日本医師会サイトの「化学物質過敏症」について問い合わせ


日本医師会がパンフレットで「化学物質過敏症」の情報提供

日本医師会が”健康に暮らすためのちょっとしたヒント”として、一般向けに医療情報を提供しているのが「健康ぷらざ」というパンフレットです。

この中で、化学物質過敏症について取り上げられたのが2回、直近では
2022年1月5日の『健康ぷらざNo.550』です。
記載を見ていくと
・空気中を漂う化学物質を吸入することで症状が出る
・芳香剤、農薬、ワックス…等々が原因物質になりうる
・「別の種類の化学物質でも症状が出るようになり、反応する化学物質が次々と増えていく…」という多種類化学物質過敏症についての説明
など、よく見る説明のとおりです。

もちろん、原因も病態も不明、とする厚労省の見解とは異なります。

執筆した医師のクリニックでは解毒療法

化学物質過敏症の治療として、”解毒療法”なるものを行っていることが記載されています。<解毒剤・肝庇護剤・ミネラルなどの点滴・酸素吸入などを行う>ということです。
厚労省が「化学物質過敏症の治療」として認めた治療はありませんので、これらは自由診療です。
何度か触れていますが、厚労省が科学的根拠のベースとして各種説明にも用いている資料では、治療として行われるこうした行為に注意喚起がされています。

「いわゆる解毒剤やビタミン剤の投与が有害化学物質の代謝や排泄を促進するために実施されてはいますが、科学的にその有効性が証明されていないことに注意が必要です」

『科学的根拠に基づく シックハウス症候群に関する 相談マニュアル』


「健康の森」の化学物質過敏症は削除?

日本医師会のサイトには、このパンフレット以外にも、一般に向けて医療情報を提供している「健康の森」というページがあります。
アーカイブで過去をたどっていくと、化学物質過敏症についても記載されていたことがありました。
2010年の掲載内容では、一般的な化学物質過敏症についての記載のほか、2009年10月から「化学物質過敏症」が病名として認められたことなどが書かれています。ところが、2014年のページを見ると「工事中」となっています。
その後復活することはなく、現在のバージョンの「健康の森」には化学物質過敏症の項目はありません。

化学物質過敏症の統一見解は

サイト中に「化学物質過敏症とは」という明確なページがないため、統一見解があるのかはわかりません。
ただし、さきほどの「健康ぷらざNo.550」は、千葉県浦安市長野県佐久市で化学物質過敏症の説明として掲載されるなど、公的な場所で使われてもいます。

ということで、こちらのパンフレットの内容が日本医師会の統一見解であるか、そして、解毒療法を行っている医師を執筆者としたことについて選定に問題はないのか、について聞いてみました。

恐れ入りますが、個別の記事内容や執筆者の選定理由についてのお問い合わせにはこれまでも回答しておりません。
頂いたご意見は今後の編集方針に生かしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

広報課からの回答

ということで、詳細は不明ですが、おそらく今後も掲載されていくのだろうと思います。
(ただし、個人レベルでの問い合わせではなく、組織メディアが問い合わせれば、違った回答だったのかもしれません)

日本医師会が出しているんだから間違いない…?

一般的には、日本医師会が広報として発表している内容なのだから間違いはないだろう、多くの医師の中から執筆者に選ばれている医師だから信頼できるだろう、と思ってしまいます。
先に書いたように、自治体が化学物質過敏症の説明用資料として利用したりもしています。

ただし、これまでに何度も書いてきたように、記述内容は国の見解とは異なりますし、異なる意見の研究者や医師もいます。(メディアで取り上げてきた医師が「化学物質過敏症の治療を行う医師」に偏っているので目立たなくはありますが)
メディアとしては、日本医師会も言っているんだから…としてこのパンフレットを根拠に「化学物質過敏症」を取り上げるのではなく、執筆した医師の行う(自由診療の)治療法にどのくらいの根拠があるのか、宣伝になっていないかも合わせて考えてから企画化してほしいと思います。