地方出身者が東京で家を持つハードルはやはり高すぎる件について
今回はただ地方出身者が東京(首都圏)で生き残り最終的に住宅を購入することがどれほど大変で、どれほどの負担感があるのかを列挙してみたいと思う。今回の記事はある意味、今まで記載してきたことのまとめ編のような内容になっている。
地方の定義は難しいが、非首都圏以外を地方と呼ぶことにしよう。関西は厳密には地方とは呼ばないと思うが、物理的には首都圏と離れているので一応地方の定義に入れておく。ただ経済的、文化的には特に京阪神は首都圏と同じくらい恵まれていると考えることが出来る。
これを読んで、読者の多くには東京で頑張ることがどれだけ不毛で無駄な争いであるかを認識してもらいたい。またこのような不毛な競争を避け、現代の日本で豊かに生きていく方法はないのか、改めてそこも考えてみたい。
尚、今回の記事はイブリースさんの以下の記事と多分に重複する部分はあるが、改めて当事者(体験者)として、その体験談をもとに語っていきたい。
(大学受験から東京パターン)
✓情報量が少なく、周囲の基礎学力が高くない中で高い意識を持って勉学に励み、都会の受験生と同じ学力を身に着ける
→地方では塾や予備校などの教育産業が充実していない。更に地方では中高一貫校が少なく、基本公立校出身者が太宗を占める。
周囲のレベルが高くない中で受験勉強に取り組み、公立高校に進んだところでそこから東大や一橋、東工大に行けるのはほんの一握り。むしろそれだけ不利な状況から東大や一橋、東工大に行けるような学生は「勉強好き」の学者タイプが多く、それは予後の悪さに繋がってくることが多い。
✓地方から東京の大学を受験する負担感。金銭的、肉体的、精神的な負担が大きい。
(大学生活)
✓地方出身者は基本的に上京した場合は、一人暮らしをすることになる。
若干19,20歳の学生が堕落せずに一人暮らしを今までと異なる環境で行うことはかなり厳しい。実際、筆者もかなり堕落した生活をしてしまった過去があるが、正直仕方がない部分はあったのではないかと思う側面もある。
特に日本の現行の就職活動では、ある程度の規模感のある大企業に入りたい場合は、∔2までに抑える必要がある(例:1浪1留で既に∔2)。そう考えると一浪して上京してきた大学生が名のある大手企業に入りたい場合は実質一回しか留年は出来ない(皮肉なことに地方出身者が東京の名門大学に入る場合は、かつては1浪はデフォルトであった)。
最近まで高校生だった学生が今までと全く違う環境で一人暮らしをするのは本当に大変だと思うし、ここで身を持ち崩すものを多く見てきた身としては、大学で上京するのはタイミングとしては少し早すぎるような気がしなくもない。その意味では大学時代を比較的物価の安い地方で過ごせ、同じ公立高校出身者が多く、東京の価値観に染まらずに生きていける京大等は、「一度きりしかない大学生活」をエンジョイするという観点では優れているのではないかと思う。筆者も親からは京大の工学部や経済学部を高校時代は勧められていたのだが、無視して東京に来てしまった身である。。。。。勿論ベストは地元の医学部への進学であったのは言うまでもないが。
✓一人暮らしはそもそも一定程度裕福な子息でないと厳しい。大学生活を送るのに必要な学費と生活費の負担感が地方の家庭にとってかなり大きい。
地方から上京してきた大学生がお金に困って、(女性の場合は)夜職等に手を出すというのは今に始まった話ではないと思われる。
一般的にはバイトによって生計を立てる必要が出てくるが、これが思いのほか負担が大きい。筆者はまだ比較的な塾産業、家庭教師に従事していたが、結構な時間はロスしたような気がする。
✓特に昨今では、ジョブ型雇用が進展する中で英語やITスキル、会計などの即物的なスキルが要求される局面が多くなってきているが、地方出身者は5教科7科目の「受験勉強」に染まってしまっているため、なかなかその価値観から抜け出せない。大学生活とそれらのスキルの伸長、更には就職活動で要求される「体験」を積む必要があり、時間的・精神的な余裕をなかなか確保できない。
(就職活動編)
✓筆者の時からインターン等就職活動が長期化していたが、最近は更にこの流れが加速しているらしい。地方の学生が都会出身の学生と同じだけの「体験」をすることのハードルは非常に高い。どこまで本当かは分からないが、今の学生は大学に入った時点で就活を意識しているらしい。大学時代の活動全てが就職活動につながると考えると、なかなか気が抜けないような気がする。(あくまで筆者の意見ではあるが)学生時代にベンチャー企業でインタ-ンをしたとか、OB訪問をX件こなしたとか、Webテストの成績が良かったとか、(嘘か本当かも分からない)カンボジアに家を建てたみたいな話は、就職してからは何の役にも立たない。確かに履歴書やガクチカの見栄えは良いのだが、そんなことをする暇が合ったら、大学時代に確り英語を身に着けたり、研究活動に従事して、深く考える力を身に着けて頂きたいというのが現場の本音なのだが、人事部はこのようなキラキラ学生を採用してしまうのだろう。言ってみれば資格や学歴、学力はストック型であり後々も一定程度の効果を発揮するが、これらの「体験」はフロー型であるので、後々業務で役に立つとは思えない。言ってしまえば、就職活動でうまくいくための「お化粧」に過ぎないのだ。
ではこういった「お化粧」は無視して、ありのままの大学生活を送るべきなのかと言われるとそうとは言い切れない事情がある。日本では、実質優良企業に入れるチャンスはこの新卒での就職活動の一回きりしかないので就活生も意味が無いと分かっていながら、このような「課外活動」に従事する必要が出てくるのである。新卒一括採用、終身雇用が緩和され、ジョブ型が進展していけば、就活生もこのような不毛なエピソードを語らなくてよくなるし、企業側も無駄に形だけの新卒を採用しなくても良くなるのでは無いだろうか。
✓都内在住者であれば、一人暮らしをしながら就職活動をする大変さ。スケジュールマネジメント、メンタルケア、スーツの新調等いずれも実家暮らしの方が有利。また地方の大学在住者が東京に来て就職活動をする負担感の大きさはここで書くまでもない。地方でも説明会等は行っているが、インターンの機会等はやはり限定的。特に東京配属が100%近い確率で確約されるような職種、例えば金融の専門職やコンサル等は東京で開催されるインターンに参加する必要があるが、地方在住者が参加するのはなかなか難しいのではないか。またインターンの参加にとどまらず、就活は情報戦の側面が強いが、地方にはその情報が流れにくいという側面がある。
(社会人編)
✓全国転勤の会社に入社した場合は、全国どこに配属されるかは分からない。非常に残念なことに地方出身者は全国転勤型の企業に入社することが多い。背景には、東京確約の企業や職種は就職活動の難易度が高く、地方出身者には厳しいという面と英語が出来るか否かが東京配属を勝ち取れるかを大きく左右するからである。またそもそも地方出身者の方が地方配属に抵抗感が無いことが多いので、企業側としても採用しやすいといった側面はあるのではないか。
地方出身者は受験勉強の時点から英語ではなく、出身地の差が出にくい数学で点数を稼ぐ傾向にあり、英語が出来ないことが多い。
これゆえに都内出身で英語しか出来ない帰国子女が本部に最初から配属される一方で、理系院卒が僻地に行くという現象が生じてしまうのである。
そして全国転勤の企業に入社すると次はライフプランの立てにくさと言う問題に直面することになる。
ベストは東京配属確約型の企業や職種、更には地方都市確約型の企業に入ることであるが、前者は地方出身者にはハードルが高い
✓初期配属が東京でない場合に、もし将来的に東京で働きたいという希望があるのであれば、その後の配属を勝ち取る必要がある。この出世競争が大変。また昨今では女性登用が進む中で男性総合職が東京配属を勝ち取る難易度は以前と比べて上昇。何故なら企業は東京勤務を希望する女性を優先的に東京に配属するため男性が東京に留まり続けるのは難易度が以前と比べて上昇している
✓そもそも地方出身で大学から都内に来ているような文系学生は筆者のように発達障害ブーストに頼って高学歴になっていることが多い。このため
、何とか就活までは学歴に頼って乗り切ることが出来ても、就職してから「終わる」ことが多い
✓最近は文系学生の予後がテーマに挙がることが多い。文系学部卒で特段スキルが無い場合は、文系総合職となるが、この職種(と言うか身分)で生き残ることは非常に大変だ。
商社、コンサル、金融のいずれをとっても文系総合職は業務内外で時間を奪われがちである。またスキルが無いため、一度大企業の椅子から降りてしまうとそこからは果てしなく転落するパターンも多い。言ってみれば文系総合職と言う椅子は、刹那的なフロー型の身分と考えることが出来る
✓無事に東京に配属されても次にパートナー探しの必要がある。注意点は昨今では、共働きが進展する中で、転勤のある男性は嫌悪される傾向にあること。つまり全国転勤型の男性は、次の2者択一を要求される。
①全国転勤が無い企業への転職。この時の注意点は、全国転勤型の企業の方が一般的に社格が高く、また転勤プレミアムが給与に乗っていることが多いため、東京にしか事業所が無い企業に転職する際には給料が低下する可能性がある点。これによって共働きを希望する女性に合わせることは可能になるが、自分自身の給与そのものは下がってしまうことが多い
②全国転勤を許容してくれるパートナーを探す。具体的には勤務地を選ばない職種に就いている女性や専業主婦希望の相手を選ぶ。後者の場合には1馬力で首都圏で生きていく必要がある。無事に上記の条件を満たしたとしても30代前半ではせいぜい年収800万もあれば良い方だと思われ、その場合は東京在住は不可能で千葉や埼玉、神奈川に住宅購入することになり、(在宅勤務が出来ない場合は)通勤地獄に苦しむことになる。
またそもそもの前提として地方出身者の方がパートナーを探すのが難しいという説もある。都内出身者は大学前からのコミュニティを既に形成していることが多く、そこに地方出身者が割って入ることは不可能だろう。
結構周囲を見ていると都内出身者同士でくっついているパターンも多いので、案外無視できない要素ではあると思われる。地方出身者は地方出身者同士でくっつくケースが多い
✓頼れる実家が首都圏に無いというネック
首都圏にある実家は子育てもでも有効であるし、そもそも親が持ち家を都内に有していれば、それだけで親は数千万の資産を保有していることになる。下手すれば億を超える可能性もある。地方出身者の親の持ち家は当然地方にあることになるが、これはあまりにも頼りない。人口減少が進む日本で、地方の持ち家が価値を有することは考えにくい
✓バカ高いローンを背負っての住宅購入
そうしてこうして、家を都内に購入する局面に入ってくると、次は額面の高さからそもそも1馬力ではローンが引けないという問題に向き合う必要が出てくる。
首都圏を中心に住宅の価格が上昇し続けているので、人によっては1億とかそれくらいのローンを背負うことになる。都内の一等地であれば1.5億とか2億に達するパターンもあるだろう。
住宅ローンの目安はマックスでも8倍と言われているが、そうなると逆算して世帯年収で1500万程度は必要だ。
1馬力で住宅購入適齢期である30代でここまで達するのはなかなか大変だ。
そのため2馬力が前提条件となってくるが、そうなると上記で述べたような「転勤がなく、今後も東京で働ける」という条件を満たす必要が出てくる。
地方出身者が実家の支援なしに都内に家を購入することはほぼ「無理ゲー」と化してきているのである。
勿論神奈川、埼玉、千葉に購入する選択肢もあるが通勤できるかと言う点は確り考えておいた方が良い。
このような点を踏まえると、「在宅勤務が出来る」職種と言うのはそれだけで年収数百万の価値が上乗せされていると考えて良いだろう。
(そしてそのような職種は、大抵、ITや会計などの専門的スキルを要求されるので、だからこそこれらの即物的なスキルを身に着けておく必要があるのだ)
一体ここまで高いローンを破産覚悟で背負って東京で生きていく必要はどこにあるのだろうか、と言うことはよく考えた方が良いポイントであると思う。
そしてその後も人生は続く。。。。(バカ高いローンを背負いながら。。。)
以上をまとめると、下記のような複数のハードルを乗り越えて地方出身者はようやく首都圏に家を持つことが出来るのである。
1.地方から首都圏の学生と肩を並べる学力を身に着ける
2.大学名だけでなく潰しの効く学部を適切に選択する
3.大学生活を堕落せずに過ごす
4.大学時代に即物的なスキル(英語・会計・IT等)を身に着ける
5.就職活動でアピールできる「体験」を積む
6.大学早期から始まる就職活動に精を出す
7.新卒就活に乗り遅れない
8.全国転勤型の企業で東京配属を勝ち取るもしくは就職偏差値が高く都内に配属が限定される企業・職種に進む
9.東京に残れるような職種を選択する
10.パートナーを探す
11.多額の負債を背負ってローンを組む
12.時間貧乏に陥りながら子育てを全うする
逆に言うと首都圏にもっと欲を言うと都内に実家があるものはそれだけで上記の多くのポイントで優位に立つことが出来るので、それだけで人生のガチャに当たったと考えて良いのだ。
地方では明確に優秀層に位置づけられ、人生のレールを外れなかったものでもやっとこれで、生まれながらにして都内に生まれたものにようやく並ぶことが出来るというのが現代日本の在り方なのである。
ここまでの負担を地方出身者は押し付けられるため、東大に来てもどこかでぶっ壊れるものが出てきてもおかしくない。東大でこれなのだから、他の大学に来た地方出身者の中には、可視化されていないだけでぶっ壊れている」ものも結構存在するはずである。
わざわざここまでの負担を背負ってまで地方出身者は、都内に出てくる必要があるのだろうか?
何か解決策はないのだろうか?下記にいくつか思いつく解決策を述べていく。
(地元に戻る)
①地元の医学部への進学し、地元に根差して過ごす
②弁護士、公認会計士等の専門職として地元に根差して生きていく
③新卒就活の時点で地元の県庁やインフラ企業に進む
(それでも東京にしがみつく)
④新卒就活に精を出し、東京確約の企業や職種に入る
⑤医師、弁護士、会計士などの資格職で東京に残る
⑥都内出身のパートナーを見つける
筆者の感覚では地方出身者にとって難易度は以下の通りとなる。
④≻≻②=⑤≻①≻⑥≻③
実は一番難しいのが、④だと思う。④は、高学歴かつ英語が出来て大学時代に「体験」を積んだものしか入れないが、その「体験」を積むのが地方出身者にとってはハードルが高い。
勉強は地方にいても東京にいてもただ机に向かい合うという作業をこなせばよいだけなので実は地域間格差はそこまで出ない。ましてや弁護士や公認会計士のように積み上げが問われない資格においては、「試験に合格する」と言う観点のみではあまり地域間格差は無いのではなかろうか。「勉強」の方が「持たざる者」にとってはよっぽど楽な選択肢なのである。
ネックは医学部ほど、採用の口が地方にはないことであろう。
恐らく一番安パイな選択肢が、地元の医学部に進学することである。もうこれはこれまでに何度か説明してきたことではあるので、わざわざここで説明する必要は無いだろう。
今は人手不足もあって、若者の就職状況が良好であるゆえに医学部の相対的な価値が低下し、地方医学部を中心に易化の傾向が確認される。
いつまでこの傾向が続くかは不透明であるので、今は医学部に入る絶好のチャンスであると思われる。そのため難易度は会計士や弁護士よりも下に位置付けた。
詳細については過去の記事を参照されたい。
そしてもう一つの有力な選択肢が地元に根差した企業に入るという事である。地元の県庁やガス、電力、地銀などのインフラ企業である。
この場合も地元の名士になることは出来るが、難点はとにかく転職先が無いので、一社に人生を委ねる必要が出てくるという点である。こうなるとどうしても普段の立ち振る舞い等に気を付ける必要が出てくるので、窮屈な人生であり、地方医学部の下位互換と言えるだろう。
個人的な意見であるが、早慶以上の大学に進学できるのであれば、地元を捨てて都内に残る価値はあるが、それ以下の大学であれば、地元の県庁やインフラ企業に進んだ方が幸福な人生を送れる可能性が高いのではないか。つまり東京に残るかそれとも地元に帰るか否かの損益分岐点が「早慶に進学できるか否か」だと思われる。ただ早慶でも下位学部・学科の就職状況は決して良好ではなく、結構悲惨なことになっているので、損益分岐点はもっと上にある可能性もある。別に地方出身かつ早慶未満の学歴で都内に残ることを否定するものではないが、そこまでする必要は本当にあるのかと言うことは良く考えた方が良いと思う。
それでも東京と言うか首都圏に残りたい人は、④は最初から諦めて、⑤を目指そう。これであれば転勤もなく、希望すれば都内で働くことが出来る。もしくは医師であれば医師不足の埼玉や千葉で好待遇を得ながら働くという選択肢も存在する。
そして残された最後の選択肢が、東京出身のパートナーを探すという事である。これによって疑似的にはあるが、東京出身者のメリットを半分くらいは享受できることになる。ただ当然だがこれは結構難易度は高い。
最後に個人的な感想にはなってしまうが、ここまで無理を重ねて都内に残る必要とかメリットってどこにあるのだろうか。
高学歴層は医師や弁護士などの資格業もしくは地場のインフラ企業に勤めながら地元の名士として生きる人生の方がよっぽど幸福度は高いように思うのだが。。。