・採用市場都合で事業共感を強く求められない傾向が見られました。その背景について3つ取り上げてお話していきます。

カジュアル面談の一般化

本来、シニア層やCxOの採用ではどうにかして自社のことを気に入ってもらい、入社して貰うかというオモテナシベースの採用が行われていました。

スカウト媒体の活況に伴い、メンバー層だろうが新卒だろうが「弊社とお話しませんか」とナンパから始まるカジュアル面談が一般化していきました。カジュアル面談は企業側から声を掛けている状態ですが、いざ選考フェーズになると「弊社のどこが好きなの?」と切り替えることになります。意向上げに失敗したり、手順を間違えると「こちらから声をかけて起きながらどこが好きなのかを強めに問い詰めるという気持ち悪い勘違いナンパ師」のようになります。しかしここに及び腰になってしまうと、強く志望理由を問いにくくなったり、事業共感を軽視せざるを得なくなってしまいました。

大量応募

ジュニア層については自主応募や、大手人材紹介にて「1-2%の可能性に賭けて送りまくる」という施策を取っている方が少なくありません。100社程度への応募も見られますが、応募し過ぎのため企業研究どころではありません。一次面接で候補者の方より「どんな案件がありますか?」と質問頂いたこともあり、企業研究の軽視はフリーランスやSESの面談のようになると考えて居ます。

また、ミドル・シニア層では「取り敢えず話だけでも聞いて欲しい」となることが多く、エントリー数がジュニア層とは異なる理由で増えて行くため、企業研究時間が減少していきます。

企業に対する短期選考の推奨

人材紹介、スカウトを問わず「採用成功の決め手は短期で内定を出すこと」というHow Toが語られていました。「できれば2週間以内に決めきる」「1ヶ月は長すぎる」というような話を強制されるため、企業が候補者に対して事業共感を醸成する隙を与えにくかったと言えます。

求められる「事業共感」への変化

今回のイベントのみならず、各社さんと人事や経営層の皆さんとお話をしていて業態を問わずに出てくる言葉が「事業共感」です。次に業態を鑑みながら事業共感の指すものと、変化について掘り下げていきます。

候補者に求められるマインドの要求レベル

自社サービスの変化

2015年より前は「自社サービスである」というだけで階層が深めのSIerやSESから転職希望者が集まる買い手市場であったため、事業への興味がなければお見送りをする会社はそれなりにありました。私は2012年からマッチングサービスで採用を開始しましたが、POが社長だったこともあり「課金まではしなくて良いがアプリを一通りいじってみてエンジニアとしてのコメントを述べて欲しい」というものが必須項目でした。8割くらいの人が何もして来られなかったのでやむなしとして根気よくお見送りをしていました。

2015年からのエンジニアバブル下では採用人数を追いかけていたり、先に述べたような背景があったことから、志望理由に対し細かいことを言わずに給与提示高めで内定を出す会社が増加していきました。

特にスタートアップ界隈を中心に盛り上がったSaaSビジネスでは、主要顧客がtoBであるために、「エンジニア採用はしなければならないが、事業共感を期待するのは難しいので入社後に考える」という組織が少なからず見られました。

現在では一部パッケージカスタマイズ系企業では数を集める採用を継続していますが、他の企業は慎重になっています。業界を跨いで見ていくと、ある意味選考ハードルは2015年より前の状態に戻っている印象です。

コンサル、SIerの変化

コンサルやSIerの場合、「顧客への価値貢献」について意識を持って欲しいという企業が増加しています。

特に2022年までのコンサルはここ数年人気で且つ圧倒的吸引力を誇っており、外野から見ても「本当に選考したの?」と疑わしく思う採用を連発していました。ここのところは待機人材が増えたとのことで、大手コンサルであっても新卒、第二新卒(21新卒、22新卒のみ)、即戦力なハイスキル層の女性のみ(ダイバーシティ上の都合も含む)に絞っている動きが見られます。

現状コンサルやSIerでは「アサインされたプロジェクトが何であれ興味を持ち、取り組める姿勢」を求めており、何が起きたのか察するに余りある状態になっています。

SESの変化

SESは(一部コンサルもですが)客先常駐と言われるように、お客様企業での業務となるため、所属企業のメンバーとの交流が少ないことから事業共感からは遠いように感じられます。候補者に事業共感を求めている大手SESの人事の方に、どういう意味で事業共感を求めているのかを深掘りしてお聞きしました。ディスカッションを重ねながら見えてきたのは、先に述べた「顧客への価値貢献」と「利他的な姿勢」です。

コロナ禍が3年に及び、エンジニアのキャリア序盤からフルリモートワークの方が一定居られます。彼らからするとフルリモートで働くことは当たり前であり、前提条件である傾向が見られます。一方でプライバシーを建前にカメラをオフにしたり、客先での朝会や夕会の参加を拒否する方なども居られ、「本当に確保工数分の稼働がなされているのか」と疑われる事態に繋がっていきます。

また、フリーランスや次の企業への踏み台にする方もここ数年は非常に多く見られました。「自身がネクストキャリアに進むため」という利己的な理由で自社を教育機関のように据えられ、警戒している企業が増えています。

こうした背景もあり、就業環境を利己的に求める人達を採用せず、顧客や事業に対して利他的な姿勢を持てる人を求める方向にシフトしつつあります。

共通するキーワードは「売上貢献への意識」

自社サービスとクライアントワークに分けながらお話して来ましたが、事業共感は突き詰めて行くと「売上貢献への意識」なのではないかと感じて居ます。ただ言われた時間の間に机の前に座り、与えられた仕事を消化すれば良かった時期は2022年で終わり、能動的、積極的に仕事を取りに行く姿勢が求められているのではないかと考えて居ます。

厳選採用時代への備え

羽振りの良かった採用人数を追いかける企業が減少し、代わりに「採用を間違えたくない」と慎重になる厳選採用の傾向が色濃くなっています。企業、候補者のそれぞれがどのような点に注意する必要があるかについてご紹介していきます。

企業側: 去年までの感覚で採用すると意識の低い人材業界から「良いカモ」にされてしまうリスク

私自身、組織づくり相談を数多くお受けしておりますが、2022年までの見識のまま採用予算を潤沢に確保し、ストレッチした採用目標人数を掲げ、採用人数にコミットする採用を展開すると、心無い人材紹介やスカウト媒体などから「良いカモ」にされてしまうリスクがあります。高額な人材紹介フィー、数を稼ぐために大量に売り込まれるスカウトチケット、内定出しをはやらせるコミュニケーション・・・色々な事業推進以上のコストを払うこととなります。詳しくはまた別の機会に譲りたいと思います。

候補者: 事業共感に向けて

「技術しかやりたくありません」という人物の受け入れは、昨年までは見られましたが現状では厳しくなっている傾向が見られます。

銀の弾丸はありません。選考の際は時間を割いて一社一社について調べ、なぜ自分が応募しようと思ったのかを言語化していく必要があります。業界地図などを見ながら、当該企業が取り組んでいる業界などについて調べてみるのもヒントになるでしょう。

カジュアル面談の機会を利用し、事業共感の一助とすることを意識しましょう。

現職で自社サービスに関わっている方であれば、展示会のスタッフを担当してみるのも有効です。特にtoBサービスではITエンジニア職から顧客の存在が遠い位置にあることもあり、顧客と直接関わることができる展示会は非常に貴重です。サービス説明やビラ配りを嫌がるエンジニアは少なくありませんが、試しに行ってみるべきだと考えています。

DXの文脈などで他業種のクライアントワークに関わっている場合、顧客が関わる業界の展示会などに行ってみることも有効でしょう。競合製品の調査なども捗ります。

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