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副業デザイナーズで作るデザイン組織 / spectrumfest22

MI-6株式会社の副業デザインチームのリードデザイナー@kgsiです。
このnoteはSpectrum Tokyo Design Fest 2022の登壇シナリオを記事化したものです。発表の補足の意味を込めて公開します。自分の説明不足な点も含めて補足できれば幸いです。


今日はありがとうございます。このセッションでは「副業デザイナーズで作るデザイン組織」というテーマでお話させていただきます。

キャリア

私のキャリアのイメージ。線と円でラインが繋がっている

やや唐突ですが僕のキャリアの話をします。僕は過去約10年間という、比較的長い期間勤務していた会社がありました。
当時勤めていた会社は副業も禁止で、これから述べるような副業のデザイン組織を作る…などから最も縁遠い位置にいました。
しかしとあるきっかけでその会社を辞め、新しい世界を見ようとしたときに自分の立ち位置や、どんなスキルを持ってどのぐらい社会に通用するのか…解像度がとても低い状態にありました。外の世界とあまりふれず、内に閉じた社会人生活を送っていたからだと思います。

結果としてその時は新しい会社を見つけることができ、事なきを得ましたが、「業界や社会」と「自分」とでキャリブレーションができていないことに気がついた瞬間でした。

この経験から、個人も組織にも常にキャリブレーション、今日中心にお話する会社、「MI-6」の扱うドメインに合わせるならば「化学反応」が必要だと考えています。

"化学反応"と書かれている


「反応」を起こす方法はさまざまありますが、今回は「副業」という働き方を軸に、なぜ副業先で副業メンバーのデザイン組織を作ったのか、どういった「化学反応」を起こしているのかをご紹介します。

MI-6の紹介

まず、MI-6という組織についてご紹介します。

MI-6のロゴが中央に配置されている

MI-6と聞いて某秘密組織を思い浮かべるのは僕だけでは無いと思いますが、れっきとした日本の企業です(笑)
MI-6のMIは「Military Intelligence 6」ではなく「マテリアルズ・インフォマティクス」のMIで、その正体は「材料開発とデ ータサイエンスのHubとなり研究者のポテンシャルを解き放つ」をミッションとし、データ駆動型の材料開発を支援するためのソリューションを開発、提供する会社です。
詳しくはウェブサイトをご覧ください。

私とメンバー

2022年現在、MI-6は副業メンバーを合わせると50名以上の組織です。僕はその中のデザイン組織の副業リードデザイナーとして働いています。

なお、僕の本職は青い人事労務なこのビルの17階にある会社であり、肩書はプロダクトデザイナーです。また、他複数の会社でアドバイザーやエンジニアとしても働いています。このキャリアの説明をするとき、いつも冗談で自分を「産業スパイ」と自称することもあります(笑)
僕のキャリアの話を軸にしすぎるとテーマからズレてしまうので、今日はMI-6という会社でのお話のみに絞っています。

ソロ期の時代を線で表している画像。2019年から2022年までを青いラインで強調している

MI-6の時系列でお話すると、もともとは一人メンバーで2019年から副業デザイナーとしてジョインし、その時期はなんでもやる立ち位置でした。

ソロ期を表す図。こぎそのアイコンが中央に写っている。

初期プロダクトのデザイン、フロントエンドの実装からTシャツ、ロゴデザインまで、一人で多くのタスクを抱える時期で、スタートアップのデザイナーでよくある働き方でした。

制作物が紹介されている画像。左上はmiHubのロゴ、右上は名刺、右下はパーカー、左下はチラシの断片が写っている
ソロ期に作成されたアウトプット

副業という身で会社の期待値に沿っていたか…ふりかえると至らないことも多々あったかと思いますが、幸いなことに大きな問題にはならず、なんとかやってこれていました。まだその頃は会社の「デザイン」についての課題がそれほど大きくなかった..という背景もあります。

チーム期の時代を線で表している画像。2022年から2023年以降を青いラインで強調している

ここからチーム期に入ります。2022年になると対応するべきタスクや課題が多岐に渡るようになりました。組織の拡大に比例し、より強力にコンテンツマーケティングが動き出し、セールスも活発になり、商談数や露出も増えてきて、会社のブランディングや「デザイン」のあり方をより深く考えるフェーズになりました。

それらは物量的に1人の副業デザイナーに抱えられる量ではありませんでした。
しかし今まで会社として「デザイン」への投資を大きくしてきておらず、MI-6でデザイナーの正社員をいきなり雇うのはハードルが高い、そんな状況でした。そこで思いついたのは「正社員は難しいが、自分のような副業デザイナーとして働いてくれる人を増やすことはできないか?」というアイデアでした。

本業、副業問わずネットワークをたどった結果、最終的に2人の優秀なデザイナーを採用することができました。

チーム期のメンバーがアイコンで写っている。上にリードデザイナー、下にデザイナーが表示されている。右下に※全員副業と書かれている

現在はプロモーションに使うグラフィック作成、LPサイトのデザイン、壁紙、アイコンなど様々な会社のアイテムをメンバーで作成しています。

制作物が紹介されている画像。左上はMI-6のイベントスペースの造作、右上は壁紙、右下は採用資料、左下はMI-6のオリジナルアイコンが写っている
チーム期に作成されたアウトプット1
デザインガイドラインの制定、イベント用バナー作成なども

僕も含めて3人のデザイナーのキャリアはかなりバラバラで、ブランドやコミュニケーションデザインが得意、プロダクトデザインが得意、実装ができる…などの多種多様な技能が入り混じったデザイナーズになりました。

そして特質するべきは「本業」がある上で副業先の「デザイン組織」として機能できていることです。現職の経験値を副業先、あるいは本業にも活かすことができており、相乗効果を与えています。

副業組織の課題

「そんなうまくいくの?」という声はもちろんあると思います。そのとおりです、この体制は今語ったような良い点ばかりではありません、ぼくたちのデザイン組織は最近できたばかりでまだまだ課題が多く、試行錯誤の連続です。また、「副業メンバーだけでつくるデザイン組織」は先人のプラクティスがほぼ無いので上手くいっているのか、いっていないのかの判断も難しいところがあります。
この時間では特に大きく課題になっていた2つの課題と対応策を紹介します。

時間の課題と書かれている。文字の左に時計のemojiが表示されている。

1つ目が「時間」。副業メンバーは本業がありつつの稼働となるので、正社員と違い安定した稼働時間の捻出が難しい事実があります。
本業の業務時間外に稼働する都合、時期によってはプライベートな問題などとバッティングし、当初予定していたような成果を思うように出せないことも多いです。

解決策

この問題についてはチームで検討し、同期的な時間「もくもく会」「1on1」「黒ミサ会」を実施することで解決を試みています。

「もくもく会」

「もくもく会」は週一で決まった時間に集まり、各々の成果を確認しつつ作業を同期的に行う時間としています。コミュニケーションを取りやすくする施策でもあり、フィードバックやコラボレーション作業など、「化学反応」を活発にすることが狙いです。

「1on1」

いわゆる1on1もやっています。これは僕とメンバー1人1人と毎月1回お話しする時間で、今月の動き方の相談、個人的な課題が無いか、はたらき方に不満をためていないか…など、個々の問題・課題などを解消するために実施しているイベントです。

「黒ミサ会」

黒ミサ会は月一で実施され、今月の働き方がどうだったかをメンバーで振り返る時間です。なお、黒ミサという名前は色々名前に込めているものがありますが、詳しく知りたい方はAMAで聞いてください(笑)※
※もともと社員に同意を取らずに自主的に始めた時間だったので、怪しい雰囲気を出すために「黒ミサ」と名付けたのがきっかけです。

この会は主にKPT(Keep Probrem Try)形式でふりかえりを行い、働き方に無理がなかったか、こうしたらもっと上手くやれた…といった課題やチャレンジを共有し、次に活かすための時間です。
また、ふりかえりの過程で今後開発したいデザインアイテムを見繕い、次のフェーズの予定を決める重要な時間として機能しています。

これらは副業メンバーが中心となって行っており、イベントのアイデアも副業メンバーから提案され生まれています。正社員メンバーは基本的に関わらず、非同期共有のみで自主独立した運営がされています。

温度の課題と書かれている。文字の左に温度計のemojiが表示されている。

2つ目の課題が「温度」です。温度と抽象的な言葉にまとめた理由は、一つの言葉に多くの意味、例えば社内の「課題感」「優先順位」「熱量」…などの意味が含まれているからです。
これらの「温度」は主に非同期で関わる副業メンバーにはなかなか伝わりづらいものです。Slackなどのコミュニケーションツールもある程度制限があるため、全てのコミュニケーションを物理的にも時間的にも見通せるものではありません。 また、デザインはビジネスに貢献し、ユーザーの課題を解決するためにあります。これらの「温度」がズレていると適切な課題解決が提案できず、デザイナーの存在価値にも関わります。

解決策

この課題については、正社員メンバーに「課題感の共有やロードマップを考える」チームのマネージャー・オーナーにってもらい、僕たちと会社とをつなぐ「Hub」としての役割をお願いしています。

副業デザイナーズと正社員とを繋ぐ形でマネージャーが中間に入っている図。マネージャーをとおして"Hub"を作ると右下に書かれている。

このポジションは誰でもなれるものではなく、「デザイン」そのものへの重要性や課題感を理解している方がいてこそ成り立つポジションです。
幸いMI-6ではデザイナーではないくとも、「デザイン」に理解を示してくれる素敵な方々がいてくれました。現在は試行錯誤しつつも来年以降の優先順位や今後の進め方をメンバーと一緒に揉んでいます。

副業デザイン組織のこれから

注意のアイコンが中央に写っている

注意ですが、今回の発表は「無条件に副業が素晴らしい!」ということを伝えるためのものではありません。また、再現性の高い組織化の動きではなく、簡単に真似できるものでも無いと思います。

当然ですが、副業という働き方は使える時間が正社員と比べて少ないため、比較するとアウトプットが少なくなりがちです。優秀なデザイナーをきちんと正社員で雇うことができる組織であれば、わざわざ副業社員で固める必要は無いでしょう。あるいは完全にアウトソースしてしまうやり方も、手段として有効かもしれません。

「クロスオーバー」「ナレッジシェアリング」「パラレルキャリア」「シェアリングエコノミー」「ダイバーシティ」と英語で書かれている

「クロスオーバー」「ナレッジシェアリング」「パラレルキャリア」「シェアリングエコノミー」「ダイバーシティ」など…言葉で言うのはかんたんです。
しかし、働き方の多様性や人の流動性などを考えると、今後ありえるであろう「未来」の働き方ではないか、と思っています。

副業を通して新たなキャリアの可能性と、キャリブレーションが行え、働きに応じた給与も得ることができます。
会社は獲得の難しい社員を雇える可能性が高まり、新しいナレッジやアウトプットを得ることができます。
そしてこれは個人的に思うことですが、他の会社に居るスタープレーヤーや優秀な方と、一緒に仕事がしやすいことはとても素敵なことではないでしょうか?

私たちMI-6のデザイン組織は、会社と社会に貢献する「働き方の実験」をしていると考えています。

"化学反応"を起こせる組織を目指すと書かれている

課題は多くこれからも問題は多く出るかもしれませんが、僕たちは従来のはたらき方とは別の「化学反応」を起こせる組織を目指してみようと思います。

この発表を聞いていただいた副業に興味がある、または副業社員の採用を考えている会社の方々に、少しでも「何か」届いていれば幸いです。


この登壇を支えてくれたメンバー、レビューをしてくれた方、Spectrum Tokyo Design Festのスタッフの皆様、ありがとうございました!


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