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「幸せになる勇気」は、愛する行為から始まる

2016年の発刊から足掛け3年、『幸せになる勇気』(岸見一郎・古賀史健 著)をようやく読了しました。本書は、哲人と青年の対話を通じてアドラー心理学の教えを解説するベストセラー『嫌われる勇気』の続編(3年後という設定)です。


幸せになる勇気

発刊当時、期待して読みだしたものの、表題の「幸せになる勇気」に関する記述がなかなか登場せず、読みかけのまま枕元の積読本となっていました。

この年末の掃除をきっかけに手にとり、あらためて続きを読みはじめたところ、ようやく該当箇所に到達! どうやらそれは「愛する」ことに大きく関係があるようです。

以下では、2箇所のやりとりを中心に、特に気になったフレーズを記録しておきます。

メサイヤ・コンプレックスでは幸せになれない

「幸せになる勇気」というフレーズは、第三部「競争原理から協力原理へ」内でネガティブな指摘のなかで登場します。教育の仕事に携わりつつも悩みを抱える青年に対して、哲人はこんな風に言い放つのです。

あなたは今日、ずっと教育の話をされているが、ほんとうの悩みはそこではない。あなたはまだ、幸せになれていない。「幸せになる勇気」を持ちえていない。そして、あなたが教育者の道を選んだのは、子どもたちを救いたかったからではない。子どもたちを救うことを通じて、自分が救われたかったのです。(p162)

メサイヤ・コンプレックスとは、要するに救世主としてふるまうこと。アドラー心理学でいうところの「優越コンプレックス」の一種と解説されていました。

他者を救うことによって、自己が救われようとする。自らを一種の救世主に仕立てることによって、自らの価値を実感しようとする(p162)

他人の救済にかこつけながら、自身の価値を実感することを願っている態度のうちは本当の幸せなどはつかめない、ということです。

その後、仕事、交友のタスクを通じて「信頼」について語りながら、徐々に核心となる「愛」についての話へと移っていきます。

「愛する」という能動的な行為

「幸せ」と「愛」に関係があるというのは、あたりまえのように感じます。
とはいえ、本書 第5部「愛する人生を選べ」では、「愛」とはロマンチックで抽象的なものではなく、ある種の覚悟をもった「行為」として語られていきます。

人生の主語が「わたしたち」に変わること、それが愛の大切な点なのだ、と。

愛とは「ふたりで成し遂げる課題」である(p.232)
利己的に「わたしの幸せ」を求めるのではなく、利他的に「あなたの幸せ」を願うのでもなく、不可分なる「わたしたちの幸せ」を築き上げること。それが愛なのです。(p.239)

それでも、青年は「愛すること自体は簡単」で「愛すべき人と出会うこと」が難しいのだと訴えます。

しかし、哲人は運命的な出会いを否定して、こんな風にたたみかけるように語ります。

愛とは「決断」である(p.264)
踊るのです。
わかりもしない将来のことなど考えず、存在するはずもない運命のことなど考えず、ただひたすら、目の前のパートナーと「いま」をダンスするのです。(p.267)

個人的に、「運命など考えず、ダンスするのです」の部分が一番ささりました。とかく人間はあれこれと考え過ぎで、目の前の相手と一緒に行動することがおろそかになっている、という指摘だろうと感じます。

そして、これは1対1の対人関係だけでなく、家族や職場、地域などより広い対象に対してもつながっていそうです。

愛する勇気、すなわちそれは「幸せになる勇気」です(p.271)
われわれは他者を愛することによってのみ自己中心性から解放されます。他者を愛することによってのみ、自立を成しえます。そして他者を愛することによってのみ、共同体感覚にたどりつくのです。(p272)

「幸せになる勇気」とは、目の前の「他者を愛する」行為から始まります。
そして、その行為を拡張していくことによってのみ、より広い対象への愛へとつながり、気がつくと幸せになっている。

そういう人生へ踏み出す決断こそが、「幸せになる勇気」なのだろうと感じました。

おわりに 

最後になりますが、本記事を書くに至ったいきさつを…。

2017年大晦日、2018年元日にドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の一挙再放送をしていました。妻といっしょにドラマを観ながら、登場人物のぎこちない「愛」に笑わされると同時に、色々と考えさせられました。

(参考)『逃げるは恥だが役に立つ』の“優しい世界”をもう一度! 愛に溢れる2018年に向けて

今回、『幸せになる勇気』を読み切れたのは、このドラマで語られる「愛」とのシンクロを感じたからです。再放送に感謝します!

追記:「愛」についての関連投稿

 2018年は、読んだ本で見つけた「言葉のごちそう」フレーズを、このnoteに記録していく予定です。ブログ本館 とあわせ、よろしくお願いします。


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Hiroshi SAKAI
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