黒髪ロングで気弱なメガネ委員長は「キンタマ」と叫ぶ――第1回「となりの怪物くん」:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!
虚構新聞の社主UKが知られざるパーソナリティを(思わず)吐露しつつ、大好きなマンガを語りまくります。
ねとらぼ読者のみなさん、はじめまして。世界の様々な虚構記事を配信するニュースサイト「虚構新聞」の社主UKと申します。
本紙「虚構新聞」と「ねとらぼ」の関係は、昨年5月に掲載した「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」という記事が炎上し、「ねとらぼ」で紹介されたころにさかのぼります。それ以降も本紙では数度にわたって「誤報」の謝罪文を掲載してきましたが、そのたびいつも真っ先にガソリン満タンのタンクをもって駆け付けてくるのが、ここ「ねとらぼ」でした。
かつては一読者として「ITちゃん(編注:ねとらぼのマスコットキャラクター)かわいいポ」などと、温かい目で「ねとらぼ」を眺めてきた社主ですが、この橋下事件を境として「ねとらぼ」は警戒すべきサイトとなったのです。
また先日「森永、144個入り『グロス』発売」という本紙記事が今年3度目の現実化という“不祥事”を起こしてしまいました。その時も「待ってました!」と言わんばかりにガソリンタンク持参で嬉々として駆け付けて来たのは、やはりこの「ねとらぼ」でした。ここまで来ると、もはや降参するほかありません。
さて、そんな天敵「ねとらぼ」において、どういうわけだか、この度マンガを紹介する記事を書かせてもらうことになりました。しかし「どうして虚構新聞がマンガを?」と、不思議に思う方も多いかもしれません。
あまり知られていませんが、実は社主は毎年恒例、宝島社の「このマンガがすごい!」にて、2011年以降現在まで3年間、少女マンガ部門のランキング調査に声をかけていただいています。最初にお話をいただいたときは「人手が足りないので、できれば少女マンガ部門を」ということでしたが、この依頼がきっかけで社主は少女マンガの世界にずぶずぶと足を踏み入れることになりました。今や買うマンガの半分以上が少女マンガという状態です。
ちなみに自分のマンガ歴に軽く触れておくと、社主はこの10年来ずっとマンガばかり読んできました。蔵書数はおそらく2000冊くらい。漫画雑誌にも広く目を通していて、中でも最近特に好きなのは「月刊COMICリュウ」(徳間書店)と「別冊マーガレット」(講談社)です。
また本紙「今月の1冊」コーナーでは、社主おすすめのマンガを毎月紹介しているのですが、残念なことに、このコーナーまでもが読者からは虚構扱いされており、今でもほとんど信用されていません。実際に作品を読んだ方々からは「虚構新聞唯一のガチ企画」との呼び声も高いのですが……。
誰からも信じてもらえない社主おすすめマンガをどうすれば信じてもらえるか。そんなことを考えていたところ、「ねとらぼ」編集部から書評執筆の場を提供していただいた次第です。これを機会に社主のおすすめ発言を本気だと受け止めるか、「ねとらぼ」が嘘拡散の片棒を担ぐことになったと判断するか、全ては読者のみなさん次第です。
記念すべき1回目は「となりの怪物くん」です
さて、第1回ということで何から紹介していこうか考えたのですが、まずは社主が少女マンガに傾いたきっかけと同じ「男性でも楽しめる少女マンガ」が良いだろうということで、今回は月刊誌「デザート」で先月(8月号)ついに4年以上にわたる連載の最終回を迎えた人気少女マンガ「となりの怪物くん」(作:ろびこ)を紹介します。単行本は最終巻の第12巻が8月12日に発売されます。
「となりの怪物くん」は、10年の「このマンガがすごい!」オンナ編で第5位にランクイン。先日実写化が決まった「好きっていいなよ。」(葉月かなえ)や、「ジャングルはいつもハレのちグゥ」などで知られる金田一連十郎の連載「ライアー×ライアー」などと並ぶ同誌看板作品の1つでした。12年10月にはアニメ化されたこともあり、あまり少女マンガに詳しくない男子諸兄でもご存知の方は多いのではないでしょうか。
ストーリー紹介
学業は常にトップ。他人に一切興味がなく勉強命のため、ドライアイスとあだ名されるほど冷徹な性格になってしまった女子高生・水谷雫は、入学早々隣の席の問題児・吉田春に懐かれてしまう。
雫を上回る学年トップの頭脳を持つにもかかわらず、人間関係を築くのが苦手で言葉より先に手が出てしまう春、そして恋愛感情が理解できないため、直接的すぎる春のアプローチに戸惑う雫が、お互いの気持ちを理解しようとする中で「好き」という気持ちに目覚めていく――。不器用な2人と、そんな2人を優しく取り巻く仲間たちを通して、いろんな「好きになる」が展開される青春ラブコメディ。
社主はマンガで築いたイメージを崩したくなかったのでアニメは見ていないのですが、ネット上では雫の同級生・夏目あさ子に人気が集まったらしいことは何度も目にしていました。夏目は、美少女過ぎて同性から嫌われる経験を繰り返した結果、極度の男嫌いになってしまったという設定です。
確かに夏目さんはかわいいです。当然のことながらルックス良し、多少暴走気味ではあるけれど、親友である雫と春の恋を素直に応援できる性格も良し、ハンドルネーム「ゴルベーザあさこ」を名乗るネット好きなところも良し、また男子的には「男嫌い」というところもポイント高いでしょう。ひょっとすると、女子から見ても好きな男子が競合しないという意味で友達になりやすいタイプかもしれません。彼女は友達としてはこれほどないくらいにフレンドリーですしね。分かります。
しかし、あえて言わせてもらうなら、この作品において注目するべきは、どう考えてもクラス委員長の大島さん――大島千づるさんではないですか! だって「黒髪ロングで気弱なメガネ委員長キャラ」なんですよ!
高校入学直前に風邪をこじらせて入院、スタートダッシュに出遅れた結果、クラスで孤立してしまい、孤独を好む人の振りをしなければならなくなった大島さん。その影の薄さからクラスメイトに「大山さん」と名前を間違えられる大島さん。中学時代の友達に愚痴のメールを出したら、返ってきたのは「弱音ktkr」「テラバロスwww」。それに対し「ゴメン、最近メールが何言ってるのかわからないよ……」とネットスラングに疎い大島さんです!!
高校入学2日目で風邪をこじらせ、その後人間関係もこじらせた結果、とうとう人生までこじらせた社主にとって、大島さんの高校デビューの悲惨さは他人ごとではありません。
ただ、そういう個人的な肩入れを抜きにしても、「アニメが始まれば大島さん無双になるはず」と確信していました。「千づるたん」「大島さん萌え」という反応がこの広大なネット空間を駆け巡るだろうと確信していたのです。だって「黒髪ロングで気弱なメガネ委員長キャラ」なんですよ!!!
しかし、そんな声は全く聞こえてこない。いつまで待っても聞こえてくるのは「夏目さん可愛い」というつぶやきばかり。日頃は菩薩の生まれ変わりとまで言われるほど温厚な社主ですが、この時ばかりは絶望のあまり、目の前にある極寒の琵琶湖に飛び込み、修羅の形相で「何でだ!」と全力で叫びました。だって……
「黒髪ロングで気弱なメガネ委員長キャラ」なんですよ!!!!!!
最終回を迎えてしまった今、大島さんの魅力を語っても仕方ないかもしれません。しかし、このまま一脇役として埋没させてしまうのはあまりにも惜しいので、彼女が作中最も輝いたシーンだけでも紹介します。それは単行本第2巻、まだ彼女が通りすがりの地味な女子として登場したばかりで、この後はモブとして消えていくだろうと思っていた矢先に言い放った名言です。
少女マンガであるにもかかわらず「キンタマ伏字なし」という偉業を成し遂げた決定的瞬間でした。
その後、大島さんは春への気持ちに気づきつつも、目の前で繰り広げられる春と雫の不器用なラブコメを支えていく「縁の下の力持ち」的な役割を果たしていきます。そしてついにバレンタインデーの日に……この先の展開は読んでのお楽しみということにしましょう。
まさに大島さんという支えがあってこその「となりの怪物くん」。アニメでは夏目さん視点で追っていた人も、今度は大島さん視点から物語を眺めてみてはいかがでしょうか。本作が少女マンガの世界に足を踏み入れる第一歩となることを願うばかりです。
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