「人々が求めているものを作り出せ」を実現する簡単な方法
Y Combinatorはシリコンバレーの有名なVCで、少額を多くのスタートアップに投資するユニークなスタイルで知られている。その代表者、Paul Grahamの言葉に「Make Something People Want(人々が求めているものを作り出せ)」というのがあり、スタートアップを成功させるコツを簡素に表したものとして業界では広く知られている。
このスローガンを地でいっており、こりゃすげえわと感じた事例を見つけたので紹介したい。ipinfo.ioというサービスなのだが、やっていることはかなり地味で、IPアドレスを与えるとそのIPの国や緯度経度や管理組織などの情報を返すAPIを提供している。
↑これだけ、といえばこれだけである
Make What People Ask For(人々がいま要求しているものを作り出せ)
stackoverflowという開発者なら誰もが知っている技術系Q&Aサイトがあるのだが、そこに以下の質問がUPされた。
Q: アクセスされた場所に応じて、webサイトの表示をカスタマイズしたい。閲覧者のIPアドレスから、国や都市とかを割り出したいのだけど、PHPでそれをやるイイ方法ないかな?
エンジニアのBenさんは、小一時間でそれを実現するAPIサービスをこしらえ、以下の様に回答した後はすっかりそれを忘れていのだという。
A: 無料のGeoIPデータベースをダウンロードして手元で引くといいよ。サードパーティのサービスを使うのも、ちょっと遅延出るけど手軽でいいよ。僕がつくった ipinfo.com を使うと簡単に実現できるよ。PHPだとこんな感じで書けるで(以下、利用例がしめされる)
数ヶ月後、そのAPIに対し1日に億単位のリクエストが来ていることに気づいた。同じ問いをもって検索でこのページを見た開発者がipinfo.comを使うようになり、類似の質問があった際にも、「ipinfoっていうええサービスがあるで」と口コミで広がった結果アクセスが急増したのだ。Benさんはいまはこのサービスをフルタイムの仕事にしている。
人々が求めているものを発見したり、想像して作るのは簡単ではない。が、時間を割いてまで質問をして具体的な解決策を求めている人に対し、シンプルですぐ使えるものを作ることで求められていたサービスを発見できたのだ(しかも、マーケティング予算をまったく使わずに)。
詳しい顛末は以下のブログで紹介されているのでぜひ参照してほしい
How I Took an API Side Project to over 250 Million Daily Requests With a $0 Marketing Budget
開発者コミュニティとプロダクト
Benさんの上記ブログでは、stackoverflowを始めとする開発者コミュニティの住人としてコミットした事がプロダクトを成長させたとも述べている。質問者とのコミュニケーションから想定もしていなかったニーズを汲み取り、プロダクトに反映させていったようだ。
少なくとも開発者向けサービスを作る上では、stackoverflowやQuora、redditのような開発者コミュニティの中で、質問をしたり解答したりする中でニーズを汲み取ったりトレンドを体感することは効果的だ(たとえ、時間がかかり、すぐに数字に反映されなくとも)。
翻って日本の場合だが、テック記事が主体のQiitaがサービスとしては人気だが、交流軸ではこれといった決定版はない。僕が日本で技術者向けサービスを作るならこの交流軸が空いていると(日本語で読み書きしたいニーズは根強そう)思うので狙うと思うけど...さてさて。