絵本をめくるように物語を楽しむRPG:「Riviera〜約束の地リヴィエラ〜」レビュー(1/3 ページ)
過去にワンダースワンカラーとゲームボーイアドバンスで発売され、隠れた名作との呼び声も高い「Riviera」が、今度はPSPで登場。携帯ゲーム機でプレイすることを前提に考案された独自のシステムは、まるで絵本のページをめくって物語を読み進めるような感覚で楽しむことができ、他のRPGとはひと味違う。
フルボイス化とイベントCGの増量で物語の深みが増した印象に
PSPというと、プレイステーション 2などからの移植やリメイク作品が目立つせいか、「据置型ゲーム機のゲームがほぼそのままのクオリティで遊べる携帯ゲーム機」というイメージが強い。それだけ携帯ゲーム機の中でも性能が高いという証であるし、PSPにとって最大のアドバンテージでもあるが、一方で「携帯ゲーム機ならでは」と感じられる作品にやや乏しいような気がしていた。
その点でいえば「Riviera〜約束の地リヴィエラ〜」(以下、Riviera)は逆で、過去に別の携帯ゲーム機で発売されていた作品をPSP向けにリメイクしたもの。元々は、2002年にワンダースワンカラー専用(スワンクリスタルにも対応)ソフトとして発売されたもので、当時こそあまり話題にならなかったが、できの良さから一部のゲームファンには注目されていたようだ(私も当時は全く知らなかった……)。転機となったのは、その2年後にキャラクタービジュアルなどを一新したゲームボーイアドバンス版が発売され、これが好評を博してファン層が広がった。そしてさらに2年を経て、今回のPSP版発売となった。
この「Riviera」を開発したのは、スティングという会社。スティングの名を世に知らしめたのは、1998年にセガサターンで発売された「バロック」(後にプレイステーションにも移植)というRPGだろう。詳しくは割愛するが、あまりにも奇怪でディープな世界観に圧倒された一作で、今でも深く記憶に残っている。「Riviera」とは関連のない作品だが、現在でもPS用の廉価版が入手できるはずなので、興味を持たれた方はこちらもぜひ一度プレイされたし。
本題に戻って、今回のPSP版「Riviera」での変更点を挙げると、まずは豪華声優陣によるフルボイス化が大きい。UMDの大容量を活かして、戦闘中はもちろん、イベントシーンでのキャラクター同士の会話や、プロローグなどのナレーションに至るまで、テキストの全てに音声が充ててある。また、折々で挿入されるイベントCGが新たに50点ほど描き下ろされ、総数約90点と大幅に増量されたことにも注目。ストーリーそのものに大きな変更はないが、ボイスアクトとイベントCGの追加でより深みが出てきた印象を受ける。
「Riviera」の中で描かれているのは、RPGの王道ともいえるファンタジックな世界。プロローグでは、まず「Riviera」本編に至るまでのバックストーリーが、幻想的なビジュアルとともに語られる。かいつまんで紹介すると、過去に神界と魔界との間で長く激しい戦いがあり、神々はかろうじて魔族の封印に成功するも、自らもまた滅んでゆく。その際、神々は力と叡智の全てを神界の果てにある「リヴィエラ」という島に遺し、精霊たちに託した。それから千年の時が過ぎて、リヴィエラで魔族復活の兆候が確認される。神々の亡き後、神界を統率してきた「ゴートの七賢」は、魔族の侵攻から神界を守るべく「神罰」の発動を決断し、魔族が巣くうリヴィエラを精霊もろとも破壊しようとする。その任を命ぜられた二人の“告死天使”レダとエクセル(主人公)は、神罰を発動するためリヴィエラへと向かう……。
フィールド上でキャラクターを歩き回らせないRPG
ゲーム本編は章立てになっていて、各章は「1-1」といった枝番号で区分けされた複数のマップで構成されている。必ずしも枝番号の順にストーリーが進むわけではなく、時には番号が前後する形でマップを移動することがあったり、特定の要件を満たしていないと進めないマップもある。
第1章では、主人公のエクセルと先輩格と思しきレダの二人がリヴィエラへ向かうまでを描いているが、これはチュートリアルも兼ねていて、折に触れて操作方法を解説してくれる。このおかげで、マニュアルに目を通さずゲームを始めても操作に迷うことはなく、好意的に受け止めるなら親切設計といえるが、個人的にはちょっと興がさめる。ゲームの登場人物に「SELECTボタンを押すと」などと説明されると、どうもゲームの世界観に浸るのを妨げられるように感じる。
「Riviera」で特徴的なのは、キャラクターの移動や探索といった動作が方向ボタンを1つ押すだけと、極めて簡略化されていること。画面上に「GO」と書かれたマークと同じ方向のボタンを押せば次のマップへと移動し、「BACK」の方向と同じボタンを押すと元のマップへ戻るといった具合。まるで、絵本のページをめくるような感覚だ。マップ上で探索できる場所もあらかじめ決まっていて、○ボタンでQUESTモードに切り替えると、探索ポイントが方向ボタンのマークととも表示される。一般的なRPGのように、広大なフィールドをうろうろと歩き回ったり、アイテムを見つけるために茂みの中をやみくもに探したりする必要がない。
このようなシステムを携帯ゲーム機のRPGに取り入れたことが、アイデアとして優れていると思う。実際にプレイしてみると、RPGというよりはアドベンチャーゲームに近い感覚で、移動のために方向ボタンをせわしく押すことがない分、携帯ゲーム機でもストレスを感じにくい。また、探索ポイントがあらかじめ決まっていることに、初めは「“冒険している”という感覚に乏しいのでは」という気もしたが、ここにもちょっとした工夫が見られる。探索ポイントは無条件に探索できるわけではなく、一部は「TP(トリガーポイント)」と呼ばれるポイントを消費するため、TPの残量がなくなると探索できない(TPは戦闘によって補充できる)。それに加えて、ある場所を探索したかどうか、あるいはどの順番で探索したかなどによって、その後の展開が変化するというのもおもしろい。
移動の途中や探索時に予期せぬハプニングが起こることもあって、気が抜けない。例えば、宝箱の一部にはトラップが仕掛けてあり、それを開けようとすると「アクショントリガー」が発動する。画面上に表示されたコマンドを制限時間内に正しく入力するものや、ボタンをひたすら連打するものなど、アクショントリガーにはさまざまなタイプがあり、成功すると危機を回避できる。失敗してもすぐさまゲームオーバーとはならないが、HPの最大値が一時的に数パーセント減少したり、アイテムを取り損ねたりと、何らかのペナルティが課せられてしまう。どこで出てくるかわからないアクショントリガーが緊迫感をもたらし、ゲームの流れを引き締めている。
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