「サクラ革命 華咲く乙女たち」インプレッション ディライトワークスの「サクラ大戦」スマホゲー化は吉と出たか凶と出たか:モバクソ畑でつかまえて
モバクソゲーサークル「それいゆ」発起人、怪しい隣人さんによるスマホゲームコラム。今回はあの「サクラ大戦」シリーズのスマホ向け新作「サクラ革命」について。
去る2020年12月15日、サクラ大戦シリーズの新作アプリである「サクラ革命 華咲く乙女たち」がリリースされました。
セガとディライトワークスが共同制作したこのゲーム、どんな作品かが気になっている方も多いと思います。ネットでは悪い評判が先行しがちなのですが、実際はどんなものだったでしょうか。なお、筆者のサクラ大戦歴はドリームキャスト版の「3」をやっただけという素人同然のもの。「サクラ革命」の進行度はメインストーリーの第1章第1話をクリアしたところまで、の状態でお話しいたします。
ライター:怪しい隣人
出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。
メインヒロイン、3Dモデルで損をしているのでは……?
ゲームは事前にビジュアルが発表されていた2人の少女たちが戦うところから始まります。これが事実上の戦闘チュートリアルになっています。その後主人公の物語が始まるのですが、警察官として赴任した先が有名な歌劇団の大劇場。女の子たちのショーを見ながら「自分はなぜこんなところに」と思っていたらその後に現れた吉良首相の演説のさなか、突如敵が乱入。首相に「君には特別な力がある」といわれて女の子たちを指揮して敵と戦うことに、という実にそれっぽい流れ。
ここから歌劇団ならぬ華撃団の隊長になり、テロリストを追うことになります。しかし、テロリストといわれていた“咲良なでしこ”との出会いで主人公は首相が悪であったという真実に気付きます。なでしこは自らを犠牲にして主人公を離島に送り、そこで出会った彼女の娘たちとともに日本奪還を決意する、というのがプロローグの流れです。
ここまでやるのに最速でやっても30分ぐらいかかるなかなかに壮大なプロローグ。主人公は未来を見通す目を持っているため、首相が悪だと理解して反旗を翻すことになるのですが、そこでシリーズおなじみのLIPS(制限時間付き選択肢)が登場。「首相に味方する」という選択肢を選んでも「この未来はダメだ」となってしまいます。選択肢を出した意味がありません。
プレイヤーとしてはその判断に同意できないというか、したくありません。ど田舎に送られて太眉パッツン髪の少女と明日をもしれぬテロリスト暮らし兼ドサ回りをするよりは、森川智之声の首相とともに大帝国華撃団B.L.A.C.K.の皆さんと一緒に市民を虐げながら生きていきたいじゃありませんか。できない選択肢なら眼の前にぶら下げないでほしいな、と思ってしまいます。
この長いプロローグの後ようやくガチャを回すことができ、さまざまな仲間と出会います。ですが、最初の戦闘は正義の味方の娘である“咲良しの”一人を使って戦うことに。俺が引いた少女たちはいつ戦うの!? とさらにテンションが下がります。
また、このガチャから出てるキャラクターたちにも問題がありまして。日本奪還のため各地を巡業しつつ仲間を集めるという展開になり、鹿児島ではしのの旧友が同行を申し出てくれたり、新たな仲間をスカウトしたりします。ですが、その少女が仲間になってくれるわけではなく、ガチャから引かなければなりません。戦闘のゲストNPCとしては使えるのですが、手元においてプロフィールが見られるわけではないのです。
逆に、自分がガチャを引いたキャラはこの調子だとストーリー上で活躍するまでどういうキャラか分からない状態になっています。私の手元にある最高レアリティのセガのハードを身にまとった少女は、なんでそんな格好をしているのかさっぱり分かりません。他に北海道からやってきた女の子もいるのですが、彼女が登場するシナリオにはいつ行けるのでしょう。今九州で次は中国地方らしいのですが。
女の子たちといえば、最初に出会うメインヒロイン(しの)について。服装はさておき、顔つきがどうにもダメだなあと思っていたのですが、しばらく見ているうちに3Dモデルの問題なのかなと思ったりました。
具体的には、表情が少ないのです。今から戦うぞ、という顔とドヤ顔が同じなんじゃないか……? と思ってしまいまして。原稿を書くためにスクリーンショットを撮っていて「あ、これは違うな」となってはいるのですが、気合の入った顔と言うよりは「かわいくねえ……」って意志の方が先行してしまいまして。イベントシーンに登場する2Dイラストを見ると普通にかわいらしいだけに、このあたりの表情の付け方でいくらでも気を付けられるのかなと思いました。
「FGOに似てる」は本当?
見た目はこのあたりにして、ゲームシステムについて。戦闘については前進/現在の位置を維持/後退を駆使して相手を押し込んでいく陣取りゲーム的な戦闘……なのですが今のところそれを駆使して戦うほどの強敵には出会っていないため、システムの良しあしは評価しづらいです。ただ、敵の範囲攻撃を後退して回避するなどの要素はうまく使えばスリリングな戦闘になるのではないでしょうか。なおオートボタンがあり敵を殴るだけの雑魚戦闘はサクサク進めることが可能です。スキップチケットなどの類いはないのが残念ですね。
キャラクターの育成はレベルアップ、レベル上限解放、技能レベル上げ、必殺攻撃レベル上げという項目に分かれています。必殺攻撃のレベル上げはガチャでキャラがかぶると勝手にレベルが上がるものですが、これを上げるためのアイテムも手に入るようです。他はそれぞれ素材を費やしてレベルを上げることになるタイプで、戦闘で勝手に経験値が入るタイプではありません。システムとは関係ないのですが、セガハードを身にまとう女の子の技能が「早すぎたコンセプト」となっており、久々にストレートなセガの自虐ネタを見ている気分になります。
この育成システムを見て何かに似ていると思われた方もいらっしゃるかもしれません。このあたりも含め「Fate Grand Order」(以下FGO)に良く似ていると話題にする人をネットで時折拝見しました。確かに公式サイトの作りや、ゲーム内のお知らせは「これどこかで見た!」と叫びたくなってしまいます。ガチャから出てくるのがキャラクター(星3〜星5)と装備(星3〜星5)であり、確率的にはキャラより装備の方が出やすいあたりもそのままでしょうか。
逆に言えば、システム的にはこのあたりしか似ていません。強いて言うなら戦闘時のアイコンが赤青緑なところや、戦闘時に自分も戦うメンバーを支援するスキルが使えるところあたりでしょうか。分かりやすいところが似ているので「似ている!」と判断する人はいるのではと思わされました。
実際に比較すると、FGOでは固定であった曜日ごとの育成クエストを鍵を使って任意に開放したり、オート戦闘ができたりとむしろFGOよりも良いところが多く、同じ会社のゲームとして進歩していると思います。ただし、それらのクエストをプレイしようとすると逐一ダウンロードが発生するという問題点があります。これは各クエストに限らずストーリーでも発生するので、最初にどかっとダウンロードさせたほうが良いと思うのですが……。
また、ストーリー面でも「ストーリー上で仲間が増え、その子が魅力的だと思ったらガチャを回して手に入れてね」という流れはFGOで散々見せられたなあ、とは思います。ただ、FGOの場合ストーリーの進行に応じてガチャが更新されていくことに加え、ゲームでは初登場でも神話や伝説に登場したキャラクターがモチーフなので「誰これ」みたいな度合いは少ないのです。今回完全新規コンテンツということでガチャを回すとどんどん知らないキャラが増えていくという問題はあるかなと思いました。
また、それ以外にもストーリーを読み返す方法が分からないというのは少し残念なポイントです。これだけストーリーを売りにしているゲームなのですから、そのあたりを繰り返し楽しめる要素はほしかったな、と思いました。
まとめ:話は悪くないものの……
ここまでプレイしてゲームを継続する気はあるのか、といわれると個人的には微妙なところです。アニメでやってくれれば毎週見るという程度に興味を持っているのですが。話は悪くないですし、アニメなら3Dの表情不足などの問題が解決されるのではないかと考えているからです。何よりアニメであれば「知らないキャラクターが増えていく」「自分好みの選択肢を選ぶ意味がない」という「ゲームとしての不満点」が解決されていると思いますので。新サクラ大戦も早々にアニメ化が進んでいたことですし、こちらもそのような展開をしてくれればよいなと思うのですが。あるいは、コンシューマーゲームとしてちゃんと選択肢に意味がある作品だったり、話の流れに応じて仲間が増えていくような作品であればよかったのですが。
最後になりますが、本日プロデューサー&ディレクターレターが発表されました。私が懸念していた部分については「乙女の魅力をもっと知りたい! につきまして」という項目で今後対応予定であるということが判明しました。ただ、もう一つの不満点である「選択肢に意味がないこと」についてはさすがに解消はされそうにありません。
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