銀行からお金を借りられなかった理由
電子楽器インスタコードはクラファンで約8000万円の支援を集めましたが、開発を始めた当初、銀行からは一切お金を借りることができませんでした。
商品化にはお金が必要
アイディアを商品化するには資金が必要です。
電子機器の場合、開発費、設計費、試作費、金型費、初期ロットの生産費、プロモーション費など、多額な費用がかかるので初期ロットを売り切っただけでは利益が出ないことは珍しくありません。
お金を集める3つの方法
商品化の資金を集める方法として私は3つを検討しました。
金融機関からの融資
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投資家からの出資
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クラウドファンディングを使った予約購入
この3つの中から最終的にクラウドファンディングを選んだ理由を3回に分けてお話したいと思います。
銀行は会社の将来性なんか見ない
銀行など金融機関から融資(借入)を受ける際の審査はすごくシンプルで「返済能力」の有無だけを見ています。返済能力の判断基準で特に重要なのは「安定した収入」「返済の実績」の2つです。
つまり、会社や事業の将来性は全く考慮されません。
…ちょっと言い過ぎのように見えますか?
銀行の人に
「今取り組んでる事業は絶対成功するから将来性を考慮してよ~」
って事業計画を説明すると、営業担当者は融資の枠を増やすことが自分の成績になりますから
「良いですね、なんとか上司に掛け合ってみます!」
なんて言って頑張ってくれる若くて優しい営業マンもいます。
しかしどんなに営業担当が上司にプレゼンしたところで、将来性の有無で審査が有利になることはほぼ無いんです。
事業のプロじゃない
金融機関はお金のプロですが、残念なことに製品を作ったり売ったりする事業のプロではありません。
ですから、事業の将来性を評価するシステム自体が無いんです。
融資の判断基準は
今「安定した収入」があるか
これまで「借入をちゃんと返済」しているか
潰れた際に「差し押さえる資産」(担保)があるか
だけです。
とはいえ将来のことを語るのは無駄ではありません。
営業担当者とのコミュニケーションには重要ですが、将来性があっても融資の枠は増えないと理解しておくと話がスムーズに進みます。
ほぼ門前払い
私は、2019年の秋にインスタコードの試作機を完成させて、その後、海外の展示会に出展したりマーケティング調査を行なって、製品が売れるという資料が整ったので銀行に融資の相談をしました。
しかし「安定した収入」も「返済の実績」も無いので、事業計画を見せようが、試作機を見せようが、アンケート結果を見せようが、量産に必要な数千万円のお金を貸してくれるわけがなく、融資は受けられませんでした。
そもそも、今の低金利で実績のない会社にお金を貸してしまったら、銀行が潰れてしまいます。
政策金融公庫は貸してくれる
そんな中、政府系金融機関の政策金融公庫だけはちょっと違います。
ベンチャー企業向けの融資制度があり、実績のない会社が新事業を立ち上げるための資金を貸してくれます。
私の場合、クラファンを実施する前は、ちょうどコロナ対策の融資で窓口がパンク状態だったため話すらできなかったので、貸してもらえたかどうかわかりませんが、クラファンを達成したあと1000万円の融資を受けることができました。
東京都が事業性を評価してくれる
金融機関が会社の将来性を評価できない代わりに、東京都中小企業振興公社には、様々な分野の専門家が事業の将来性を評価してくれるサービスがあります。
インスタコードはクラファンで市場ニーズが証明された後、事業可能性評価事業の審査を受けて「事業可能性あり」と認められました。
公社の人が事業計画の書き方などを丁寧にサポートしてくれるので、すごく役に立ちますし、これがあると、金融機関の評価にも少しプラスに働く場合があるとかないとか?(はっきりとは教えてもらえません)
ほかの自治体にも起業を支援する制度はたくさんあるので調べてみると良いと思います。
クラファンの実績があっても借りられない
クラウドファンディングで8000万円の支援を受けた後もお金には困りました。半導体などの価格が高騰し、当初の見込みよりコストが上がったことも要因の一つですが、クラファンで予約いただいた分のほかに、販売する分を確保しないといけないというのが大きな理由です。
クラファンでは本気出してない
「クラファンで8000万円も売れてすごい」と評価していただけるのはありがたいのですが、実はクラファンでは「売れすぎないように」工夫していました。
クラファンで大成功しても、世間に知られていない商品はたくさんありますが、インスタコードはそんな終わり方をしてはいけません。
一般発売してからが本番と位置づけて、クラファンでは最低限の資金集めと話題作り、そして売上予測のデータ集めを行なっていたんです。
そして、一般発売してからもっと売れるというデータが揃っていました。
東京都に紹介してもらった銀行からも門前払い
東京都の中小企業振興公社で「事業可能性あり」と認められたので、某銀行の創業支援窓口を紹介していただきました。
創業支援窓口の担当者はクラウドファンディングにも詳しいので、今後、クラファンの何倍も売上が見込めることを理解してくれました。
そして、担当支店の窓口に繋いでくれたのですが、結局、支店の担当者とは面談すらさせてもらえませんでした。
創業支援の担当者からは「本当に申し訳ないです」とお詫びの電話をいただきました。
信用保証協会もダメ
銀行や信金がスタートアップや中小企業の審査をして責任を負うにはリスクが高いので、公的機関の「信用保証協会」が審査して債務を保証するという仕組みがあります。
ようやく親身になってくれる信用金庫の担当者と出会い、信用保証協会に審査を提出してくれましたが、信用保証協会からは、製品を完成させて納品するまでは1円も融資できないと断られました。
これじゃダメだと言われてるらしい
国家政策としては、起業を推進して、新しい産業が生まれる土壌を作っていかないといけないのに、銀行からは新規事業の融資を受けられないというのが日本の現状です。
銀行の担当者曰く、行政から金融機関に対してもっと起業を支援するようにと指導を受けてるそうです。(伝聞なので詳しいことは知りません)
しかし、新事業の将来性を見極めることは、銀行が長年培ってきた審査の仕組みとは全く異なります。
銀行の融資は企業にとって欠かせない重要な仕組みですが、起業を支援できるようになるにはまだ時間がかかるでしょうから、銀行を利用できる範囲は限定的だと理解しておくのが良いと思っています。
次回は「投資家に頼らない理由」
次回のnoteでは、投資家からの出資に頼らない理由について書きました。
今後もこのnoteでは私がハードウェアスタートアップの起業で経験したことや、失敗しない起業のノウハウなどを書いていきたいと思います。
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また インスタコードにも興味を持っていただけると嬉しいです。