第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2なぜ、人はゲームにハマルのか?(1/3 ページ)

リスタートの仕組みのスッゴイしかけ。「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の18回目は、続けたくなる“魔法の言葉”について。

» 2012年04月09日 09時01分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]
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 人はなぜゲームにハマルるのかを、プレイ動画や画面写真を見ながら楽しくかつまじめに考える当コラム。今回は、お陰様でご好評をいただいた第15回のコンティニューのテーマによく似たリスタート仕組みについてお送りしたいと思います。

 敵のキャラクターをあと少しで全滅できそうだったのにやられてしまったり、うっかり谷底に落ちたりしてミスをしたときには誰もが悔しい思いをするもの。あるいは巨大なボスキャラが出てきて何度も打ち負かされたり、なかなかクリアできずに同じ場所を何度も何度もやり直しをさせられてしまうなどということがゲームではよくあります。

 それにしても、同じゲームでいく度となくミスを繰り返しているにもかかわらず、我々プレイヤーはどうして飽きもせずに時間を忘れて遊び続けてしまうのでしょうか? それでは、今回もまたゲームシステムの発展の歴史を調べつつ、このテーマについて考えていくことにしましょう!

「なぜ、人はゲームにハマルのか?」バックナンバー


ゲーム史に残る画期的な発明! その名は「中間ポイント」

 初期のビデオゲーム、主にアクションゲームでは途中でミスをするとスタート地点に戻され、また最初の状態からやり直しになる作品が多かったというのが筆者の率直な印象です。

 有名タイトルを例に挙げますと、1980年に任天堂が発売したアーケード用アクションゲームの「ドンキーコング」では、主人公のマリオをゴール地点まで連れて行くとステージクリアとなりますが、途中でミスをした場合は開始直後であろうとゴールの一歩手前であろうと必ずスタート地点からリスタートします。

 アイレムやハドソンなどが発売したアクションパズルゲーム「ロードランナー」シリーズは、マップ内にあるすべての金塊を集めてから脱出するとステージクリアとなるルールになっています。ステージによっては金塊が大量に出現したり、非常に難解なパターンを解明しなければいけない場面が多々出てきますが、もし途中でやられてしまうとそれまでに集めた金塊はすべて没収され、最初の状態からやり直しになってしまいます。また本作については、途中でのミスを一切許さないルールにすることで「パズルを完全解明した者しかステージクリアは認めない!」という開発者からのメッセージを発信する意図もあったのではないかと推察されます。

画像画像画像

画像画像画像 「ドンキーコング」や「ロードランナー」など、昔のアクションゲームはミスをするとスタート地点からやり直しになるのはごく当たり前のことでした
※いずれもファミリーコンピュータ版を使用
(C)1983 Nintendo
(C)1984 PUBLISHED BY HUDSON SOFT CO., LTD. UNDER LICENCE FROM BROADERBUND SOFTWARE, INC.

 やがて時代が進むにつれてコンピュータの性能やプログラム容量が向上し、ゲームの内容もどんどんボリュームアップするようになると、1画面内には収まり切れないほどの広大なマップを持つゲームがたくさん登場するようになりました。このようなゲームにおいては、もしこれまでどおりにミスをするたびにスタート地点まで戻されるルールのままだと、プレイヤーにとっては「今までの苦労がパーになった!」「時間がムダになった!」などと大きなストレスとなり、場合によっては絶望感のあまりゲームをやめてしまうことにもつながりかねません。

 そこで誕生したアイデアのひとつが、中間地点を通過後はどこでミスをしても必ず中間地点からリスタートする「中間ポイント」を設置するシステムです。これによって、途中でミスをしたプレイヤーにも「あともう少し頑張ればクリアできるぞ!」と、モチベーションをある程度維持させる効果があるというワケですね。

 このシステムを利用した分かりやすい例は、任天堂が1985年に発売したファミリーコンピュータ用ソフトの「スーパーマリオブラザーズ」。本作では、各ワールド(ステージ)の前半でミスをした場合はスタート地点からやり直しになりますが、後半以降の地点でミスをしたときは、「中間ポイント」からリスタートするようになっています(※)。

 このシステムは以後のシリーズ作品にも継承され、現在では昨年発売されたニンテンドー3DS用ソフト「スーパーマリオ3Dランド」などのように、「中間ポイント」に旗などの目印を作ることでプレイヤーにその存在がより分かりやすくなるように配慮されています。

※筆者注:ただし、各ワールドの最終面にあたるクッパ大魔王との対決ステージ、および最後の8ワールドの各ステージには中間ポイントがなく、ミスをすると必ずスタート地点からやり直しになります。
画像画像画像 「スーパーマリオブラザーズ」の時代から、実は「中間ポイント」のシステムはすでに存在していました
(C)1985 Nintendo

 また、1986年にハドソンが発売したファミリーコンピュータ用ソフト「高橋名人の冒険島」では、スタート地点を進むごとに「1」「2」「3」という数字の書かれた立て札が登場します。一見何でもない絵のようにも見えますが実はこの立て札、スタート地点からの距離を表すのと同時に「中間ポイント」と同じ役目も果たしており、もしミスをした場合は直前に通過した数字の書かれた地点からリスタートするようになっているのです。以下のプレイ動画で、どこに立て札が置いてあるのかを実際観察してみてください。もし途中でミスをした場合でも、スタート地点まで戻されずにリスタートするといかに便利なのかが理解いただけることでしょう。

 さらに、1991年にメガドライブ用ソフトとして発売されたセガを代表するアクションゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホック」では、ステージ中にいくつものポイントマーカーと呼ばれる目印を配置しています。主人公のソニックがこれに触わると効果音が鳴って青から赤に色が変わり、もしこの後ミスをした場合は直前に触れたポイントマーカーのある地点からゲームが再開されるという仕組みになっています。このアイデアがどれだけありがたかったのかは、実際に本作を遊んだことがある人であれば骨身(ソニックだから「針身」という言うべき!?)にしみてよくお分かりのことと思います。

 このように、アクションゲームにおいては「中間ポイント」の存在によってプレイヤーがミスをしたときのストレスが大きく軽減され、なおかつテンポよくゲームを進めことができるようになるのです。「スーパーマリオ」や「ソニック」シリーズがこのシステムを採用していなかったら、あれほどの記録的な大ヒットにはもしかしたらなっていなかったかもしれませんね……。

「高橋名人の冒険島」
(C)1986 HUDSON SOFT

「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」
※Wiiバーチャルコンソール版を使用。
(C)SEGA

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