漫画だけではない、Kindle“海賊出版”の実態 Amazonの審査体制に「漫画村プロと変わらない」と批判も
Kindleで広がる海賊版コンテンツについて、「きんどう」管理人のきんどうさんに聞きました。
海賊版サイト「漫画村」から取得したと思われる漫画が、Amazon.co.jpの電子書籍売買プラットフォーム「Kindle」で販売されていた件(関連記事)で、ネット上ではAmazonのチェック体制について疑問視する声も挙がっています。
実はこうした“海賊出版”は今回が初めてではなく、Kindleストアではかなり前から、しかも大量に存在していたといいます。Kindle情報サイト「きんどう」管理人のきんどう(@zoknd)さんは、海賊版コンテンツを放置し続けるAmazonやKindleの仕組みについて、事実上海賊版コンテンツで集客しているのと変わらないとし、「【漫画村プロ】とどう違うのかがよくわからない」と指摘しています。
本物と見分けがつかない「海賊写真集」
Amazonには以前から、誰でも手軽に電子書籍を出版し販売できる「Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)」という仕組みがあり、問題となっていた漫画はこれを悪用して販売されていたものと考えられます(当該商品は既に削除済み)。同様の“海賊KDP”で特に多いのは「タレント写真集」のカテゴリーで、ストアで検索すると恐らく無断出版と思われる“海賊写真集”が複数見つかります(特に「Kindle Unlimited」対応作品に多い)。
これらの“海賊写真集”は大半がネット上などから拾ってきた画像で構成されており、画像サイズや衣装、撮影カットなどがバラバラなのが特徴。中には奥付に「万が一、著作権上問題のある画像が掲載されている場合、恐れ入りますが下記までご連絡くださいますようお願いします。早急に削除いたします」といった注意書きが添えられているものもありました。「美女写真集」という体で複数人の写真をまとめているものもあれば、1人の写真を集中的に集めており、パッと見ただけでは正規版と見分けがつかないようなものもあります。
また一方で、最近では芸能事務所や映像会社、アダルトメーカーなどが電子出版に参入するケースも増えてきており、こうした出版者の作品には奥付や表紙がないものもあったりするため、ますます正規版と海賊版の見分けがつきにくくなってきています。
きんどうさんは以前からこうした違法写真集についてサイトで注意喚起していましたが、これらの作品はなくなるどころか、むしろ今でも増え続けているといいます。
―― このような“海賊KDP”の存在はいつごろから認識していましたか。
きんどう:
2013年の終わりごろからでしょうか。Kindleストアの無料ランキング上位に複数ランクインしていて気づきました。以後、途切れることなく総合100位以内には数冊以上の写真集があります。
―― これらは全て違法に配信されているものなのでしょうか。
きんどう:
全てかどうかは分かりません。メーカーが不慣れで半端な情報のままアップロードしていた、という作品もあると思います。ただ過去に何冊も配信停止になっている「美女写真集」のようなシリーズや、タイトルの日本語が怪しいもの、女優名や奥付がないものなどは、表紙をGoogleで画像検索すると、アジア系のフリー素材美女画像集が引っ掛かったり、日本の写真集や雑誌で使われたものが見つかったりする場合があるため、違法である可能性が高いのではと考えています。
―― やはり金銭が目的で配信されているのでしょうか。
きんどう:
Kindle Unlimited対象の書籍は、利用者が読んだページ数に応じてAmazonから報酬を得られる仕組みです。このためページ数を稼ぎやすい写真集はうってつけで、Kindle Unlimitedが始まってから違法写真集が爆発的に増えました。
過去には個人のアダルト漫画家さんがKindle Unlimitedを通じて、数カ月で1000万円以上稼いだこともあるそうなので、数百冊もの写真集を読み放題で公開しているとなれば、恐らく大変な金額になるのではと思います。また、Kindleの個人出版は日本に限らず世界中のAmazonで販売が可能なため、翻訳の手間が少ない海賊版写真集はより広く収益を得られている可能性もあります。
―― 今回は漫画の無断出版が話題になりましたが、漫画や写真集以外にも同様のケースはあるのでしょうか。
きんどう:
個人の同人誌をスキャンして勝手に販売しているものや、新聞に掲載された書評を集めて出展付きで『自選集』として出しているものなどは見たことがあります。他には弁護士や英会話講師、YouTuberなどの名前をかたり、文字通り名前を拝借して勝手な本をなりすましで発売したものも多数ありました。最近は見なくなりましたが、5ちゃんねるの面白まとめ本なども無断販売だと思いますね。風景写真なども「転載っぽいなぁ」というものはたびたび見つけますが、中には本当に個人が出版しているものもあって区別がつきません。
―― Amazonの対応についてどう感じていますか。
きんどう:
Kindleの公式ページ経由では、著作権侵害は著作権者からしか問い合わせができません。ユーザー側では「このコンテンツを不適切なものとして報告」は可能ですが、それだけではなかなか取り下げられません。以前はAmazon側が一方的に「著作権を認められない」として販売を許可しないのは検閲にあたると考えていましたが、ここまで審査が機能していないと思われるコンテンツがあるのは無責任だとも感じています。
きんどうさんによると、電子書籍だけでなく、過去にはアニメの海賊版がAmazonプライム・ビデオで配信されていたのも確認しているとのこと。他にもゲーム実況や、ドラえもんのぬいぐるみを使った個人制作のパペットドラマなど、怪しいコンテンツは他にも多数あり、とても全ては追いきれないといいます。
また、Amazon側にもこれらの海賊版コンテンツについて把握しているか、またどんな対策を行っているかなど問い合わせていますが、今のところ返信はない状態です。
きんどうさんはこうしたKindleの審査体制について「正規コンテンツに対して良くないから取り除いて欲しい。Amazonが漫画村みたいなビジネスをする理由がわからない」とも指摘。ネット上でも今回の海賊版漫画販売を受け、「ただの無法地帯」「amazonもブロッキングしないと」など、Amazonへの批判も多くあがっていました。
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出版広報センターも声明を発表しています。
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