日本のエンジニア達は海外に出なければいけない
自分は現在アメリカの医療系スタートアップ企業でソフトウェアエンジニアとして働いている。カナダに在住していて、年収は日本円にして約1600万円、エンジニアとしては現在4年働いている。
もしあなたが日本のエンジニアなら、これを読んだ時に心がざわついたと思う。日本にいると表面化しづらい、世界的エンジニアの給与格差を今目の当たりにしたのだから。しかし実際には、自分はほぼぴったりアメリカでのエンジニアの平均給料を貰っているに過ぎない。
日本でのエンジニアの扱い
給料
Economic Research InstituteをソースにしたCodeSubmitさんの各国のエンジニアの平均給料のリサーチによると、日本は$36,024でランキングの27ヶ国中18位、1位のアメリカ($110,140)とは$74,116、即ち2023年11月現在の日本円対アメリカドルのレートで1100万円ほどの開きがある。ちなみに日本の1つ上の国はArgentina、アルゼンチン($39,898)で、同じ計算で60万円ほどの開きである。
いくら日本の経済状況が絶好調では無いとはいえ、この結果は明らかに日本のエンジニアの扱いの悪さがデータになって表面化している。あまり深掘りするとこの記事の趣旨から外れるので多くは語らないが、おそらく多重下請けの構造的欠陥や、人材の流動性の低さによる給与の上昇率の低さがこの数字に関係している様に感じる。
ライフワークバランス
北米ではオフィスワークは基本的に9 - 5(Nine to five)と呼ばれる勤務時間で働く。これは読んで字の如く朝9時から17時までを意味するのだが、この時点で驚いた読者の方もいると思う。そう、日本では謎の”休憩時間”が1時間追加されて9時 - 18時や10時 - 19時が基本的な勤務時間と聞く。それに会社によってはみなし残業というシステムまでついて、残業前提で働くといった環境が当たり前になっている。
これは日本で働いていると当たり前に感じるかも知れないが、北米でこんなシステムを導入しようものなら暴動やデモ待ったなしだ。北米ではもちろん会社やリリース前等の状況にもよるが、1年の大半は9時に始まり17時に終わる。金曜日なんかは15時を回ったあたりから人が消え始める。
日本でエンジニアだった人がカナダに来て一番良く言うのがライフワークバランスの向上である。上記の事を思えばそういった感想が出てくるのも頷ける。
他国のエンジニアと比べた日本のエンジニアの特徴
日本人エンジニアはハイスタンダード
今まで日本のエンジニアの方とお話をさせて頂く機会が幾度もあったが、勤勉で責任感が強く、ツールや言語の知識にも富んだ方々ばかりだった。言い換えると世界的に見ても一流のエンジニアがごろごろ居るのだ。これだけハイスタンダードなエンジニア達が、日本のシステムの中で世界的に見て公平に取り扱われていない話を聞くと、とても心が痛む。ただ働く地域や会社が違うだけで、自分たちは本質的には同じことをしているはずなのに。
具体的なエピソードを挙げるとするならば、自分は多国籍なチームで働いていて世界各国のエンジニアの働き方を見てきた。国はあえて伏せるが、とある国の方々がシニアエンジニアとしてチームに参加していたのだが、彼らには驚かせられた。TypeScriptを使わせればanyはそこらじゅう、Unit testも書かずに平気でPRを上げてくる。自分は彼らよりも遥か後にチームに加わったので、壊れたコードベースを改修するのにとても苦心した。第一線で働くほとんどの日本人エンジニア達はこうはならないと思う。少なくとも自身の観測範囲では。
Brilliant Jerkが多い傾向にある
もちろん日本人エンジニア達が無条件に優れている訳ではない。Brilliant Jerk(ブリリアントジャーク)はご存じだろうか。A high performer with a bad attitude(優秀で態度が悪い人)と言うふうに訳す。北米のテックシーンではこう言った人材はまず許されない。腐ったみかんは他のみかんも腐らせる。Netflixの元CEO、Reed Hastingsさんはこう語る: "Some companies tolerate them. For us, the cost to effective teamwork is too high.”(幾つかの会社は彼らを許すだろうが、我々には奴らがチームに引き起こす損害は大きすぎる)。
“自分は相手よりも優れているから攻撃的な態度を取っても良い”と本気で思っているし、オープンソースのバグにだって平気で文句を垂れる。"自分は一番仕事しているから誰にも文句は言わせない”。こんな人間と働くと想像しただけで気持ちが重くなる。
少し逸れてしまったが、こう言った人が淘汰されていくのも日本のエンジニアのグローバル化のメリットだと思う。この人間性は明確に先進国では否定されていくのだから。
なぜ日本のエンジニアは海外に行くべきなのか
上記で挙げた通り、日本人のエンジニアは世界的に見ても優秀な方が多い。そしてエンジニアの質と扱いのギャップが最も激しい国も日本であると思う。タイトルが示す様に自分は日本のエンジニア達はどんどん海外に出るべきだと思っていて、そうする事で日本のエンジニア達の世界的地位の向上と日本全体のテック人材の扱いをグローバルスタンダードに推し進める結果になると見ているからである。
もしあなたが日本でシニアポジションを600万円でオファーされている間に、ドイツから800万、カナダから900万円のオファーが来れば大体の方は日本以外のオファーを受け取ると思う。そうなれば日本の企業もエンジニアの扱いを改める他なくなってしまう。
上記の例えは少し楽観的すぎるが、あなたが世界で職歴を持てれば少なくとも日本だけでなく、他の国の企業やポジションを選択肢に入れられる。これは現代のエンジニアとして持つべき、または目指すべき状況だと自分は思う。
ここで”海外に出て仕事すればいいじゃん”と言ってしまうのは簡単だが、そうはいかないからこそ日本のエンジニアシーンがガラパゴス化しているのは自明の理である。では、何がエンジニアを日本に留まらせるのだろう?
日本のエンジニアが海外に来ない理由
英語
日本人の英語への苦手意識といえばそれはもう大きくて、カナダで会う日本人の方々も苦手意識を拭えていない人がほとんどなのだ。今やっている仕事がそのまま全て英語になると考えると、尻込みしてしまう読者の方は多いと思う。
しかし、やはり世界共通のビジネス世界ではやはり英語は第一言語なのだ。海外に出た日本人はキャリアが続く限り一生この言語と付き合っていく事になる。しかし裏を返せば、この言語とエンジニアリングのスキルがあれば世界の大体の国で通用する事を意味する。
コミュニティの不足
理解に苦しむが、海外に来た日本人は村社会を形成する。そんな環境で就労の話を聞こうものなら袋叩きにされるのだ。カナダで言うとjpcanadaというカナダに在住する日本人向けの掲示板の様なものなのだが、ここの民度の低さには辟易してしまう。やはり海外に来て生活するのは簡単ではないので、みんな自分の手を明かして後に続く方々に”楽”してようやく勝ち得た自分の立ち位置に来てほしくはないのだろう。インドやブラジル等のコミュニティは助け合いの精神があり、よく集まったり家探しや仕事の斡旋等を手伝ったりしているのを聞く。
もちろんコミュニティは自分が得られる物を得るために参加する物ではない。見返りがあるという確信がなければ人は手を差し伸ばさない。赤の他人ならなおのことだ。コミュニティに参加する、他の人に質問等するならば最低限のリテラシー(聞く前に自身のリサーチはする等)が必要であり、それを理解せずに属するだけで救われると思ってしまう人がいるのも事実。
海外で活躍するエンジニアの情報が行き届いていない
日本という国はやはりG7というだけあって、テックシーン自体は大きくそのサークルの中で情報が完結してしまいやすい様に感じる。そもそも海外に出ようという考えが浮かばないのかも知れない。自分がこの記事を書こうと思ったきっかけはこれで、少しでも多くの方の目に届いてくれる事を願うばかりだ。
海外に行くためにはどうするべきか
何よりも大事なのが自分の置かれた状況を理解する事で、エンジニアとしての職歴や年齢、学歴で取るべきビザ、行くべき国、応募する仕事等影響は多岐に渡るので、プロに相談するのが一番安全な方法である。例えばカナダのバンクーバーでいうとFrogという会社はカナダに来たいエンジニア専門で渡航したい人たちのサポートをカウンセリング、学校やビザの斡旋という形で行なっている。
注意したいのは留学エージェンシーは多岐に渡るので、最終的にはご自身が集めた情報を基にどの様なアプローチで海外就職を目指すかを決める必要があるという事。言い方が厳しくなるが、エージェンシーに任せっぱなしで海外に行こうとする人は、自発性が必要になる海外での生活やキャリアアップで遅かれ早かれ潰れてしまうだろう。
結論
長々と語ったが、まとめ上げると下記の様になる
日本のエンジニアの扱いは世界的に見て悪いほう
扱いに反して、日本のエンジニアのスタンダードは世界的に見ても高い
海外の職歴を持つ事で、企業はあなたをグローバルなスケールで測らなければならなくなる
最終的に日本に戻ろうと、海外での職歴や給与は一生もの
海外に行くためには、自身の置かれた状況をしっかり理解するのが大事
最後に宣伝の様な形になるが、自分のSNSアカウントを貼るので、もし共感して頂けたり質問等あれば是非聞かせて欲しい。自分の経歴をまとめた動画もあるので、気になる方はそちらを参照していただけると嬉い。
いつか日本のエンジニアの方々が世界に羽ばたく事を祈っています。
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Youtube (経歴を纏めた動画): https://www.youtube.com/watch?v=uEDT4AEa_pI&t=2s