タンザナイトと後味の悪い話
ずーっと、noteに書くかどうか悩んでたことがあった。
そのかけらみたいな話を今日Twitterに書いてみたら結構反響があった。
今日はいよいよ今まで言葉に出してこなかったあるエピソードについて記事にしてみようと思って。
ちょっと今日は気合を入れて書いてみる。
ただ内容が結構センシティブなので、過度な拡散や悪意のあるスクショを防ぐために途中から課金方式にするので、ご不便かけて申し訳ないのですがご容赦の程よろしくお願いします。
その代わり内容についてはいつも通りどころかかなり気合を入れて読み応えのあるものを書かせていただきます。
それでは始めさせていただくわよ???
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社会人になって3年目。
死ぬ思いと勇気を出して、まあまあ高い時計を買った。
カルティエの時計でその当時のお値段80万円。
まだ20代半ばの私には涙が出るほどお高い値段だったけど、とにかく
「これからの人生を頑張るためにはこれくらい必要なんだ!」
とよくわからんプライドを乗せてその時計を買った話はここに書いたので興味がある人がいればぜひ読んでくれたら嬉しい。
(こっちは全部無料だから安心して読んでくれ!!!!)
私が死に物狂いで高い時計を買った話を、
母や父にした時に、意外にも食いついたのは母ではなく父親だった。
「そうかそうか。蒼子ちゃんもようやっと宝石に興味ば持つ年頃になったとね!
だったらパパがよか宝石ば買っちゃる。
蒼子ちゃんみたいに頑張って外で働く女の人には綺麗なネックレスが必要ばい。
蒼子ちゃんが興味持ったら買ってあげたいと思っとったと。パパそのために小遣いばためとったとよ」
と、言ってくれた。
父親は九州の田舎からほぼ出たことがない一生なので、こう言う繊細なジュエリーの話とかからは一切遠い人だと思っていたのだが、
そのガサツな性格や野暮な言動には似合わず繊細なガラス細工やジュエリーの類を見るのは大好きらしく。
若い頃からベネチアングラスや、綺麗な宝石は父親にとって母や自分の母へのここぞという時の贈り物として選んでいる勝負の品物である。
娘が一生懸命働いたお金で高い時計を買ったと聞いた父は、私の為にその時計に見合うようなネックレスを買ってあげたいと思ってくれたらしく。
その2週間後には休みを取って新幹線に乗って九州から私の住む大阪まで出てきてくれて一緒に大阪の街に繰り出した。
父は、慣れないインターネットでいろんなことを調べてきたらしく。
やはり最初にいいネックレスを買うには一粒ダイヤのネックレスの方がいい!
と言う情報だけを持って九州からやってきた。
買ってもらえるなら、カルティエやTiffanyの一粒ダイヤのネックレスを欲しがる私に連れられてそれぞれの店に入って行ったが父は少し不服そうだった。
「ブランド代が高すぎばい。
あがん小さかダイヤモンドでぎゃん高い値段ばとるとだったら同じ値段出してからもっと大きなダイヤがついたネックレスば買ってやりたか」
と言って店を出た。
父は、その方言の訛りから大阪の街に連れてくると一見田舎者に見えるけれど。
実際は30年以上九州の人たちの健康のために尽力してきた医師であり、それなりのものを食べてそれなりのものを目にしてそれなりのお金を稼いで生活してきた人間であり。
カルティエやTiffanyの店員さん達は、方言丸出しの父親のどこから何を感じ取ったのかはわからないけれど、しっかりと私と父のどちらもを見つめながら
「お嬢様ぐらいの年齢でこれからも長くお父様の思いをのせて身につけられるのでしたら、こう言ったものはいかがでしょうか?」
と言って丁寧に接客をしてくれた。
それでも父が他の店も見に行きたい、と言うと快く名刺を渡してくれて。
「大切なお買い物ですからいろんなところを見てきてゆっくり決めてくださいね」
と送り出してくれた。
その日は父親とたくさんの宝飾店を見て回った。
50万円のダイヤでも、100万円のダイヤでも、気に入ればすぐ買おうとする父親。
逆に5万円で大粒のダイヤモンドでも、父の目から見てあんまりよくないと思えば絶対に嫌だと言った。
若い頃からいろんな国に出掛けては宝石を見ていた父親は、結構目利きで。
私はその日まで父がこんなに宝石に詳しくて宝石が好きだなんて知らなかったのだ。
その日、気合いを入れてありったけのお金を持ってきた、と言う父親に。
「お父さん。私フツーのサラリーマンだからね。
そんな大きなダイヤつけて会社行けないよ。営業職だもん。
だからさ、ほんとに小さくていいからチェーンが綺麗でダイヤが綺麗なネックレスが欲しいなあ」
と言うと、父親は「もっと大きいもんばがつーんと買ってあげたくてきたとだけどねえ…」と言いながらも私の要望にあったものを探し始めた。
そして、どこそこ見て回った結果。
値段に見合う大きさのダイヤモンドで、綺麗なチェーンのついた素敵なネックレスを見つけた。
それが、星のダイヤモンドのカットで有名な国内ブランドのものだった。
お店の人が勧めてくるどのネックレスよりも大きくてきらきらひかるダイヤモンドのついたネックレスを即決で決めた父親。
ニコニコ笑いながら
「パパはね遠くに住んでるけん普段の生活は助けてやらんとよ。だけん、たまにはこがんふうにドカンと蒼子ちゃんにしてあげたいことがあるとよ。
よかもんば身につけて頑張って働いて、一生懸命生きていくんばい?そしたらいいことたくさんあるけんね」
と、父親は嬉しそうにそう言った。
それと、父親はネックレスだけでなく、私がなんとなくショーウィンドウの中を気にして眺めていたブレスレットも一緒に買ってくれて。
「そのブレスレットなら時計とも合うよ」
と言って笑っていた。
父親はいつもこんなことをしてくれるわけではない。
こんな高いものを買ってくれたのは人生で初めてだったし、普段は厳しくて、贅沢を嫌う人なのだ。
買い物が嫌いで、ファッションに無頓着な父親が遠い大阪まで来てくれて、一日中デパートを梯子してああでもないこうでもないと宝石を選び、私に買ってくれて幸せそうに笑い合った。
それが私にとっては涙が出るくらいに幸せなことだったのだ。
それで終わりにすればよかったんだけど、
それでこの記事が終わればこの記事は
私の金持ち素敵パパ自慢日記で終わってしまうのでとーぜんこの話にはどうしようもない続きがあるのである。
この日、額は書かないけどかなりの金額の決済を気前よく決めた父親は会話の中で
「今日は大阪で頑張ってる娘にいいものを買いたくてここまで来たんだ。普段は九州で医師をやってる」
と話してしまった。
かなりの額を一括で払う医師。
=
金ヅル
というマジで残念な方程式がこの店の店員の中に成立した瞬間だった。
最初は一本の電話から始まった。
接客してくれた素敵なお姉さんから
「あれからどうですか?メンテナンスも行なってますので困ったことがあったらお気軽に言ってくださいね」
なんで親切なんだろう!
カルティエではなかったこのアフターケア!
マジで感動である。
さすが国内ブランド!
ビバ!JAPANESE OMOTENASHI
っつーマインドである。
それからちょくちょく電話がかかってくるようになった。
最初のうちは良かったんだけど、4回目の電話で
「お父様は次いつ大阪に来られますか?」
「あれからお父様は元気ですか?」
「お父様はジュエリーをお気に召したか?」
お姉さんは私を通して父と話したがった。
じわじわと嫌な思いが込み上げる。
そうか、この人は私じゃなくて父を見ている。
お金を持ってる金払いのいい父に目をつけて商売しているのだ。
それがわかって残念な気持ちにはなったけど、
別にそれも仕方ないよなあと思ってしまう自分がいた。
そりゃ、お金を払う人に向けて商売するのはビジネスの基本なのだから仕方がない。
だけど、ここから私をさらに暗澹とした気持ちに突き落とすことをこのブランドはやってくれたのである。
「本日はファミリーセールのご案内でお電話差し上げました」
というこの電話から悪夢は始まった。
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