レボリューションのコントローラにはまだ秘密がある――「ゲームデザイン・テクノロジーの今と未来」:国際シンポジウム「インタラクティブ・エンタテインメントの歴史と展望」:(1/3 ページ)
12月2日、京都の立命館大学衣笠キャンパスにおいて開催された「インタラクティブ・エンタテインメントの歴史と展望」の第2部では、「ゲームデザイン・テクノロジーの今と未来」と題して任天堂の宮本茂氏やコナミの小島秀夫氏が登場した。
武邑光裕氏による基調講演、そして第1部の「ゲームデザイン・テクノロジーの源流」に引き続き、第2部ではエンターブレインの浜村弘一氏によるコーディネートのもと、任天堂の宮本茂氏、Valveのロビン・ウォーカー氏、コナミの小島秀夫氏によるディスカッションが行われた。
コントローラの変遷を紐解き、ゲームの将来像を映し出す
最初の講演者である任天堂専務取締役情報開発本部長 宮本茂氏は大きな拍手の中、コーディネートを務めるエンターブレインの浜村弘一氏に招かれた。「スーパーマリオブラザーズ」や「ドンキーコング」「ゼルダの伝説」などを生み出した宮本氏は、ゲームのインタフェース――コントローラの変遷を追っていくことで、家庭用テレビゲームの過去と未来を語った。
第1部に登壇した上村氏はファミリーコンピュータが登場するまでを紹介したが、宮本氏はそれを受け、それ以降の任天堂のゲーム機の歴史を紐解いてみせる。入社当時の宮本氏は、小さな親切運動と称し、当時工業デザイナーが使いたがる横文字を見つけては、これはユーザーが使うものだからと日本語を使うようと「セレクト」「電源」というように置き換えていったという。
上村氏もエピソードとして挙げた「ブロック崩し」は、入社2年目の宮本氏がはじめて手がけたデザインとなるのだが、自身が左利きだったこともあり、利き手に関係なくゲームが楽しめるよう、前からでも後ろからでも使えるという人間工学的に配慮した作りになっていると説明する。こうして宮本氏によるコントローラを視点としたゲームの変遷が語られた。
筐体のデザインをしていた宮本氏は、アーケード版の「ドンキーコング」を例に出し、インタフェースに注視する。ジョイスティックとボタン1つのシンプルな構成であったが、当時左右反対のジョイスティック配置があったり、ボタン2個だけのものなど、さまざまな形態があった操作系が、ジョイスティックは左側、ボタンは右側という流れに定着しつつある時代だったと振り返る。
ここで話はゲーム&ウォッチ(G&W)へと進む。アーケードの「ドンキーコング」が売れたことによって、ゲーム&ウォッチ版の「ドンキーコング」を作ることになり、最大の問題点となるジョイスティックの処理に話が及ぶ。ゲーム&ウォッチは左右にボタンがあるだけのシンプルなデザインとなっているが、「ドンキーコング」ではジョイスティックを十字ボタン(十字キー)に落とし込むことで問題を解決したのだ。
この十字キーがファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)へとつながっていくことになるのだが、ゲーム&ウォッチの際は喜んでくれたのだが、いざファミコンで採用することになると、こぞって反対意見が出たそうだ。
以前のものに慣れ親しんだ者にとって、インタフェースを変えられることは、ひどく保守的にさせるものだという。とはいえ、2人プレイを実現させるためには、2つのコントローラをコンパクトにする必要があり、十字キーを採用することは自明の理があった。
また、当時のゲーム機はどれを押したらゲームが始まるのかがわからないものばかりだったため、ファミコンではリセットボタンが本体にあったり、スタートとセレクトボタンをコントローラに収めたりと、誰もが簡単に理解できる仕様にしなくてはならなかったと述懐する。そんな分かりやすいファミコンですら、そろそろボタンは2つになる転換期を迎えており、これまでゲームを作っていた人と、これからゲームを作る人の間で葛藤が始まったのだと明かす。
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