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家事とスクラム

はじめに

里帰り出産で10数年ぶりに実家で暮らしてみたら、母がまるでダメなPOそのものだったので少し分析してみました。

分業制からスクラムチームへ

もともと我が家はスクラムチーム制ではなく完全分業制だった。
父は外で働き、母は家事、子供は勉強、古き良き昭和のスタイル。
そうやって40数年運営されてきたわけだが、事の発端は母が転んで足を骨折し、家事に支障をきたしたところから始まった。

分業制は各人の専門性が高まり、効率も良くスピードも最高時速が出せるのだが、メンバーにトラブルが発生した場合、そこのロールだけ機能停止してしまうという弱点がある。小さな組織であればあるほど代わりの人を用意できないため致命的だ。

これまで「家事部門」の責任者だった母は、仕方なしにタスクの一部を、隣の「外で働く部門」の父に委託することになる。
しかし、隣の部門といえど父は60数年家事なんてやったことがなかったのだ。

皿洗いというチケット

委託したタスクの中のひとつ、皿洗いについて見てみよう。

・母の設けた受け入れ条件は「お皿洗って」のみ
・父は言われた通りに皿を洗う
・チケットはDoneになる

しかし母の中では満足いく出来ではなかったようで、
ガスコンロの上にあった鍋が洗われていない、洗った食器の並べ方が悪い、乾かしてあった食器の上に濡れた食器を重ねた、などなど独り言のように文句を言いながら、鍋を洗い食器を分類して片付けていた。

なんとこれが毎日繰り返されており、皿洗いだけでなく全てのタスクがこの調子だったのだ。

課題は大きく4つ

1)受け入れ条件が明確でない
2)母の頭の中にある受け入れ条件が多すぎる
3)適切なフィードバックをせず、母が自分でやり直している
4)母の目的意識が間違っている

解決策を考えてみる

1)受け入れ条件が明確でない

「皿を洗え」と言われて皿を洗った父は何も間違っていない。
「皿を洗え」の中に鍋や食器の片付けまで入っていると察するのはなかなかに難しい。
依頼の仕方が悪いのだ。この場合、正しい依頼の仕方は以下の通り。

・乾いた皿を片付けること
・シンク内の汚れた皿を洗うこと
・洗った皿を種類別に並べること
・鍋を洗うこと

2)母の頭の中にある受け入れ条件が多すぎる

上記で正しい受け入れ条件を書いたが、家事未経験である父が担当するチケットにしてはやや難易度が高すぎる。
まずは「タスクを期待値通り処理した」という成功体験をお互いに得た方が次に繋がりやすいので、チケットを分割し、受け入れ条件を二つくらいに絞っておいた方がよいだろう。
慣れてきたら一つずつ受け入れ条件を拡張して難易度を上げていくのが好ましい。

3)適切なフィードバックをせず、母が自分でやり直している

父に差し戻しせず、母が自分でやり直した方が早いし揉めなくて済むのかもしれない。
しかし何が悪かったか本人に伝えず自分で処理してしまっては、父は永遠にどこが間違っていたのか知る由もなく、翌日もまた同じクオリティで皿を洗うだろう。
こうして欲しいと適切にフィードバックし、父本人にやり直しさせることで、父はようやく気付き、正しい皿洗いを学習することができるのだ。
永遠に自分でやり直すより、父にフィードバックし、少しずつでも達成度を上げていったほうが、トータルコストは安くなるはずである。

4)母の目的意識が間違っている

そもそもなぜこのような事になっているかというと、
母の目的が「ひとまず目の前のタスクを処理すること」になっているので、父は学習、成長せず、母の不満も解消しない。

本来であれば目的は
・父が皿洗いの工程を母と同じようにこなせること
・あわよくばチケットを切らずとも自主的に皿を洗う習慣づけをすること
になるはずである。

目的が変われば自ずとやり方も変わってくる。
オーナーは単に目の前のタスクをチケット化するだけでなく、最終的にどういったチームになって欲しいのか、一歩深く踏み込んで考えタスクを設計することで、チームの更なる成長が望めるだろう。

おわりに

家族とはスクラムチームであり、家事はチームがこなすべきタスクだ。
私自身もこれから家族が増えるにあたり、チームメンバーの増員、タスクの増量が見込まれている。
POとして、改善と効率化を繰り返し、ストレスフリーなチーム運営を目指したいと思う。

ちなみに、皿洗いは食洗機である程度は自動化可能なので、初期コストはかかるが早期の自動化をおすすめします。

#コラム #エッセイ #スクラム #アジャイル #家族

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