中華料理というと、何を思い浮かべますか?
挙げればきりがありませんが、麻婆豆腐や担々麺のような辛い料理、四川料理を推す方も少なくないでしょう。なかには辛くないものもありますが、四川料理といって浮かぶものは大体辛い料理だと思います。
では、四川料理は、どうして辛いのでしょうか。
辛い理由は「麻辣」
そもそも四川料理が辛いのは、どんな材料が入っているからか知っていますか? 辛い料理というと、唐辛子を使ったものを思い浮かべがちですが、本場の四川料理の辛さは唐辛子だけで成り立っているわけではありません。
四川料理の辛さを表す言葉に、「麻辣(マーラー)」というものがあります。字面からなんとなく想像できるかもしれませんが、2文字目の「辣」というのが唐辛子の辛さのことです。
それでは、もう一方の「麻」は何かというと、「花椒(かしょう、フアジャオ)」というサンショウの一種の辛さのことです。ビリビリと舌がしびれるような辛さといわれます。
昔の四川料理は「麻」の辛さ
ところで、「伝統の四川料理」といわれることもありますが、現在の四川料理の様式は中国の歴史に比べると比較的新しく、明の時代より後、17世紀以降のものとされています。唐辛子の原産地は、新大陸の南アメリカです。そこから伝わるより前に、中国に唐辛子が存在したはずがないのです。
四川料理にはもともとは唐辛子の辛さ(辣)は含まれておらず、唐辛子が伝わってきて以降に辛さを増していったと考えられます。
一方で、花椒は古くから四川周辺で生産され、香辛料や薬用として使われてきました。量がどれほどだったかは定かではありませんが、昔の四川料理は、「麻」のしびれる辛味がスパイスとして効いていたようです。
四川に唐辛子が根付いた理由
唐辛子が登場する料理は世界各地にありますが、四川料理ほどにさまざまな料理にふんだんに使っているところはまれです。
四川料理が特に唐辛子の辛さを利用するようになったのはなぜでしょうか。「これだ」と確定できるものはありませんが、以下のような要素があって現在の四川料理が形成されたと考えられます。
湖南から伝わった?
一説には、四川省には、湖南省あたりに祖先のルーツを持つ人が多いとされます。湖南省のあたりは名前の通り湖や川が入り組み、かつては洪水が多かったため、飢餓に陥った人々が肥沃な四川省へと移住することがありました。
実は、この湖南省の料理も辛い料理として有名で、人々が湖南から四川に移住すると同時に、湖南の辛い料理も四川に伝わったと考えられます。
加えて、「豆板醤(トウバンジャン)」が湖南から四川へ移動する道すがら生まれた、という言い伝えがあります。豆板醤とは、ソラマメと唐辛子を一緒に熟成させた調味料で、四川料理によく使われています。
ある人が、ソラマメを四川へと運ぶときに、唐辛子もまとめて運んでいました。しかし、雨のせいか湿気のせいか、途中でソラマメが腐ってしまいます。「腐ってしまったけど、大量のソラマメを捨てるのはもったいない」ということで、これを唐辛子と混ぜて食べてみたところ、「意外とイケる!」となったのが、豆板醤の誕生だといいます。
この伝説の真偽ははっきりしませんが、豆板醤という独特で使いやすい調味料が生まれたことで、四川料理がほかの地域の料理を超えて辛くなっていった可能性は高いでしょう。
四川の気候と関係?
辛いものは「夏バテに効く」などといいますが、これも関係しているかもしれません。
唐辛子の辛味成分・カプサイシンは、交感神経に影響を及ぼします。具体的には、胃の消化を活発にして食欲を増進させたり、体温を上げたりする効果があります。体温が上がるということは、体温を下げるために汗がたくさん出て、その蒸発によって結果的に涼しく感じられるのです。
辛いものを好んで食べる地域を探してみると、インドや東南アジアなど暑い地域が多く該当するのも、こうした知恵あってのことでしょう。
そして、これらの例に違わず、四川省も夏が非常に蒸し暑い地域です。こうした気候も、四川の人々の食に大きく影響していると考えられます。
おわりに
このほかに、「古くから花椒を使っていた四川の人々は、中国のほかの地域の人々よりも辛味を好んだ」などの説があります。食べ物の在り方にはさまざまなことが影響していますね。
もし四川料理を食べる機会があれば、ぜひ唐辛子と花椒の辛味の違いを比べてみてください。また、辛いものを食べた後にからだの感覚がどう変化したかも気にしてみるといいかもしれません。
参考文献
- 洪光住 監修(1991)『中国食物事典』柴田書店
- 木村春子(2005)『火の料理 水の料理 食に見る日本と中国』農山漁村文化協会
- 山本紀夫(2016)『トウガラシの世界史』中央公論新社
- 小島泰雄(2018)「辛い四川料理とモンスーンアジア」『日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会』日本地理学会
- 加藤千洋(2015)「中国革命と唐辛子」『国際理解41号』帝塚山学院大学国際理解研究所
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