11月27日、Claudeにスタイル選択機能が追加されました。スタイルを使用すると、Claude の応答を、コミュニケーションの好み、トーン、構造に合わせてカスタマイズできます。
プリセットのConcise(簡潔)、Explanatory(説明的)、Formal(フォーマル)の3種類のスタイルから選択できるほか、好みの会話コンテンツをPDFなどでアップロードし、カスタムスタイルを作成して利用することもできます。
このカスタムスタイルを利用して様々なことができることが分かりましたので、今回は、その面白い使い方をいくつか紹介したいと思います。
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1.プリセットスタイルの使用
(1) スタイルの選択方法
スタイル選択機能を使用するには、以下のように入力欄の下の「Choose style」をクリックして、スタイル選択のリストを開きます。
最初から利用可能なプリセットのスタイルは以下の通りです。
Nomal(通常):Claudeからのデフォルトの応答
Concise(簡潔):より短く、より直接的な応答
Explanatory(説明的):新しい概念を学ぶための教育的応答
Formal(フォーマル):明確で洗練された応答
そして、リストからスタイルを選択すると、以下のように入力欄の下に選択したスタイルが青字で表示されます。
(2) プリセットスタイルの使用例
以下の同じ指示に対して、各スタイルの応答がどう違うのか比較してみます。
① Normal(通常)
② Concise(簡潔)
Normalに比べて、短く簡潔な回答になります。
③ Explanatory(説明的)
箇条書きを使わず、丁寧な口語調の回答になりました。
④ Formal(フォーマル)
バランスの取れた分かりやすい解説です。
2.カスタムスタイルの作成
カスタムスタイルの作成には、以下の3つの方法が用意されています。
参考とする文章例のファイルをアップロードして作成
参考とする文章例のテキストを貼り付けて作成
自分でスタイルを記述して作成
以下、順番に解説します。
(1) カスタムスタイル作成画面の開き方
カスタムスタイルを作成するには、以下のように「Choose style」をクリックしてスタイル選択のリストを開き、「Create & Edit Styles」をクリックします。
すると、以下のような画面が表示されるので、ここで「Create Custom Style」をクリックします。
すると、以下のような画面が表示されます。
(2) 文章例のファイルをアップロードしてカスタムスタイルを作成
最初に、参考とする文章例のファイルを用意します。テキスト、PDF、DOC、HTMLなどのファイルを利用することができます。
今回は、青空文庫の「走れメロス」のサイトから印刷機能の「PDFとして保存」を使用してPDFファイルを作成し、パソコンに保存しました。
次に、カスタムファイル作成画面で「Add Writing Example」→「Upload from device」とクリックして、先程保存した「走れメロス」のPDFファイルをアップロードします。すると、Claudeが以下のように「Soul Weaver」という名前のカスタムスタイルを作成します。
(注)20万トークンを超えると容量オーバーでスタイルの作成を拒否されますので気を付けてください。
左側の「Edit with Claude」をクリックすると、ユーザーが指示を入力してカスタムスタイルを編集することができます。
右側の「Preview with an example」の下のボタンをクリックすると、英語でカスタムスタイルを使用した例文を作成します。
右側のOptionsをクリックすると、ドロップダウンリストが現れ、「Rename Style」でカスタムスタイルの名前を変更できます。今回は、名前を「走れメロス」に変更しました。また、「Delete style」でカスタムスタイルを削除できます。「Edit style manually」をクリックすると、以下のように、カスタムスタイルの具体的な指示が左側に表示され、ユーザーが自分で修正することができます。(※userExamplesの部分を日本語の例に書き換えると、その例により忠実な表現となります。)
以下に、英文の指示とその翻訳を掲載します。
「走れメロス」のカスタムスタイルの画面に戻って、「Use Style」をクリックすると、以下のように青字で「走れメロス」と表示され、カスタムスタイルがセットされます。
「ChatGPTについて解説して」とClaudeに指示した出力結果は以下の通りです。今までの回答と異なり、古い物語のような文章になっています。
次に、「SF小説を書いて」と指示します。出力結果は以下の通りです。人情味のあるSFストーリーになりました。
(3) 文章例のテキストを貼り付けてカスタムスタイルを作成
① ホラー小説風のカスタムスタイル
今回は、青空文庫に掲載されているH. P. ラヴクラフト作の「ダゴン」のテキストを使用します。
テキストを貼り付ける場合も、20万トークンを超えると、スタイルの作成を拒否されますので、一部抜粋するなどして分量を抑えてください。
カスタムファイル作成画面で「Add Writing Example」→「Paste text content」をクリックすると、以下のような画面が表示されます。
右側の入力欄に先程の小説「ダゴン」のテキスト全文を貼り付けて、「Create Style」をクリックします。
すると、Claudeが以下のように「Existential Lens」という名前のカスタムスタイルを作成しました。「Options」→「Rename Style」で名前を「ラヴクラフト」に変えておきます。
「Use Style」をクリックして「ラヴクラフト」のカスタムスタイルをセットし、「ChatGPTについて解説して」と指示します。Claudeの出力結果は以下の通りです。ホラー小説っぽい独特な語り口の文章になりました。
次に、「ホラー小説を書いて」と指示して、このカスタムスタイルが得意なホラー小説を書いてもらいました。独特の不思議な雰囲気を持つホラーストーリーになりました。
② ゆっくり解説風のカスタムスタイル
次に、魔理沙と霊夢のゆっくり解説風のカスタムスタイルを作成してみます。
「Paste text content」をクリックして表示される入力画面に以下のテキストを貼り付けて、「Create Style」をクリックします。
カスタムスタイルの名前を「ゆっくり解説」に変更します。
「ChatGPTについて解説して」と指示したClaudeの出力結果は以下の通りです。ちゃんと「ゆっくり解説」風の会話になっています。
③ ずんだもんのカスタムスタイル
会話サンプルが無くても、AIで作成することができます。
今回は、ChatGPTにずんだもんの会話サンプルを作成してもらいました。
この会話サンプルを「Paste text content」の入力画面に貼り付けて、「Create Style」をクリックします。カスタムスタイル作成後に名前を「ずんだもん」に変更しました。
「ChatGPTについて解説して」と指示したClaudeの出力結果は以下の通りです。最後の言葉が少し変ですが、ちゃんと「ずんだもん」らしい会話になっています。
(4) 業務用の定型文書を作成
カスタムスタイルは、文章の構成や文体が決まっている業務用の定型文書を作成する際に便利です。サンプルを一つ又は複数用意するだけで、簡単にその定型文書用のカスタムスタイルを作成することができます。
実際に使用している文書をサンプルとして使用するべきなのですが、今回は、ChatGPTに依頼して、「SmartFlow AI」という架空の新しいAIサービスを紹介するサンプル文書を作成してもらいました。
この会話サンプルを「Paste text content」の入力画面に貼り付けて、「Create Style」をクリックします。
すると、以下のようなカスタムスタイルが作成されました。名前は「新サービス紹介」に変更しています。
Use Styleをクリックして、「新しいサービスの紹介」のカスタムスタイルをセットします。Anthropic公式のスタイル選択機能の紹介ページの全文をコピペしてClaudeに入力した結果は以下の通りです。
このように、業務で何度も同じような文書を作成する必要がある場合は、カスタムスタイルを利用して簡単に文書を作成することができます。
3.自分でスタイルを記述してカスタムスタイルを作成
(1) 5つのスターティングポイント
参考とする例文を用意するだけではなく、自分でスタイルを記述してカスタムスタイルを作成する場合には、以下のカスタムスタイルの作成画面で右下の「Describe style instead」をクリックします。
すると、以下の画面が表示されます。
ここで、以下の5つのスターティングポイントから一つを選んで、右側の入力欄にスタイルを記述する文章を入力し、「Generate Style」をクリックすると、カスタムスタイルを作成することができます。
Define style objective(スタイルの目的を定義する)
Tailor to an audience(対象の読者に合わせる)
Use specific voice & tone(特定の声とトーンを使用する)
Describe generally(一般的に記述する)
Use custom instructions (advanced)(カスタム指示を使用する(上級者向け))
最後の「Use custom instructions」は、ユーザーが入力した内容がそのままカスタムスタイルの指示となり、それ以外の4つのスターティングポイントは、ユーザーが入力した内容を基にClaudeがカスタムスタイルを作成します。
(2) スタイルの目的を定義する
「Define style objective」(スタイルの目的を定義する)を使用して、社内セミナーでの発表用の原稿を書くカスタムスタイルを作成します。
右側の入力欄に以下のように入力して、「Generate Style」をクリックします。
すると以下のようにカスタムスタイルが作成されました。
ここで、「Options」→「Edit style manually」をクリックして、Claudeが入力内容を基に作成したカスタムスタイルの具体的な指示を見てみます。今回は日本語で指示が作成されました。
次に、「Save Changes」をクリックして前の画面に戻り、「Use Style」をクリックすると、「セミナー解説」のカスタムスタイルがセットされます。
Claudeの入力欄に「ChatGPT」と入力した出力結果は以下の通りです。ChatGPTについて解説するセミナー発表原稿が作成できました。
(3) 特定の声とトーンを使用する
「Use specific voice & tone」(特定の声とトーンを使用する)を使用して、孫悟空のチャットボットを作成します。
右側の入力欄に以下のように入力して、「Generate Style」をクリックします。
すると以下のようにカスタムスタイルが作成されました。なお、名前は後で「孫悟空」に変更しました。
「Edit style manually」をクリックして、画面の左側に表示されるカスタムスタイルの具体的な指示を確認します。
次に、「Use Style」をクリックして「孫悟空」のカスタムスタイルをセットし、「ChatGPTについて解説して」と入力した出力結果は以下の通りです。悟空の口調でChatGPTについて解説してくれます。「界王様みたいな」という表現が出てくるなど、ドラゴンボールに関する知識もあるようです。
次は、「家族について話して」と入力してみました。
Claudeがドラゴンボールに関する知識を予め持っていることから、単に口調を真似るだけでなく、ドラゴンボールに関する知識を踏まえて会話してくれるようです。
(4) 一般的に記述する
「Describe generally」(一般的に記述する)を使用して、ニュース記事からX投稿用の原稿を作成するカスタムスタイルを作成します。
右側の入力欄に以下のように入力して、「Generate Style」をクリックします。
すると以下のようにカスタムスタイルが作成されました。なお、名前は後で「X投稿」に変更しました。
カスタムスタイルの具体的な指示は以下の通りです。
「Use Style」をクリックして「X投稿」のカスタムスタイルをセットし、Gigazineの「世界初の「16歳未満のSNS利用を禁止する法律」がオーストラリアで成立」という記事の全文をClaudeの入力欄に貼り付けた出力結果は以下の通りです。
また、Anthropic公式サイトのスタイル選択機能を発表したニュース「Tailor Claude’s responses to your personal style」の全文をClaudeの入力欄に貼り付けて出力した結果は以下の通りです。
このカスタムスタイルを使用すれば、ニュースが発表されてから10秒あまりで、そのニュースをまとめた記事をXに投稿することが可能です。
(5) カスタム指示を使用する
① 星新一の文章スタイル
「Use custom instructions」(カスタム指示を使用する)では、入力した指示がそのままカスタムスタイルの指示になります。
今回は、星新一の文章スタイルで文章を書くカスタムスタイルを作成します。
最初に、カスタムスタイルの指示を作成するために、星新一の文章スタイルの説明文とサンプルを用意します。これも自分で用意するのは大変なので、AIに作成してもらいます。Claudeでも作成できるのですが、ChatGPTの方が分析が細かいように感じたので、今回はChatGPTで作成します。
星新一の文章スタイルの説明文を作成するためのプロンプトと出力結果は以下の通りです。
次に、文章スタイルのサンプルを作成します。
どのサンプルもオチが微妙な感じがしますが、星新一の文章の雰囲気は出ていると思うのでこのまま採用します。
上の図の「Use custom instructions」の右側の入力欄に、先程用意した星新一の文章スタイルの説明文とサンプルを基に作成した指示を入力します。
指示では、サンプルの前に以下の文章(英語)を挿入し、<userExamples>~</userExamples>のタグでサンプルの文章を挟みます。
実際に入力した指示は以下の通りです。
指示を入力して「Generate Style」をクリックすると、以下のカスタムスタイルが作成されました。なお、名前は後で「星新一」に変更しました。
カスタムスタイルの具体的な指示は、以下のように入力した指示がそのまま記載されています。
「Use Style」をクリックして「星新一」のカスタムスタイルをセットし、「ChatGPTについて解説して」とClaudeに入力した出力の結果は以下の通りです。
ある程度、SFショートショート的な文章になっていますが、面白いストーリーや切れ味鋭いオチを考えることは、まだ難しいようです。
次に、「SFショートショートを書いて」と指示しました。
先程のストーリーよりは良くなっているでしょうか。
② さとり構文でX投稿
次は、有名な「さとり構文」でXの投稿文を作成するカスタムスタイルを作成します。
以下のプロンプトでChatGPTに指示して、スタイルの説明文とサンプルを用意します。
この出力結果を基に、以下のようなカスタムスタイル用の指示を作成し、「Use custom instructions」の右側の入力欄に入力します。
指示を入力して「Generate Style」をクリックすると、以下のカスタムスタイルが作成されました。なお、名前は後で「さとり構文でX投稿」に変更しました。
「Use Style」をクリックして「さとり構文でX投稿」のカスタムスタイルをセットし、「Claudeのスタイル選択機能」とClaudeに入力した出力の結果は以下の通りです。
「AIエージェント」とClaudeに入力した出力結果は以下の通りです。
③ ヨレンタの会話スタイル
ClaudeはWeb検索ができないため、新しい情報を扱うことが苦手です。その場合も、ChatGPTでWeb検索機能を使用してカスタムスタイルの説明文やサンプルを作成することで、新しい情報に基づくカスタムスタイルを作成することが可能です。
今回は、「チ。-地球の運動について-」のヨレンタのように回答するカスタムスタイルを作成します。
最初に、ChatGPTでWeb検索機能を使用して、スタイルの説明文とサンプルを作成します。
次に、この出力結果を基に、以下のようなカスタムスタイル用の指示を作成し、「Use custom instructions」の右側の入力欄に入力します。
指示を入力して「Generate Style」をクリックすると、以下のカスタムスタイルが作成されました。なお、名前は後で「ヨレンタ」に変更しました。
「Use Style」をクリックして「ヨレンタ」のカスタムスタイルをセットし、「ChatGPTについて解説して」とClaudeに入力した出力の結果は以下の通りです。
次に、「地動説についてどう思うか?」と聞いてみます。
Claude自体は、以下のように「チ。-地球の運動について-」に関する知識を持っていませんが、かなりそれらしく回答することができています。
4.カスタムスタイル用の指示を作成するカスタムスタイル
カスタムスタイルは活用すれば、ChatGPTのGPTsやClaudeのprojectのように様々なタスクを実行することができます。
第3章では、カスタムスタイル用の指示をChatGPTなどのAIで作成する例を紹介しましたが、この指示をカスタムスタイル自体に作成させることもできます。
この指示を作成するカスタムスタイルに入力する指示は以下の通りです。
次に、この指示を「Use custom instructions」の右側の入力欄に入力し、「Generate Style」をクリックします。
すると、以下のようにカスタムスタイル用の指示を作成するカスタムスタイルが作成されます。
(1) 村上春樹のカスタムスタイルを作成
「Use Style」をクリックして「カスタムスタイル用の指示を作成」のカスタムスタイルをセットし、「村上春樹」とClaudeに入力した出力の結果は以下の通りです。
次に、このカスタムスタイル用の指示を「Use custom instructions」の右側の入力欄に入力して「Generate Style」をクリックします。
すると、以下のようなカスタムスタイルが作成されます。
「Use Style」をクリックして「村上春樹」のカスタムスタイルをセットし、「ChatGPTについて解説して」とClaudeに入力した出力の結果は以下の通りです。村上春樹らしい文章になっていると思います。
次に「不思議な出来事に関するエッセイを書いて」と指示してみました。
よく書けていると思います。
(2) 「吾輩は猫である」のカスタムスタイルを作成
「カスタムスタイル用の指示を作成」のカスタムスタイルをセットして、「夏目漱石の「吾輩は猫である」」とClaudeに入力した出力結果は以下の通りです。
次に、このカスタムスタイル用の指示を「Use custom instructions」の右側の入力欄に入力して「Generate Style」をクリックします。
すると、以下のようなカスタムスタイルが作成されます。
「Use Style」をクリックして「吾輩は猫である」のカスタムスタイルをセットし、「ChatGPTについて解説して」とClaudeに入力した出力の結果は以下の通りです。夏目漱石らしい文章になっていると思います。
次に「生成AI界隈について論評して」と指示してみました。
なかなか面白いと思います。
5.まとめ
Claudeのスタイル選択機能は、単に文章の構造や文体を真似るだけに留まらず、活用すれば、ChatGPTのGPTsやClaudeのprojectのように、様々なタスクを実行することができます。
また、スタイル選択機能の最大の利点は、GPTsやprojectのようにわざわざ呼び出す必要がなく、以下のように、入力欄のドロップダウンリストから簡単にスタイルを選択できることです。
よく使うスタイルをセットしておけば、簡単な操作で好みの文章を作成することができ、例えば、これを使えば、新サービスのニュースが発表されてから10秒で記事をまとめてXに投稿することができます。
様々なキャラクターを設定したチャットボットを作成することも簡単です。今までプロンプトやChatGPTのGPTsを使ってチャットボットを作成してきましたが、カスタムスタイルで作成したチャットボットが最もキャラクターの口調や性格を反映していて、性能が高いと感じます。
著名な人物や作品の文章スタイルを真似ることができ、文豪の文章スタイルで商品説明を書いたり、有名作家の文章スタイルを真似て気の利いたエッセイを書いたりすることもできます。
業務では、同じような構成や表現で何度も類似する文書を作成する機会が多いため、業務用の文書作成にもとても便利です。
さらに、スタイル選択を使用してClaudeに指示をする場合でも、ファイルをアップロードしたり、アーティファクトを起動したりすることが可能であるため、まだまだ多くの活用方法を考えることができます。
Claudeのスタイル選択機能は、このように非常に奥が深く、活用範囲の広い機能なので、是非、様々な使い方を試して、この機能を使いこなしてください。