ホテルの宿泊費についての不正が監査結果で否定されたこと
第1 本noteの概要について
前回のnote記事では、弁護団が2023年1月4日に公開していた弁護団声明を紹介しました。
上記の弁護団声明の中でも、監査結果(かんさけっか)の各論点について触れていたところですが、今回以降の記事では、改めて一つひとつの論点について、
(1)監査請求人(かんさせいきゅうにん)が主張していた内容
(2)監査結果
(3)弁護団がこれまで説明していた内容
をそれぞれ整理して、お伝えしていきます。
「(1)監査請求人の主張内容」については、監査請求人が監査請求のなかで主張していた内容の他に、監査請求の外で、すなわちTwitterやnote等で公開していた内容も交えて説明します。
今回のnoteの内容は、タイトルにも書きましたとおり、
・ホテル宿泊費についての不正が監査結果で否定されたこと
についてお伝えします。
第2 監査請求人が主張していた内容
1 監査請求における主張内容
監査結果(かんさけっか)は全部で25ページありますが、その1ページから6ページに、監査請求人による請求の内容が記載されています。
その内容からすると、監査請求人は、「ホテル宿泊費の不正会計」とする主張として、以下のように主張していたことになります。
2 監査請求人がTwitterに公開していた内容
上記の点について、監査請求人は、2022年10月28日、Twitterにて以下の発信をしていました。
前述のとおり、監査請求人は、監査請求の中で「68万円の水増し請求」という言葉を使っていました。
ですが、上記のTwitter発信においては、「詐欺罪だよね?」と記載されていることからも明らかなとおり、監査請求人は、”実際には232泊しかホテル宿泊費用は発生していないにもかかわらず、300泊のホテル宿泊が発生したとして東京都に経費申請をしている、これは詐欺罪である”とまで述べていたのです。
そして、そのような内容を、「やってんねええええええええええ!!!!!!!!」と、あたかももはや仁藤さんに詐欺罪成立が確定しているかのようにセンセーショナルに書き立てていました。
「いいね」の数やリツイート数からも分かるとおり、このような内容が短期間に次々と拡散されてしまいました。
3 監査請求人がnoteやYouTubeに公表した記事
(1)note
しかも、監査請求人は、例えば以下のnote記事のなかで、「ホテル宿泊費」に関する主張を並べています。
ここでも、監査請求人は、「もしもし?ポリスメン?もしもし?納めた税金が盗まれてるんです、早く来てポリスメン!?」、「やっぱ共産党員シェルターでしょこれ」、「ポリスメン!?ポリーーース!」と、仁藤氏が犯罪行為を犯したかのような記載を何度も繰り返していました。
(2)YouTube〔2023年1月16日追記〕
監査請求人は、上記のnoteの内容と同じ内容のYouTubeを公表しており、その動画も現在まで公表されたままになっています。
その動画は、2023年1月16日現在で19万2471回視聴されており、8503個の高評価がつけられています(当note記事では、この動画に対するリンクは貼りません。)。
第3 監査結果―不正の否定
しかしながら、監査結果においては、
「宿泊に要した1泊あたりの金額や宿泊数は本件事業計画書の記載とは異なるものの、実際に宿泊した費用を本件経費として計上していることは確認できるため、本件活動報告書に基づいて宿泊数を過大に請求しているとする請求人の主張は妥当でない」
と認定されています(監査結果19ページ)。
Colaboは、このたびの本監査請求にあたって、都の福祉保健局や監査事務局による調査に対応し、領収書等についても個別の確認を受けました。
そして、事実に沿って説明を行ってきました。
今回の監査結果は、そのような調査を踏まえて監査委員が出した結論であり、それによって、ホテル宿泊費の不正会計、水増し請求、詐欺罪などと述べていた監査請求人の上記主張は否定されたことになります。
第4 Colaboが行ってきた説明
1 宿泊支援費に「1泊1万円」という上限は無い
そもそもの前提として、東京都若年被害女性等支援事業(とうきょうとじゃくねんひがいじょせいとうしえんじぎょう。以下「本件事業」といいます。)の宿泊支援費に、「1泊1万円」という上限は無いのです。
Colaboの作成している事業計画書には「1泊1万円×300泊分」という記載があります。
ですが、事業計画書に書いている「1泊1万円」という金額は、予算作成にあたって設定している目安でしかありません。
実際には、東京都内の宿泊費用は高額になりがちであるため、1泊1万円を超えることは珍しいことではありません。
また、宿泊支援が必要な女性の状況によっては、その女性に付き添うスタッフの宿泊なども発生するので、本件事業全体で「宿泊支援費」として発生した金額は予算上限の300万円を超えたのです。
以上のことは、弁護団が2022年11月29日に公表した「Colabo及び仁藤夢乃さんに対する誹謗中傷等について 」という文書の「Q6(19ページ)」においても説明していました。
ですので、監査結果でも認められているとおり、Colaboは、実際に宿泊した費用を経費として計上した結果、予算上限である300万円を超えたにすぎません。
2 宿泊支援費が発生する意味
なお、念のために説明をしますと、本件事業の事業委託内容としては、様々な困難を抱えた若年女性について、アウトリーチから居場所の確保、自立支援等を行い、公的機関と連携しながら、公的機関や施設への「つなぎ」を含めた事業を行うものとされています。
具体的には、例えば、
・LINEやメール等での相談
・面談による相談
・夜間見回り(深夜の繁華街などで家に帰れずにいる若年被害女性等に対する声掛けや相談支援)
・安心・安全な居場所の提供
・食事の提供などの日常生活上の支援
・福祉事務所や医療機関、ハローワーク等への同行支援
など、様々なことを行っています。
宿泊支援費という費用は、上記のような事業に関連して発生する宿泊支援費用です。
3 監査請求人の提示資料は「緊急自殺予防対策」のもの
ところで、監査請求人は、下記投稿の画像が「1泊1万円」の証拠であるかのように述べていました。
ですが、上記の書類は、令和2年度の12月から令和3年3月までにかけて、「緊急自殺予防対策」として急遽受けた事業に関する書類になります(新型コロナ流行と年末年始期間の行政窓口閉鎖が重なったために、急遽実施された事業です。)。
こちらの「緊急自殺対策」の費用は、令和2年度の年度途中で、当初の委託経費とは別途に緊急の対策として追加されたものです。
これについては、東京都との取り決めにおいて、1泊あたり1万円ということが明記されていました。
しかしながら、ホテル借上げ費用に上限1万円という金額が設定されたのは、この令和2年度の「緊急自殺予防対策」の時のみでした。
それ以外の場面で、本件事業のホテル宿泊費が「1泊1万円」と定められたことはありません。
通常の若年被害女性等支援事業と、令和2年度のみ年度途中で追加された「緊急自殺予防対策」とでは性質が異なります。
以上のことは、弁護団が2022年12月1日付けで出していた書面「補足説明 」の項目4(2ページ以下)でも、説明をしていたことになります。
このことが、監査委員による監査結果でも明らかになったということです。
4 補足―「都外遠隔地での宿泊代」等の指摘について
なお、監査結果のなかには、「一回当たりの支出が比較的高額な……ホテルの宿泊代」が計上されていること、「都外遠隔地での宿泊代が計上されていること」といった点が、本件契約の仕様書に記載される文言そのものからは委託事業の経費として計上することに妥当性が疑われるものが見受けられるとの記載があります。
しかしながら、念のために記載しますが、「妥当性が疑われる」というお話は、「不正会計」「詐欺」といったお話とは別次元のお話です。
そして、以下は、前回更新した弁護団声明の繰り返しになりますが、「都外遠隔地の宿泊代」という指摘があった点については、都外遠隔地の女性からの相談に対応するため、そこに出向いてその女性を自宅外に宿泊させる支援が必要と判断したためのものです。
宿泊支援を行っている間に、状況の聞き取りや今後の生活、支援について検討を行いました。
若年女性支援事業では、例えば都内でアウトリーチ等で出会った女性が後に都外で暮らすようになったような事例で、その後も関係性(支援)が続き、地方に出向いて相談や宿泊支援を行うこともあります。
このような事例では、都の委託事業の経費から支出することは差し支えないとColaboとしては判断しました。
詳細な経緯を報告していれば、都の委託事業の経費として特段不当性はないと監査委員もご判断になった可能性はあると思料しています。
今後都からどの程度の報告をすべきかの指針等示されれば、受託者としては今後担当部署と協議の上、改善方法を検討する所存です。
また、「一回当たりの支出が比較的高額なホテル宿泊代」という点について、都内では宿泊料金が高額になりがちであることは前述のとおりです。
第5 結論
以上のとおり、Colaboが以前から説明してきましたとおり、「宿泊費の不正会計」などということはありません。
以上