全国フリーランス集団 Designship Studio の立ち上げは「デザイナーどこいるの?」への僕なりの答え
一般社団法人デザインシップ 代表理事の広野と申します。
自身もデザイナーであり、大企業、スタートアップ、フリーランス、デザイン会社、省庁と様々な立場でデザインの仕事に携わってきました。
その中ではデザイナーの採用や発注に関する支援もおこなっており、要は「デザイナーほしい企業」と「仕事ほしいデザイナー」をつなげているわけです。
そしてこのどちらの立場でもある自分は、3つの大きな問題と常に並走していることに気付きました。
このnoteは、その問題を認識してから全国フリーランス集団のデザインスタジオという異例なコミュニティをつくるまでの、僕たちの物語です。
序:認識した3つの問題
「デザイナーほしい企業」と「仕事ほしいデザイナー」の間には情報の非対称性が存在し、特に以下の3つの問題をいつも肌感で感じています。
1. 「デザイナー足りない、どこいるの?」問題
一昔前と違って、サービス開発においてエンジニアだけでなくデザイナーの需要も強く感じるようになってきました。
特に最近は、市況のせいかもしれませんが正社員としての採用よりもフリーランスへの発注に需要がうつっている気がしていて、その意味で「優秀なデザイナーに発注したいんだけど、どこの誰に頼めばいいか分からない。デザイナーというのはどこにいるのか?」とよく聞かれます。
その度に自分は「ツイッターですかねぇ〜^^;」という浅い答えしか返せないけれど、とはいえ優秀なフリーランスたちはどうやって仕事を得ているかというと人づての紹介がほとんどなので、活発にSNSをするメリットがないんですよね。よってデザイン界隈でないと見つけづらかったりする。
2. 著名なデザイナー・会社にばかり依頼集中する問題
文字面だけみると一見当たり前のように思えますが、あまりよくない傾向だと僕は考えます。
なぜならば、依頼側がデザインのプロではないことがほとんどですから、WebデザインのプロにUIデザインを頼んだり、モバイルアプリのデザインが得意な人にSaaSのデザインを頼んだり、UXデザイナーにロゴを頼んだりと、世の中ではわりと多くのミスマッチが起こっているのです。
スキルが多様化・複雑化しているデザインという仕事を、有名だからというだけで依頼するのはリスキーなのです。(そしてデザイナー採用コンサルの仕事はその相性をマッチングさせることですね)
3. ひとりじゃ無理だがチームなら受けられる問題
これはフリーランス側の意見としてよくきく問題です。
大きめな案件を依頼してもらったとき「自分はUIデザインはできるけどロゴは別の人にやってほしいな」「アシスタントみたいな人がひとりいれば受けられるんだけどな」のようなケースが少なくない。
実際僕もフリーランス時代、自分ひとりでは受けきれない依頼をもらって、「この案件一緒にやってくれそうな人、ツイッターのフォロワーにいないかなぁ…」と躍起になってプロフィールを漁ってDMナンパしたものです。
破:思いつきでSlackコミュニティをつくる
以上3つの問題を解決するために、今年のはじめに思いつきでこういうSlackコミュニティを作りました。
フリーランスデザイナーが集まってるSlackの中で、自分では受けきれない案件を紹介しあったり、企業が直接案件を投下してデザイナーを募集したりする場所。
要はフリーランスのお仕事掲示板です。
同じフリーランスに発注するんだったらクラウドソーシングでよくない?と思われるかもしれませんが、そういった場所では
ロゴ3案作ってください:2000円
アプリのUIお願いします:5000円
のように低単価の案件が比較的多く、そういった案件は趣味・副業としてのデザインの範疇をでません。(需要と共有なのでそれが悪いというわけではもちろんありません!)
僕は日本のデザイナーの年収をあげたいのです。
デザインが産業・事業に貢献できる価値を信じているから。
そのため、低単価の案件が出回らないように、当コミュニティでは以下の3つの機能をつけることにしました。
運営が依頼側に発注する金額感のアドバイスや、必要なデザイナー像の言語化をサポートする
運営がフリーランスのスキル感・レベル感・相性によって適切な依頼の振り分けをおこなう
コミュニティ参加者が不定期で公募案件を自由に投下できる
適正な価格感をコントロールしつつ、難しい案件にはシニアなデザイナーを、軽い案件にはジュニアなデザイナーをアサインすることによって、お互いが幸せになるように、業界として価格破壊が起きないように注意してお仕事のマッチングを図りました。
気まぐれでつくったコミュニティでしたが、依頼側の需要もフリーランス側の需要もあったようで、運営が特に何もしなくても数十件の依頼があれよあれよとマッチングしていきました。
自分の知らないところで勝手にマッチングして「Designship経由でデザイナーに依頼して、相性よかったのでそのまま入社してもらいました、ありがとうございます!」と企業側からお礼がきたこともあったくらいです。
また、デザインシップは行政デザイン支援にも力をいれているため、そのつながりで港区のデザイン研修など行政からの依頼もでてきました。
もっと正式にサービス化することで、より多くの企業・行政の助けになるのでは?と考え、コミュニティ運営をお願いしていた赤木さん と共にサービス化に踏み切ります。
急:より多くの企業・行政に届けるためサービス化
というわけで本日 2022/12/30 より当コミュニティはクローズドβ版ではなくなり、正式にサービスとして運用いたします!
全国のフリーランスで構成されているオープン型(自由参加型)のデザインスタジオということで、名前を「Designship Studio」としました。
企業・行政から依頼されたプロジェクトの「業務内容」「難易度」「予算」に応じて、Designshipが日本中のフリーランスデザイナー・PMの中から最適な人とつなげたり、最適なチームを組んで直接支援するサービスです。
以下、伝えたい特徴のうち5つだけ抜粋して紹介させてください。
1. PMも所属OK
実際のデザイン案件ではPM(Product Manager)がいないと回らないケースも多いため、デザイナーだけでなくPMもコミュニティに所属して仕事を請け負うことができます。
2. コミュニティとしても活用可
所属するフリーランス・副業の方々(以下「パートナー」といいます)同士では、勉強会を開いたり、記事をシェアしてコメントしあったり、地方勢でオフ会開いたりの、いわゆるコミュニティの面も活発化させていきたいと考えています。
3. フローは極限までシンプルに
依頼者からみてもパートナーからみてもフローは極限までシンプルにしました。プランは2つあって、まずDesignshipが人材像の言語化や人材確保のサポートをおこなう「サポートプラン」の流れがこちら。
Designshipと契約してメンバー探しやらパートナーとの契約やらをまるっとおまかせできる「おまかせプラン」の流れがこちら。
4. パートナーリストの共有
依頼者は希望すればパートナーの「ポートフォリオ」や「受付ステータス」などが掲載されたリストが共有されます。
指名する際に「スキル感」「経験業種」などは多くの依頼者にとって適切なマッチングに役立ちます。(地方自治体のプロジェクトだと「居住地」を気にする場合もあります)
逆にいうとパートナーは、このリストに掲載されるプロフィールを充実させることで「この人に頼みたい」と直接指名される可能性があがります。
5. 双方が望めばそのまま採用OK
Studioに所属するパートナーはほぼフリーランス(+副業)なので、相性がよければ社員としての採用交渉をするのは自由です。※執拗な勧誘はNG
いきなり正社員としてデザイナー採用をするよりも、お試しで何人かに業務委託で依頼してみて相性のよい人に採用アプローチをする方が、リスク面からみても採用効率の面からみても個人的にオススメできます。
その他、詳しくはサイトにもろもろ記載されておりますので、もしよろしければご覧ください。
最後に
こうしてサービスとして正式にリリースできたおかげで、今後「デザイナーってどこいるの?」と言われたら「Designship Studioにいます(キリッ)」とポジショントークができるようになりました。
実際、全国のフリーランスデザイナーの「スキル感」「経験業種」「今依頼うけられるのかどうか」などが一望できるリストというのは、多くの依頼者にとっての助けになると信じています。
契約が発生するまではお金はかからないので、ぜひ気軽に依頼フォームから送ってみてください。(Designship Studio 依頼フォーム)
また、所属するパートナーにとっても、今まで自分ひとりでは受けられなかったような案件を別の誰かと組んで挑んだり、「いつもアプリのUIデザインばかりだけど、VRのUIデザイン案件受けてみたいな」と公募案件を探してみたりできるので、仕事としていい刺激を加えることができると思います。
そして単純にデザイナー仲間が増えるのは嬉しいことですよね。
こんな時代だからこそ、横のつながりを大事にしたいものです。
パートナーは積極的に募集しているので、興味をもったらぜひ入ってみてください。(Designship Studio パートナー募集)
そんな相互利益なコミュニティを共に運営する アルバイト(大学生)も募集しています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
2023年もデザインシップは日本の産業競争力向上と豊かな社会づくりに貢献できるよう邁進して参ります。来年もどうぞよろしくおねがいします。
「デザインを信じる」すべての者に幸あらんことを。
運営:一般社団法人デザインシップ
Designship Studio 事業責任者 赤木 謙太
法人代表理事 広野 萌