トイレ巡るスターバックスの決断

スターバックスのハワード・シュルツ会長=2015年3月、米シアトル(ロイター=共同)

 米コーヒーチェーン大手、スターバックスのハワード・シュルツ会長は14日までに、米首都ワシントンのシンクタンクでの会合で、これまで原則的にコーヒーなど商品を注文した顧客だけに店内のトイレを利用させてきた同社のポリシー(方針)を変更し、米国の約14000全店で、だれでもトイレを利用できるようにすることを明らかにした。米CNNテレビなどが伝えた。 

 ポリシー変更のきっかけは4月12日に東部フィラデルフィアの店舗で起きたトラブル。注文せずにトイレ利用を頼んだ黒人男性2人に対し利用を許可しなかった上、警察を呼び排除したことが「人種差別」として全米で大きな波紋を呼んだ。スターバックスは謝罪した上で、米国にある全直営店を29日午後に一時的に一斉閉店、約17万5千人の従業員に差別防止のための社員教育を行うことを決めた。 

 シュルツ会長によると、注文しない顧客へのトイレ使用を認めないポリシーは「緩やかなもの」で、最終的な決定は各店舗に委ねられていたものの、このポリシーとフィラデルフィアの店長の対応は「どんな面から見ても間違っていた」とあらためて謝罪した。 

 さらに「(スターバックスのトイレを)公衆便所のようにはしたくはないが」としながら「スターバックスに来る人が、自分はふさわしくない人物だからトイレを使えないというふうには思ってほしくない」と、「顧客」第一の姿勢を貫く考えを強調した。今後は「安全上の事情」がない限り、注文のいかんにかかわらず、だれでもトイレを使えるようになるが、英BBCテレビは、レストランなど多くの店がトイレの利用に制限をかけているのには理由があると指摘した。 

 その第一はコストの問題。清掃やメインテナンスの費用などは商品の注文があればこそ賄えるが、トイレだけを利用する客ばかりでは店側の負担は増すばかり。また、トイレが故意に壊されたり汚される恐れもある。 

 米国に限った話かもしれないが、さらに深刻な懸念材料となっているのがトイレでの麻薬使用と売春行為の問題だ。BBCによると、2013年にニューヨークのコーヒー店やレストランなどの事業所を対象に行われた調査では、58%の店長らが自らの事業所内のトイレでの麻薬使用に遭遇したことがあると答えた。また、ホームレスの人がトイレを長期間「占拠」してしまう恐れもある。 

 こうした懸念にかかわらず、今回の決定は「だれにでもオープン」の方針を示したシュルツ会長の英断だが、利用者のほうはどう考えているのだろう。日本でも、コンビニなどでトイレを貸してもらうことはあるだろうが、店員に一声かけると同時に、何か小さいものでいいので買い物するのがマナーだと個人的には考えているが、米国での受け止め方を聞いてみたい気がする。 (共同通信=太田清)

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