プレゼンテーションはテクニックである。そう言い切るのは、日本マイクロソフトのエバンジェリスト西脇資哲氏。IT企業だけでなく、製造業・金融業・官公庁での講演やプレゼン講座を幅広く手がける、IT業界屈指のカリスマプレゼンターだ。
執筆活動も積極的に行っており、最新刊「プレゼンは『目線』で決まる」(ダイヤモンド社)は発売前からアマゾンベストセラー入りしている。その出版を記念して、西脇氏によるプレゼンセミナー「ドローンを学ぶ女子部」(Windows女子部×「目線で決まるプレゼン」特別企画) が日本マイクロソフトで開催された。
▲日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリスト業務執行役員 西脇資哲氏
日本経済新聞でも紹介されたIT「伝道師/エバンジェリスト」。1996年から日本オラクルにてプロダクトマーケティングおよびエバンジェリストを13年間歴任。現在はマイクロソフトにて多くの製品・サービスを伝え広めるエバンジェリスト。企業・イベントでの講演以外にも、文部科学省より指定を受けたSSH(スーパーサイエンスハイスクール)での講座や多くの大学での講座・公開講座、さらには小学校や中学校でのプレゼンテーション授業を実施している。著書に「エバンジェリスト養成講座~究極のプレゼンハック100~」「エバンジェリストの仕事術」などがある。
西脇氏が伝授する「今、流行の最新スライドテクニック」8選
西脇氏は著書「プレゼンは『目線』で決まる」の中で、プレゼンの3つの要素であるスライド・シナリオ・トークについて解説している。今回の参加者が全員が購入済だったこともあり、セミナーでは著書には書かれていない「今、流行の最新スライドテクニック」が披露された。その中からちょっとしたテクニックで流行りのスライドが作成できるテクニックをいくつか紹介しよう。
1.スライド作成のトレンドを知る
まずは、さんさというりんごを紹介するこのスライド画像。タイトルのフォントがポップ体でピンクだったり、さんさとは関係なさそうな外人の子供の画像、強調するコピーに爆発型の図形、メッセージを読み込ませる構成だ。昭和世代のスライドにありがちなパターンである。
対して下図のスライドは、画像をスライド画面目いっぱいに配置している。伝えたい内容を「書く」のでなく、「魅せる」ことで伝えるスタイルだ。そして、上のスライドと比べてタイトルや文中のフォントが細い。西脇氏いわく、フォントは最近は細いフォントが流行っているとのこと。これまではPowerPointといえば、メイリオかMS明朝だったが、Windows10時代は游ゴシック体や游明朝体が主流になっていくそうだ。
また、箇条書きを入れる場合は、「●」ではなく、「■」を使うのがトレンド。キーワードは目線がいくように強調し、重複表現があれば削除する。画像は背景を削除するか、背景全体に使うのが平成世代のスマートなスライドだ。
最新トレンド★ポイント
■ ポップ体フォントは使用しない
■ クリップアートから写真へ
■ 伝えたいことを「書く」から「魅せる」へ
■ MSゴシック/MS明朝から游ゴシック/游明朝へ
■ 箇条書きの記号は 「●」丸から 「■」四角へ
■ 重複表現をなくす
■ キーワードの強調
■ 画像は背景を削除、もしくは全て背景が画像
2.グラフ表現は「イン」と「シンプル」がトレンド
グラフ表現に関しても、トレンドが変わってきているという。昭和世代におなじみなのは、Excelで作成される原色そのままのグラフ。判例が外側に配置されており、メモリが設定されるパターンだが…。
最近のトレンドは、 グラフの色はシャーベットカラー。メモリの表示も少なく、判例も内側に配置されている。これは目線を散らさないよう、シンプルにするためのポイントだ。
さらに、Windows10から無料ダウンロードできる「アイコングラフ」という機能を使えば、下図のようなピープルグラフやマネーグラフなども簡単に作ることができる。
最新トレンド★ポイント
■ 表現したい要素だけをシンプルに(軸もなし)
■ 色が原色/多色から「シャーベットカラー」に
■ 目線を散らさないように「凡例/説明も中」に
■ 棒グラフから「アイコングラフ」に
■ 伝えたいことが分かる表現方法に
3.フォントだけでも意味が伝えるようにする
前述のとおり、プレゼンのスライドで重要な一つに、フォントの選び方がある。例えば「戦争の恐怖」を伝えたいのに、ポップ体フォントだったり、ピンクなどの明るい色を使ってしまってはまったくそれが伝わらないものになってしまう。
内容の深刻さや悲惨さを伝えたいときは、やはり明朝体などを使ったほうが効果的だ。
最新トレンド★ポイント
■ 伝えたいこととフォントを一致させる
■ フォントの種類、色、効果(囲み)
4.手書き文字による表現をする
西脇氏おすすめの手書きフォントも紹介された。無償でダウンロードすることができ、自然でカジュアルな表現に最適なのだとか。
最新トレンド★ポイント
■ おすすめ手書きフォント(無償)
■ 自然でカジュアルなプレゼンや口語を含むプレゼンに最適
5.クリップアートではなく、全体写真を活用する
これまでPowerPointで重宝されていたクリップアートが、Windows10からは廃止されることはご存じだろうか。
そこで、今後はより効果的に伝わる「画面全体に広がりのある写真を配置する」テクニックを活用してみよう。文章よりも体言止めで表現するほうが、目線が散らず、効果的に伝わるというアドバイスも。
最新トレンド★ポイント
■ Microsoft は Officeクリップアートを廃止
■ アイコンもしくは写真による表現へ
■ 全体写真、広がりのある写真が効果的
ちなみに、背景に文字が存在する場合や、背景と文字の色が類似している場合、背景に奥行きを持たせる場合は、背景画像に半透明マスクを付けて文字を分離すると、グッと見やすくなる。
6.強調部分の表現方法を工夫する
スライドで強調したい箇所があった場合、従来よく使われていた爆発型の図形挿入。やぼったく、見にくいだけのスライドになっていることが多い。
最新トレンドは「手書き風のハイライトを入れる」こと。これなら背景も邪魔せず、色も多用されない。すっきりと強調ポイントだけに目線がいく。
最新トレンド★ポイント
■ “爆発“型の図形挿入から手書き風のハイライトへ
■ 背景を邪魔しない、色を多用させなくて良い
7.キャプション位置のトレンドを知る
写真のキャプション位置にもトレンドがあるという西脇氏。これまでは写真の下にテキストを配置するパターンが一般的だった。
最近は、画像の中にキャプションを配置するパターンが多いのだとか。
さらに今、流行りなのは、画像の上部のサイドに配置すること。たしかに、このほうが何の写真なのかが一瞬で伝わるテクニックだ。
最新トレンド★ポイント
■ 「画像の下」→「画像の中」→「画面上部サイド」
■ 文字と画像が一体化したキャプション
8.イラストから写真、ページ番号の工夫をする
ページ番号の表記についてもトレンドがあるという。これまでは●/●ページといった数字を入れるのが一般的だったのではないだろうか。
これまでも紹介してきたとおり、伝わりやすい内容に即した画像を全体的に配置することはもちろん、ページ番号は下図のようなページポジション/インジケーターを使うのがトレンドなのだとか。
最新トレンド★ポイント
■ スライド全体を意味する写真の活用
■ ページ番号からページポジション/インジケーターへ
セミナーでは今回紹介しきれないほどのプレゼンノウハウやテクニックが紹介されたが、冒頭で紹介した著書「プレゼンは『目線』で決まる!」には、さらに役立つ情報が紹介されている。プレゼンテクニックを磨きたい方にはおすすめの一冊だ。
「プレゼンは『目線』で決まる!」 著者: 西脇資哲 出版社:ダイヤモンド社
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取材・文:馬場美由紀 撮影:刑部友康 資料協力:西脇資哲氏