全国から1万人以上が日比谷公園に集結し「日比谷一揆」宣言に歓喜〜反ワクチンの一番長い日〜(前編)
5月31日、昼。午前中で止んだ雨の匂いと午後からの厳しい日差しに5月ながら夏を感じ、子どもの頃思い出の映画を見に行った、夏休みのあの日を思い出しながら筆者は日比谷公園にいた。
日比谷線を降り、日比谷門から入るとすぐに大勢の人が行列を作っているのが確認できた。日比谷野音へと向かうにつれて人の数は多くなり、やがて前へ進むのも難しい状況になる。どうやら野音に入りきれない人々が周囲にたむろするしているようだ。そんな人々に混じって耳をすませば、野音から「ニッポン!ニッポン!」の大合唱が聞こえてくる…。平日の午後にもかかわらず、日比谷公園にはプラカードや日章旗を手にした人々が大勢集まっていた。5月の終わり、首都の中心である皇居に隣接したこの公園で、一体何が行われていたのだろうか。
WHOから命をまもる国民運動 大決起集会
この日行われていたのは、4月に記事を書いたパンデミック条約反対デモに続いて行われた決起集会である。
※主催者の名前が変わっているが、登壇者の多くが共通しており、講演でも「2回目」と何度も言われていたため、同じ一連の流れに乗った運動と考えて良いだろう。
新型コロナパンデミックをきっかけに検討が進められているパンデミック条約が、5月27日~6月1日に行われていたWHO総会で採択される見込みとなっていたために選ばれた日程だったが、大方の予想に反して協議がまとまらず、交渉期間が延長されたことも反対派の人々を勢い付けていたようだ。
この日行われていた決起集会は12:00に開場し、20:00まで講演集会とデモが続くという長丁場であった。集まった人数も含めて反ワクチン周辺の運動としては最大・最長規模のものであり、筆者は到着早々から神真都Q初回デモや前回のデモを超える規模と熱量を感じていた。
当日のスケジュールは12:00開場、13:00-15:00で決起集会・講演会@日比谷野音、15:00から日比谷公園〜鍛冶橋交差点解散のデモ開始、18:00-20:00の夜の部集会・講演会で閉会というもので、筆者は正午過ぎに到着したものの既に野音は満席の旨通達が出されていた。このためデモ開始まで周囲で様子を伺っていたのである。
登壇者の構成
この集会の講演には、下記の通り多くの著名人が登壇した。右派と目される人物が多いが、その一方で注目すべきは前回参加を見送っていた立憲民主党の大物議員、原口一博氏が登壇していたことだ。原口氏はロシアの国営メディア「スプートニク」のインタビューに応じたり、ウクライナに関する発言で物議を醸しているが、今のところ党からの処分は口頭注意のみである。また、立民からは他にも山田勝彦衆院議員が出席(菅直人内閣で農水相を務めた、父親の山田正彦氏も参加)しており、左右を問わず様々な著名人が集まっていた。
著名人という意味では、憲法学者で様々なテレビ番組にコメンテーターとして出演していた慶応義塾大学名誉教授、小林節氏が壇上で「凄く勉強になった、陰謀論者と言われても良い」と言い放っており、「あの小林先生が」とXをざわつかせていた。氏に一体何があったのだろうか…。
講演会に登壇した人物の一覧-第一部
井上正康:大阪市立大学名誉教授。反マスク・反ワクチン言説を発信する参政党のアドバイザー。今回の集会を主催した「WHOから命をまもる国民運動」共同代表。
林千勝:近現代史研究家。保守系メディアに登場することが多く、反ワクチン活動で知られるRFKジュニアの翻訳書で解説を務めるなど、保守と反ワクチンの両方に親和性が高く、参政党との関係も深い。「2025年、疾病Xによるプランデミックが起こる」と主張している。「WHOから命をまもる国民運動」共同代表。
河添恵子:『習近平が隠蔽したコロナの正体―それは生物兵器だった!?―』『トランプが中国の夢を終わらせる―プーチンとの最強タッグが創生する新世界秩序―』といった書籍を発表しているノンフィクション作家。講演会やタウンミーティングに登壇しており参政党との関係も深い。「WHOから命をまもる国民運動」共同代表。
柳澤厚生:WCH日本支部代表理事。鎌倉元氣クリニック名誉院長
※WCH(World Council For Health)は代替医療・反ワクチン・イベルメクチン推進者などによって設立された団体で、WHO脱退主義者からはWHOに対抗する組織として認知されている。既に日本支部が存在しており、議員連盟も設立されている。原口一博:立憲民主党所属の衆院議員(佐賀1区)。超党派WCH議連(仮称)代表。
池田としえ:日野市議会議員。HPVワクチンの頃からの反ワクチン活動で知られる。
水島総:日本文化チャンネル桜代表取締役社長、新党くにもり代表
※下記の馬渕氏のみ、登壇予定となっていたものの事情により欠席。
馬渕睦夫:元駐ウクライナ大使。『ディープステート 世界を操るのは誰か』『馬渕睦夫が読み解く 2024年世界の真実』といった著作があり、この界隈では強い影響力を持つ。
講演会に登壇した人物の一覧-第二部
山岡鉄秀:著述家。豪州ストラスフィールド市での慰安婦像公有地設置計画反対運動で知られ、保守派の言論活動を展開。河添氏と同じく参政党の講演会によく登壇しており、関係が深い。
松田学:参政党元代表。
山田正彦:自由党・民主党・日本未来の党などに所属していた元衆院議員。農水副大臣、農水大臣などを歴任した。同じ集会に参加していた山田勝彦氏(立憲民主党所属の衆院議員(長崎3区)で、オーガニック給食を推進している)は息子。
まきやま大和:長崎県議会議員。「山田正彦の最後の弟子」とのこと。
小林節:憲法学者。著述活動や政治活動で広くその名を知られる。
佐藤和夫:前回デモの主催者。元自衛官で、「英霊の名誉を守り顕彰する会」会長。
その他、参加を確認した著名人
内海聡:医師。2024年東京都知事選の候補者で、代替医療関連では極めて高い知名度を誇る。
須藤元気:元参議院議員
田母神俊雄:元航空幕僚長
山口敬之:ジャーナリスト。元TBSテレビ報道局記者
また、前述したスプートニクも取材に訪れていた。
怪しげな用語が飛び交い、「日比谷一揆!」で盛り上がる
講演の様子は中継動画で確認できるが、それは「光の戦士」「ディープステート」「悪魔」「支配層」「工作員」「世界政府」「新たな日本の独立記念日」といった怪しげな用語が飛び交うものであった。
しかし、これらはいずれもこの界隈にいると盛り上がるキーワードであり、聴衆が沸いているのが見て取れる。この記事のタイトルにも採用した「日比谷一揆」は松田学氏が宣言したもので、冒頭に記載した「ニッポン!ニッポン!」の大合唱は林千勝氏が「ニッポンチャチャチャ」を呼びかけたために起こったものであった。
参加を確認した団体
集会・デモには様々な団体が参加し、Tシャツや幟でその存在を主張していた。ここからは確認できた範囲で(大規模集会で確認しきれていない部分があるかもしれないため、判明次第追記していく)参加団体を記載していきたい。
一般社団法人武士道(幸福の科学職員の与国氏が設立した一般社団法人で、反ワクチンデモによく参加している)
ごぼうの党
参政党
新党くにもり
新中国連邦(中国から米国に亡命した郭文貴氏と、2016年トランプ大統領選での最高責任者も務めたスティーブン・バノン氏によって設立された団体で、反中国共産党運動を展開している)
志氣友学舎(静岡県を拠点に活動する保守派団体。顧問に武田邦彦氏や小名木善行氏が名を連ねる)
チャンネル桜
謎の大量死梯団(日本人の大量死が起こっており、それはコロナのせいでない、と主張するグループ(ワクチンのせいと仄めかしている)。発起人は元国会議員秘書の藤江成光氏)
日防隊・日本保守党(日防隊は元自衛官の石濱哲信氏が設立した保守系団体で、反ワクチン運動によく参加している。その政治団体が『日本保守党』で、同名の百田氏の政党よりも先に設立されている)
日本列島100万人プロジェクト(今年3月の熊本県知事選にも出馬した毛利秀徳氏が代表の運動体)
法輪功(中国発祥の気功団体。機関紙である『大紀元時報』を盛んに配布していた)
ラエリアン・ムーブメント(90年代のクローン人間作成騒動を記憶されている人も多いだろう宗教団体。反ワクチン・反WHOデモによく参加している)
絡合会(会長を赤尾由美氏、副会長を武田邦彦氏が務める保守派団体)
いわゆる「合体標語」(被爆国首相よ 八月六日九日を 人類総ザンゲの日として 休日に制定せよ)を掲げるグループ(詳細不明)
舞台は路上へ
休憩しつつも公園内の様子を伺ううちにデモの開始時間が近付き、場所を確認しておこうと霞門へと向かった筆者の耳に、反対側の歩道から「参政党こそロシアの手先」「ロシアの侵略戦争を陰謀論で正当化すべきではない」「あのような陰謀論を言われていては、反ワクチン運動自体が色眼鏡で見られてしまいマイナスである」旨主張する拡声器の音が響いてきた。その方向にいたのは、前回記事でも言及した「陰謀論に、『陰謀論の陰謀論』で対抗する」新生民権党であった。この日もカウンター街宣に駆け付けていたのであった。
筆者よりも早く到着していたウォッチャーもその姿を確認しており、デモが終わる頃までは街宣をしていたと記憶しているので、5~6時間は実質一人で街宣していたのではないだろうか。主張はともかく(「陰謀論の陰謀論」となった結果、一周して同意できそうな主張も混じっているのがまた危険だ)、その熱量には凄まじいものを感じた。
そのような感想に浸っているうち、いよいよデモが開始されたのであった。
人数について
後編に行く前に、人数について言及しておきたい。20万人などと投稿している参加者もいたが、主催が夕刊フジに伝えた人数は1万2,000人である。
これはかなり控えめな数字で、この手の運動には珍しく数字を水増ししていないように思える。今回もデモ隊の人数は1隊あたり4~500人で、あまりに多く数え切れなかったものの、それが20隊は存在していた。さらに、人数が多すぎたために路上に出られず、日比谷野音に留まった人々や周囲にたむろしていた人々もいたため、1万2,000人を超えていてもおかしくはない。
前回デモでは支持者が1万人以上と盛り上がる一方でウォッチャー勢は5,000人程度と見積もっていたが、今度こそ1万人規模の運動となったのは間違いないだろう。
また、黒猫ドラネコさんも当日の様子を配信しているため、是非ご覧ください。
後編へ続く
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