なぜ、「科学」はウソをつくのか

「竹内薫ファンの人はおもしろいかもしれない」という感想。理由は、竹内さんのこれまでの著作や発言を追っていないと、本文中で省略されている部分がわからないから。

1章は主にマスコミにおける科学音痴についてかかれている。竹内さんがワイドショーで科学コーナーを担当していた時にひどいめにあったというところを中心に話がされているのだけど、そこのひどいめにあったというエピソードがざっくりしすぎて、単なる文句に見えてしまう(文系と理系の対立を煽るような書き方もちょっとなぁと思うところ)。2章は科学ライターとなった軌跡と科学ライターの初期に騙されて執筆してしまった擬似科学本のせいで科学者の道が立たれたという話。どうも、そのとき科学者から擬似科学側の人間として激しく攻撃されたのでネガティブな思いがあるのらしいけれども、どうしてそのように思うにいたったのかが省略されているので、共感できない(擬似科学を批判している科学者に対して「あの人たち暇なのかな」という感想はいかがなものかと)。

3章以降は科学ライターとしての本領を発揮されており、いろいろと新たな知識が得られて楽しかった。特にペットの殺処分の話はまったくしらなかったので大変興味深く読めた。

この本で一番おもしろ勝ったのは著者の「アメリカで科学ファンが多い理由は、アメリカでは科学が常に宗教と本気バトルをしなければならず、その勝負を見て、科学側に立つことを決めた人が多いからだろう」、一方で「日本は科学に敵がいなかった結果として関心を持たれないようになってしまった」というもの。そういう意味で、今回の事業仕分けから見える「国民は科学なんて欲していない」という事実は、日本における科学の最強の敵で、本気バトルの相手なので、これを通して科学側に立つ人が増えるのが期待できるかもしれない。