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みんなが好きな「『百年の孤独』みたいな大河小説」ベスト10

 文庫化がたいへん話題になっている『百年の孤独』にちなみ、Twitterでこんなことを言ってみたら、ひと晩で100作を超える作品が集まってきて頭を抱えている。
 もちろん反応があるのは嬉しいけど、ここまでとは思わなかった。どうしよう。せっかく皆さんが教えてくれたのに、私が見て「いいね」をつけて楽しむだけではもったいない気がする。

 なので、リストアップして、数の多い順に並べることにした。
 2024年6月30日の9時47分(ツイートした時間)から、7月1日の正午までの集計です。全部で169。ひとりで複数挙げてくれた作品もすべて勘定に入れました。
 リプライ、引用リツイート……空リプも気づいた範囲で拾ったけど、もし漏れがあったら申し訳ありません。シリーズの中の1作を挙げてくれたり、シリーズ全体をお薦めしてくれたりしているのは、私の独断で分けたりまとめたりしています。あと内容は精査しておりませんので、ぜんぜん複数世代にわたっていない物語も入っている可能性はあります。
 いろいろ至らないところは、何卒ご容赦ください。

 では、10位までを発表します。


【1位】14人

『楡家の人びと』北杜夫

 溢れる楽天性と人当たりの良さで患者の信頼を集めるドクトル楡基一郎が、誇大妄想的な着想と明治生まれの破天荒な行動力をもって、一代で築いた楡脳病院。その屋根の下で、ある者は優雅に、ある者は純朴に、ある者は夢見がちに、ある者は漠とした不安にとまどいながら、それぞれの生を紡いでゆく。東京青山の大病院と、そこに集う個性豊かな一族の、にぎやかな年代記の幕が上がる。

新潮文庫

【2位】6人

『チボー家の人々』ロジェ・マルタン・デュ・ガール

 第一次大戦前夜のフランスを舞台に、良家に育った二人の兄弟の運命を壮大なスケールで描く大河小説。繊細な感受性を持つ弟ジャックの悲劇が時を超えて万人の胸を打つ永遠のロングセラー。

白水社

『ブッデンブローク家の人びと』トーマス・マン

「ある家族の没落」という副題が示すように、ドイツの一ブルジョア家庭の変遷を四代にわたって描く。単純で生への気迫に満ちた実業家の家庭が代を追うにつれ、芸術的、精神的なものに支配され、人々は繊細複雑になって遂には生への意志力をも失ってゆく。マンのノーベル文学賞受賞は主にこの作品によるという。

岩波文庫

【4位】5人

『大地』パール・バック

 わずかな土地を大地主の黄(ホワン)家から借りて耕す小作農の王龍(ワンロン)は、黄家の奴隷の阿蘭(アーラン)を嫁にもらうことになった。美しくはないが非常な働き者の妻を得た王龍は、子宝に恵まれ、黄家の土地を買うまでに運が上向き始めるが――。19世紀後半から20世紀初頭の激動の中国で、三世代にわたり命がけで道を切り拓く人々の大河ドラマ。著者にピューリッツァー賞、ノーベル文学賞をもたらした世紀の傑作。

新潮文庫

【5位】4人

『千年の愉楽』中上健次

 熊野の山々のせまる紀州南端の地を舞台に、高貴で不吉な血の宿命を分かつ若者たち――色事師、荒くれ、夜盗、ヤクザら――の生と死を、神話的世界を通し過去・現在・未来に自在に映しだす新しい物語文学。

河出文庫

『パチンコ』ミン・ジン・リー

 日韓併合下の釜山沖の小さな島、影島。下宿屋の娘、キム・ソンジャは、粋な仲買人のハンスと出会い、恋に落ちて身籠るが、実はハンスには妻子がいた。妊娠を恥じる彼女に牧師のイサクが手を差し伸べる。二人はイサクの兄が住む大阪の鶴橋へ。しかし過酷な日々が待ち受けていた――。

文春文庫

『べっぴんぢごく』岩井志麻子

 死霊が彷徨い、腐臭漂う岡山の寒村。村で一番の分限者の家に生れながら、牛蛙と綽名されるほど醜いふみ枝は、母シヲの淫蕩な美しさを憎悪する。しかしふみ枝の娘は、シヲに生き写しの、禍々しいまでの美貌を備えていた。美女と醜女が一代交替で生れるのは、禁忌を犯した罰か、土俗の死霊の祟りなのか―。呪われた家系を生きた六代の女たち、愛欲と怨念にまみれた、百年の因果の物語。

紀伊國屋書店(新潮文庫・絶版)

『笛吹川』深沢七郎

 信玄の誕生から勝頼の死まで、武田家の盛衰とともに生きた、笛吹川沿いの農民一家六代にわたる物語。生まれては殺される、その無慈悲な反復を、説話と土俗的語りで鮮烈なイメージに昇華した文学史上の問題作。平野謙との<「笛吹川」論争>で、花田清輝をして「近代芸術を止揚する方法」と言わしめ、また後年、開高健をして「私のなかにある古い日本の血に点火しながらこの作品は現代そのもの」とも言わしめる。

講談社文芸文庫

【9位】3人

『ルーツ』アレックス・ヘイリー

 黒人作家が先祖を求めて調べ上げた、200年にわたる物語。人間としての扱いをうけることのなかったアメリカ黒人の歴史が目前に展開される。人種差別反対を声高に叫ぶのではなく、人間の存在そのものを問う。すべての読者に感動を呼び起こさずにはいないだろう。世界的なベストセラーの文庫版。

文元社(現代教養文庫)

『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム・フォークナー

 アメリカ南部を舞台に、巨大な荘園を建設し自らの家系を築きあげる男の、南北戦争を挟んで展開される繁栄と没落の物語。重層的な語りの中に呪われた血の歴史が浮かびあがる壮大なサーガ。

河出書房新社

『永遠の都』加賀乙彦

 貧しい家から身を起こして海軍軍医になり、やがて一代にして東京三田に大外科病院を作りあげた外科医時田利平。昭和10年代から太平洋戦争をへて戦後の復興の時期にわたる時代、一時は炎都となった東京を舞台に、彼とその一族三代それぞれの波瀾の生涯をドラマチックに描く長編。

新潮文庫

『警官の血』佐々木譲

 昭和二十三年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。人情味溢れる駐在だった。だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。その長男・安城民雄も父の跡を追うように警察学校へ。だが卒業後、その血を見込まれ、過酷な任務を与えられる。大学生として新左翼運動に潜りこめ、というのだ。三代の警官の魂を描く、空前絶後の大河ミステリ。

新潮文庫

『天冥の標』小川一水

 西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ。

ハヤカワ文庫

『紀ノ川』有吉佐和子

 小さな川の流れを呑みこんでしだいに大きくなっていく紀ノ川のように、男のいのちを吸収しながらたくましく生きる女たち。――家霊的で絶対の存在である祖母・花。男のような侠気があり、独立自尊の気持の強い母・文緒。そして、大学を卒業して出版社に就職した戦後世代の娘・華子。紀州和歌山の素封家を舞台に、明治・大正・昭和三代の女たちの系譜をたどった年代記的長編。

新潮文庫

 とにかく『楡家の人びと』が強い!
 あとノーベル文学賞作家がすごく多い。『楡家』に続く3作品はみんな受賞者の代表作。あとはフォークナーも。
 中上健次はお薦めの作品が割れたのでこの順位ですが、作家別のランキングなら2位です。
 あとマンガなので除外しましたが『ジョジョの奇妙な冒険』を挙げてくれた人が7人もいるので本当は単独2位なんですよ……。ジョジョはノーベル賞よりすごい。確かに「主人公が代替わりする壮大な物語」の魅力を最初に教えてくれたのって、この作品だったかもしれない。

 続いて、2人が挙げてくれた作品を並べます。(順不同)

『ときめきトゥナイト』池野恋
『精霊たちの家』イザベル・アシェンデ
『嵐が丘』エミリー・ブロンテ
『炸裂志』エン・レンカ
『大聖堂』ケン・フォレット
『警察署長』スチュアート・ウッズ
『枯木灘』中上健次
『奇蹟』中上健次
『ワイルド・スワン』ユン・チアン
『邯鄲の島遥かなり』貫井徳郎
『平家物語』古川日出男/訳
『血脈』佐藤愛子
『源氏物語』紫式部
『奏で手のヌフレツン』酉島伝法
『俺の屍を越えてゆけ』桝田省治(ゲームデザイン)
『助左衛門四代記』有吉佐和子

 説明不要ですが『ときめきトゥナイト』はマンガです。あと『俺の屍を越えてゆけ』はテレビゲーム。これだけでも東西の古典的名作から人気作家の最新作まで含んだ素晴らしいラインナップだと思う。

 そして、ひとりが挙げてくれたこだわりの作品群。(順不同)

『指輪物語』J・R・R・トールキン
『チグリスとユーフラテス』新井素子
『星へ行く船(他、コバルト文庫のシリーズ)』新井素子
『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド
『黎明の王 白昼の女王』イアン・マクドナルド
『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ
『ジョイ・ラック・クラブ』エィミ・タン
『ウォーリアーズ』エリン・ハンター
『異形の愛』キャサリン・ダン
『王朝四代記』ククリット・プラモート
『ベルリン三部作(1919・1933・1945)』クラウス・コルドン
『六道ヶ辻シリーズ』栗本薫
『鳥の歌いまは絶え』ケイト・ウィルヘルム
『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド
『征途』佐藤大輔
『あすなろ坂』里中満智子
『ケインとアベル』ジェフリー・アーチャー
『ゲームの達人』シドニィ・シェルダン
『氷と炎の歌』ジョージ・R・R・マーティン
『エデンの東』ジョン・スタインベック
『グリークス』ジョン・バートン/ケネス・カヴァンダー(編)
『リーマン・トリロジー』ステファノ・マッシーニ
『雪の練習生』多和田葉子
『鯨』チョン・ミョングァン
『火の山-山猿記』津島佑子
『レオポルトシュタット』トム・ストッパード
『地の果て至上の時』中上健次
『岬』中上健次
『彼女はマリウポリからやってきた』ナターシャ・ヴォーディン
『九時半の玉突き』ハインリヒ・ベル
『土地』パク・キョンニ
『レ・ミゼラブル』ビクトル・ユゴー
『棺のない埋葬』 ファン・ファン
『楊家将演義』作者不明
『デューン砂の惑星』フランク・ハーバート
『ゴッドファーザー』フランシス・フォード・コッポラ監督
『北京から来た男』ヘニング・マンケル
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』堀井雄二(ゲームデザイン)
『舟を編む』三浦しをん
『櫂』宮尾登美子
『孟夏の太陽』宮城谷昌光
『血族』山口瞳
『華麗なる一族』山崎豊子
『大奥』よしながふみ
『血脈 西武王国・堤兄弟の真実』レズリー・ダウナー
『シンセミア』阿部和重
『流離譚』安岡章太郎
『雲の都』加賀乙彦
『ロマンシングサ・ガ2』河津秋敏(ゲームデザイン)
『サガフロンティア2』河津秋敏(プロデューサー)
『颶風の王』河﨑秋子
『リア家の人々』橋本治
『アラビアの夜の種族』古川日出男
『聖家族』古川日出男
『白夜を旅する人々』三浦哲郎
『導きの星』小川一水
『地図と拳』小川哲
『機動戦士ガンダムAGE(小説版)』小太刀右京
『われ逝くもののごとく』森敦
『本格小説』水村美苗
『始まりの魔法使い』石之宮カント
『夜明け前』島崎藤村
『カムカム・エヴリバディ』藤本有紀(脚本)
『男樹』本宮ひろ志

 小説の他に、マンガ、ゲーム、映画、朝ドラ、戯曲など、さまざまなジャンルの作品が挙げられています。『氷と炎の歌』は海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作。

 読んだことがない……どころか、初めて知った作品もたくさんある。どうしても長大重厚なものが多いので、次から次と読破するのは難しいけれど、とくに気になる作品から少しずつ手に取ってみたいと思います。

 集計はこれで終わりますが、その後もリプライや引用リツイートで教えてくれる人がたくさんいらっしゃいます。ありがとうございます。楽しみに拝見します。皆さまもぜひご覧ください。

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