【募集】リチャード・パワーズ短編集の原稿に興味がある編集者さんはご連絡ください
近況(2020年6月)/短編小説・書評の掲載
まずは6月のお仕事まとめから。
6月25日発売の『S-Fマガジン2020年8月号』(早川書房)の特集「日本SF第七世代へ」に新作短編「花ざかりの方程式」を掲載してもらいました。
長さは原稿用紙換算で75枚程度で、とある方程式に花が咲くという荒唐無稽なお話です。大学院生のとき、ぼくは熱力学や流体力学を勉強していたのですが、そのときからぼんやり持っていた着想を30代になってようやく小説にできた!という感慨がありました。ぜひ読んでみてください。
6月27日、いま話題のカツセマサヒコさんのデビュー小説『明け方の若者たち』の書評(のフリをした実質的な「カツセマサヒコ論」)を幻冬舎plusに公開されました。
著者のカツセさん自身からご指名いただき(曰く「徹底的にやってください」とのこと)、それにこたえようとかなりの細かく書きました。文字数の制限が実質的にないWEBメディアの良いところはこうしたものでも掲載してくれるところにあると思います。
また、カツセさんとぼくは共に「WEBライター出身の作家」という特徴があり、WEBライティングと文芸の仕事の違いについて、そのバックグラウンドから考える機会になったのが個人的にもよかったです。ぼくもそうでしたが、「本当は小説を書きたいけれど生活していくためにWEBライターをやっている」という方は意外と少ないのでは?と思うので、そうした方にこそカツセさんの小説とこの書評をを読んでもらいたいです。
なお、この書評をベースとしたオンライントークイベント「小説書きたい系WEBライター全員まとめて小一時間ばかり説教してやりたいとおもっていた」(←じぶんで決めておいてなんですが、何でしょうね、このタイトル笑)をカツセマサヒコさんと行う予定です。日時、予約はコチラですので、ぜひ。
リチャード・パワーズの短編集を作ろう!という計画について
6月はS-Fマガジンのゲラ(初稿から意外と紆余曲折していました)とカツセさんの書評にかなり時間を割いたのですが、それが落ち着いてからは久々にリチャード・パワーズの短編を翻訳しました。「夜は暗し(原題:Dark Was the Night)」という60枚のお話で、タイトルはブラインド・ウィリー・ジョンソンの同名の楽曲に由来します。
なので、タイトルは「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」など訳さない方がいいかなともおもったのですが、ご覧の通り字面がえらくダサいので「夜は暗し」と訳を当てることにしました。一人の男が認知症の治験を通してアメリカの宇宙開発史に寄り添った自らの人生を振り返る物語です。
リチャード・パワーズの短編翻訳については前々から取り組んでいます。というのも、パワーズはアメリカ本国でも短編集を出版しておらず、また日本に紹介されている短編も「遺伝子と魔神」(木原善彦訳)、「七番目の出来事」(柴田元幸訳)の2編だけ。パワーズは紛れもなく長編でその想像力を最大に発揮できる作家なのは間違いないのですが、パワーズという作家のエッセンスは短編にもよく現れています。例えば「メジャーズ滝へ」にしても、今回訳した「夜は暗し」にしても、個人史とアメリカ史が交錯する構造をとっていて、パワーズ初心者にこそ読んでもらいたい内容になっています。
そういう思いもあり、一年ほど前にこんなツイートを行いました。
ありがたいことに、多くの方からのリアクションをもらい、ぼくとしてもこれがモチベーションとなっています。ちなみに現在は以下の3作品のとりあえずの翻訳が手元にあります。
1:メジャーズ滝へ(原稿用紙約30枚)
2:ロードスター(原稿用紙約15枚)
3:夜は暗し(原稿用紙約60枚)
これからまだ3作品くらい訳し、また(版権もありますが)前述の既訳を合わせれば1冊の本にできるかなとおもっています。が、翻訳を持ち込もうにもこうしたことはやったことがないので、どうすればいいのかよくわからないでいます。
そこでなのですが、「パワーズの短編集を出したい!」というぼくの野望に興味がある編集者さんがいましたら、ぼくが訳した上記の「とりあえずのもの」をお送りさせていただきたいと思います。
なにとぞよろしくお願いいたします。
大滝瓶太 拝