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SlackとTeamsの比較から世界観について語る

こんにちは。意味のある記事を初めて有料にしたところ、予想外に売れてうろたえている私です。その有料記事はこちら。メンバーシップに加入するとこちらも特典としてついてきます。

さて、予想外に売れた結果予想外の反響があったのですが、気になったのは「世界観」という言葉が意外といろんな人に刺さるのねという点です。私は世界観のあるプロダクトが大好きですが、世界観って意図的に作り込まなくても勝手にできてしまうものなのでそれが少し厄介でもあるんですよね。

とはいえ、多くの方にとって「世界観を大事にするって結局どういうことなんだろう?」という疑問が残ったという雰囲気を感じとりましたので、今回は皆が大好きな(少なくとも私が大好きな)Slack / Teams論争を元に、プロダクトの世界観とは何なのかを論じてみようと思います。


おことわり

さて、今日比較するSlackとTeamsですが、まず私の立場を明らかにしておきます。私はいずれの運営元とも利害関係はありません。また、日常の業務ではいずれも使用しています。どちらかがなくなってしまうと仕事ができなくなるぐらい、両方とも使い込んでいます。

そして私は、どちらが優れているとか劣っているというものではなくてそれぞれのプロダクトに正義があると考えています。しかし、当然個人の好みというのはあるもので、私はSlackのほうが好きです。比較にならないレベルで好きです。この記事はなるべくフラットに書こうとしていますが、背後にある私の好みが見え隠れする部分もあるかと思いますので、その点はご了承ください。

SlackとTeamsの大きな違い

SlackとTeamsは、いずれも「チームコミュニケーションのためのツール」として認知されています。両方を導入している会社もありますが、多くの場合はどちらか一方のみを導入することになるので、Slack vs Teamsという建付けで語られることが多い、ゴリゴリの競合プロダクトです。

私はいずれも使ったことがあり、両方を導入している会社で働いた経験もあります。その経験から、それぞれがどのような世界観のプロダクトなのかを理解しているつもりです。両プロダクトを実際に使ってみると、全く異なる価値観に基づいて設計されていることがすぐにわかります。できること、いわゆる星取表の段階ではこの2つのプロダクト間に大きな差異はないにもかかわらず。

Slackの世界では、チームというものは有機的で境界が曖昧なものとして扱われています。ワークスペース内には明確なヒエラルキーがなく、チャンネルの作成も(設定によりますが)自由です。誰でも気軽に作り、抜け、雑談を交わし、必要なら外部ユーザーも比較的簡単なステップで混ぜられます。
添付ファイルは「会話に添えるもの」として扱われ、ローカルやクラウドの出所など気にせず放り込めます。以前送ったものとファイル名が重複しようと内容が重複しようと、問題なく送れます。

Slackは情報を流通させることそのものに価値を見出しているのでしょう。だからSlackでは完璧なドキュメントより「今話していること」が優先されます。制約が少ないこと、自由であること自体が機能になっていると言っていいでしょう。

一方、Teamsの世界は真逆です。チームは組織構造の延長にあり、チャネルは階層的に管理されます。
ファイルの保存場所は必ずSharePointと紐づき、アクセス権限はドキュメント単位で管理されます。そこには「情報は責任のもとで管理されるべきもの」という思想が見てとれます。

この差は、添付ファイルの挙動にも現れます。SlackではPDFでも画像でも、気づけば検索結果に紛れて出てきます。Teamsでは同じファイルがSharePointに保存され、権限の外にいる人には見えません。

Slackが情報の流通を信じているのに対し、Teamsは情報の統制を信じています。どちらも効率化を目指しているものの、効率の定義が全く異なることに気づくでしょう。Slackは「動きを止めないこと」(現在の動きを最大化すること)を効率と呼び、Teamsは「整合性を保つこと」(後から面倒が起きないこと)を効率と呼んでいるように感じます。
Slackの「誰でもアクセスできる自由」は、Teamsから見れば「管理が効かないリスク」であり、Teamsの「統制された共有」は、Slackから見れば「コラボレーションの停滞」です。

世界観 = プロダクトが「何をしないと決めたか」

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