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「ゲームで外貨を稼ぎたい!」国外売上80%のOdencatがやってきた海外戦略

どうも、Odencat代表のDaigoです(とはいっても一人会社ですが。。)「くまのレストラン」というゲームを作って以降、自社ゲーム開発でなんとか生き延びています。iOS/Androidで基本無料のストーリーゲームを作ることに特化しています。今回はOdencatの海外展開戦略について共有しようと思い、アプリ開発者向けの記事を書くことにしました。カジュアルゲームやガチャを回すタイプのゲームは作っておりませんので、それらについてはノウハウがそのまま適用できない可能性があります。そこはご了承を。

Odencatがどんなものを作っているか、ということに関しては割愛します。もっと色々知りたい方はサイト(https://odencat.com)をみたり、以前書いた「Odencat開発戦略2019」という記事を参照してください。
https://twitter.com/daigo/status/1352537568437432323

さて、それでは本題です。毎日の売上やらインストール数をぼーっと眺めるのが日課なのですがそのうちに気づいたことがあります。


「売上のほとんどが海外じゃん・・・」

なんと、日本の売上は全体の20%にしか過ぎませんでした。

最新の一ヶ月データだと
アメリカ 30%
日本 20%
ロシア 12%
韓国 10%
カナダ 3%
オーストラリア 2%
ウクライナ 2% 
イギリス 2%    
台湾 2%  
ブラジル 2%    
ベトナム 2%    
その他 13%
という感じです。当然先進国の売上比率は大きいですが、15%近くの売上が発展途上国(ブラジル、インドネシア、メキシコ、チリ、ベトナム、マレーシアなど)からも来ているのは注目に値します。ロシア語圏(ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシなど)の強さも注目です。ベトナムやブラジルもフィーチャーなどのタイミングでは瞬間風速で売上割合が1位になることもあり、時期により順位は大きく変わります。また、本来、最強なのは中国なのですが、実質アクセス不可能な市場になってきているため(ストアからアプリがすべて取り下げられました)ここには含まれていません。また、ヨーロッパ主要国の売上が少ないのは今後の課題です。

強さの秘密はローカライズ

Odencatゲームはテキスト中心のストーリーゲームということもありローカライズが特に重要になっています。自分にはカジュアルゲームなどでローカライズがどれだけ効くかはわかりませんが、文章量がだいぶ少ないので迷わずローカライズしてみてもよいのでは、と思います。

特に重要視しているのは日本語、英語、韓国語の3ヶ国語です。英語への翻訳が必須なのは言わずもがな、韓国語に関してはよい翻訳者さんと出会えたことが大きいです。殆どのゲームの翻訳を手掛けてくださっているキョウウンさんは翻訳するだけでなくツイートで宣伝までしてくださって凄く助かってます。お仕事募集中だそうですよ!

その他様々な言語にも翻訳は対応しています。英語翻訳されていれば大半をカバーできるのはそうなのですが、たとえば、ロシア語対応していないとロシア語圏にはリーチできないですし、ポルトガル語対応しないとブラジルにリーチするのも難しいです。実際、ローカライズ最適化をするまではロシアもブラジルも売上は0%に近かったです。

具体的にどうやって翻訳をするの?というのはそれだけで一本記事が書けてしまいますのでまたの機会に。

マイナー言語対応に意味はあるのか

なんやかんや気がついたらOdencatゲームはだいたい10ヶ国語くらいに対応してしまいました。日本語、英語、韓国語、ロシア語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語、フランス語、インドネシア語、トルコ語、ベトナム語… などです。

マイナーな言語(売上的な意味で)に翻訳する意味あるの?と思われるかもしれないんですが、意味はあります。理由を述べます。

1. たくさんの人に遊んでもらえる

そもそも大前提として、たくさんの人にゲームが遊んでもらえるのって最高なので、売上関係なくローカライズをしたいというモチベーションがあります。無料で遊べる形式にこだわってる理由だったりもします。たくさん遊んでもらえるとGooglePlayの総ダウンロード数が増えるという実利的な側面もあったりはします。

2. ほとんどのケースで投資が回収できる

マイナー言語の翻訳者は物価の安い地域に住んでいることが多いため、投資額がそもそもそんなに大きくはなりません。そのため、フランス語やドイツ語に翻訳するよりマイナー言語に翻訳するほうが費用対効果が大きくなると思われます。マイナー言語なりに対応すれば売上は出てくるので、そのうち投資の回収は可能かと思われます。なので経済合理性はあります。

3. 実況や配信される

どんなに楽しいゲームでも母国語に翻訳されていなければ実況や配信はしづらいものです。例えば、くまのレストランはロシア語翻訳したことで、ロシア配信者のtiktokで紹介され、ロシア語圏すべてのダウンロードが急激に伸びました。このタイミングで母数が一気に拡大し、売上が決して無視できないものとなりました。そして、それは現在も維持されています。

4. ストアフィーチャーのチャンスをモノにできる
つい先日、「ねずみバスターズ」が同時多発にマイナーな各国でAppStore「今日のゲーム」にフィーチャーされました。たとえば、以下はブラジルでフィーチャーされた画像です。ローカライズがフィーチャーの判断の理由になっているかは定かではありませんが、ローカライズされていることでコンバージョンが高く保てるというのは明白ではないかと思います。これが売上やインストール数に与える影響は無視できません。

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5. GooglePlayのレーティングの上昇

GooglePlayではくまのレストランはレーティングが4.9です。Odencatゲームでは4.6を下回っているタイトルはほぼありません。GooglePlayでは、レーティングは国別になっていないため、マイナー言語の地域で流行ると、ローカライズされていないがために低評価をされ、レーティングが下がるという悲しい事態におちいることがあります。逆にローカライズされているとそれ自体が価値になってレーティングが上昇します。(翻訳してくれてありがとう。というコメントがよくみられます)

(2022/8/2追記: Google Playにおいて国別レーティングが導入されました)

6. ファンベースへの拡大・ブランドの確立と未来への投資

将来のGDP予想に関してはいろいろな情報がありますが、例えばこの記事 では2030年には、世界のGDPランキングは、(1.中国 2.インド 3.アメリカ 4.インドネシア 5.トルコ 6.ブラジル 7.エジプト 8.ロシア 9.日本)の順になると予想されています。実際こうなるかはさておき、傾向としてはだいたいこんなもんだろうとおもいます。10年後、市場が成長してから参入するのではなく、いまのうちから地道にファンベースを各国で築くのがただしい長期投資のあり方のように思います。

かつての中国では海賊版が横行していたため、日本のコンテンツはほとんどお金になりませんでしたが、ファンベースを築いていたわけです。いまや中国は世界1,2位を争う経済大国となり、日本コンテンツのかつての「投資」が報われようとしている、という状態ではないでしょうか。

これから伸びる市場にアプリをだすのはワクワクして希望が持てます。今のうちに途上国でもブランドを確立しましょう!

価格もローカライズせよ

さて、最後になりますが、「途上国でアプリが売れない」「途上国にはアプリを買うカルチャーがない」そう決めつけていませんか?

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上は今日のGooglePlayからとってきた情報です(見やすくするため、そして一部情報隠すため画像は加工してあります)。馴染みのない通貨が散見されるかと思います。(MXN(メキシコ), UAH(ウクライナ), IDR(インドネシア), RUB(ロシア)。時間帯によりここに出てくる通貨はかなり異なります。今ではいろんな通貨名を覚えてしまいました(PHP, KZT, VND, PLN, HUF, BRLとかとか)

実はローカライズするだけだと広告売上は増えても課金売上は増えません。大抵の場合、アプリや課金アイテムの値段が「高すぎる」のです。ストアはデフォルトでは、価格が統一されています。つまり、日本で120円のアプリはブラジルでもだいたい120円で売られているということになります。しかし、よく考えてみてください、日本だと平均月収は20~30万円くらいですが、ブラジルの平均月収は5万円とかです。日本と同じ価格で買う気になるでしょうか?ですので、物価調整を入れるべきだろうという発想になります。ということで、ブラジルでは30円くらいで売ればいいのではないか、という考え方になります(試行錯誤の末、現在は40円で落ち着いています)。単価は落ちますが売れないよりは遥かにマシです。適正な価格であれば、発展途上国でも課金をするプレイヤーはいるし、適正な価格をつけるということは、きちんとお客さんとして扱っているよ、というメッセージにもなると思います。

さて、AppStoreではどうしようもないですが、実はGooglePlayではアプリの価格を手動で調整することができます。自動設定だと価格が統一されてしまうので、わたしはすべての国に対して価格を手動で入力しました(Googleはここを機械学習とかで自動化するべきだと思う...、せめてCSVインポート対応してほしい…)

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泥臭い努力の結果、発展途上国でもアプリ内課金してもらえるようになりましたとさ。めでたしめでたし。

アプリ開発者は外貨を稼ぐことのできる恵まれた職業です。日本の経済成長が鈍化する中、外貨を稼いでいる日本のアプリ開発者は相対的にリッチになるともいえます。日本だけでなく世界で遊ばれるゲームやアプリを作りつづければ未来は明るいのではないでしょうか。そうすることが日本のためにもいいことであるはずです。

Odencat秘伝のタレ

もうすこし具体的な話。価格の決め方ですが、基本的には各国の物価やGDP、月収などを参考にしながら良さそうな価格を決めていくという感じです。ファンが各国に居るため、価格が妥当か確認したりもします。国ごとに価格の見た目(4.49など)も重要だとおもうので、このあたりも工夫するといいでしょう。

ちなみに、当初はビッグマック指数をみればいいかと思ってたのですが、途上国だとマックって富裕層の食べ物なのか、あまり参考にならない印象でした (ブラジルではビッグマックは400円超え...)。自分なりに参考になる指標を見つける必要があると感じました。

例としてOdencatでは以下のように国ごとに値段を調整しています。それなりに時間がかかって面倒なのですが、作成する過程で各国の給料や物価に関する知見も深まったりと自分は割と楽しめました。すべての国を網羅するのに2, 3日くらいあれば大丈夫だと思います。

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以下にOdencatが実際に使用している価格データ(2021/4月時点)のスナップショットの一部を貼っておきます。本記事で書いた上位10位の国と適当に選んだ10ヶ国を含む20カ国についての設定と、それらの価格を実際にGooglePlayに適用する方法を載せています。

すでに英語対応しているアプリをお持ちの方はフィリピン(PHP)の価格設定をいじってみるのがおすすめです。フィリピンでアプリが売れまくるかも?

それでは今回はこのへんで。

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