「フジロック史上最高に売れなかったトラウマあり」 元バンドマン社長が作るファッションサイト「iQON」(1/2 ページ)
ソーシャルファッションサイト「iQON」を運営するVASILYの金山社長は、フジロックフェスティバルに出演したこともある元バンドマン。そんな音楽の道を捨て、ネットベンチャーを起業した経緯とは。
ソーシャルファッションサイト「iQON」を運営するネットベンチャーVASILY(ヴァシリー)の金山裕樹社長(33)は2000年の夏、フジロックフェスティバルの舞台に上がっていた。ロックバンド「POPKILL」のベース&ボーカルとして、「RED MARQREE」(レッドマーキー)と名付けられたステージにトップバッターで出演。定員5000人ほどのホールの客入りは上々だったという。
だが、夢のような時間は長くは続かなかった。金山社長のTwitter「@yukiller」のプロフィール欄にはこう書かれている。「2000年フジロックレッドマーキーに史上最年少で出演して史上最高に売れなかったトラウマあり」。そう、その後の音楽人生は順風満帆とは行かなかったのだ。
バンドを解散し、音楽情報サイトの企画・編集を経た後、ヤフーへ転職。「Yahoo!ミュージック」の運営や「Yahoo!FASHION」の立ち上げに関わった後、起業した。現在の目標は、iQONを日本一のファッションコミュニティーに育て上げることだ。フジロックのバンドマンからネット企業の社長へ――金山社長の異色の経歴に迫ってみよう。
金山社長が「黒歴史」と振り返る、フジロック出演
フジロックのRED MARQREEと言えば、その年に売れ始めたロックアーティストが上がることも多いステージ。そんな場所に金山社長が立ったのは大学3年生のころだ。客席の最前列には「めちゃめちゃかわいい女の子」。アドレナリン全開、テンション最高潮で演奏していたと、金山社長は振り返る。
インディーズバンドだったPOPKILLに対し、フジロック出演後はメディアの取材が次々に舞い込み、契約を打診してきたレコード会社も複数あった。「超天狗になる」ほど、金山社長は希望に満ちあふれていたという。だが、それは一瞬の夢に終わる。
どのレコード会社とも契約には至らなかったのだ。原因は「自分たちのやりたい音楽で」と我を通そうとしたから。「オナニーみたいな音楽をメジャーレーベルを使って拡散させようとしていた」と金山社長は表現する。インディーズで出したCDも、売り上げは1000枚に届かなかった。
「お客さんが求めているものも分からずに自分たちのやりたいことを無邪気にやってしまった」と、反省を口にする金山社長。音楽ビジネスの世界では「自分たちのやりたいようにやっているだけでは稼げない」という現実を突きつけられ、バンドは解散した。「やりたいことをやる時は、お客さんの声を無視してはならない」――心にはこんな誓いが残った。
「何かデカイことを成し遂げたい」
バンドマン時代に取材を受けた音楽情報サイトに声をかけてもらい、運営元の企業に就職。サイトの企画・編集者として働くうちに「何かデカイことを成し遂げたい」と起業を志すようになった。独立に向けた経験を積もうとヤフーへ転職。「Yahoo!ミュージック」のネットラジオサービス「サウンドステーション」の担当を経た後、「ビジネス開発部」へ異動した。
ビジネス開発部は外部パートナーとの企画を推進する部署だが、金山社長は「ビジネス開発=新サイトを作ってビジネスを開発する」と“勝手に”解釈。ファッション情報サイト「Yahoo!ファッション」と、雑誌の記事を閲覧できるサイト「X BRAND」を立ち上げた。
もともと「服が決まらない日は1日憂鬱」になるくらいファッション好きという金山社長は、当時の同僚エンジニア今村雅幸さんと2人で両サイトを担当し、約2年間は家に帰る暇も無いほど忙しく過ごしたという。新サイトの立ち上げを認めてくれた当時の上司に対しては「めちゃくちゃを許してもらい本当に感謝している」と振り返る。
米Yahoo出身者が作ったPolyvoreに刺激され
金山社長を独立へと後押ししたのは、米Yahoo出身者が作ったコーディネート作成サイト「Polyvore」。ECサイトに載っている洋服や雑貨の画像をクリッピングし、Polyvore上のキャンバスにドラッグすると、コーディネート帳のようなページを作って公開できる。コーディネートのアイテム画像をクリックすると購入ページにアクセスする仕組みだ。
金山社長は、ユーザー参加型で購買にも直結するPolyvoreを見て、「これや! これこそが(ファッションサイトの)未来だ!」と衝撃を受けたと語る。さまざまなアイテムを「マッシュアップ」させて1つのコーディネートを作る仕組みは、ユニクロなどの量販店の洋服にブランド物を合わせて「かっこいい」とする日本人の価値観になじみやすいのでは――とも考えた。
金山社長は、日本人向けのコーディネート作成サイトで起業することを決心。「(これを日本でも)やらないか」と今村さんにも声を掛け、新会社VASILYを設立し、2人でヤフーを離れた。
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