英語で挫折した私が、英語を仕事で使えるようになった学習法
年末になり、来年の目標を考える時期になりました。なかには、「そろそろ英語もちゃんと勉強しないと。でも何度も挫折してきたしな……」という方もいるかもしれません。
私は長く欧米企業で働き、キャリアの後半は日本法人ではなく、グローバル組織に所属し、上司も部下も外国人という環境で働いていました。年間の約3分の1を海外で過ごし、メールやミーティングなどコミュニケーションの7割ほどが英語だった時期が何年も続きました。
ただ、私は帰国子女でもなければ、留学経験があるわけでもありません。一般的な学校教育以外で英語を学んだ経験はまったくないこともあり、就職してからも英語を使う場面ではかなり困っていました。新卒で米国企業に入ったことで、海外で仕事をする機会も多かったのですが、本当に限られた業務上のやりとり以外は「ほとんどわからない」という状態でした。
そんな私がいよいよグローバル組織に異動となって、日常的に英語が必要になったのは30代半ばのこと。切羽詰まって本格的に英語の勉強を始めました。
AIが発達して、読み書きを中心に基本的な翻訳にはまったく困らない時代になりましたが、それでもインターネット上の情報において日本語の情報はわずか3%以下ですし、日本人は世界の人口の1.6%に過ぎません。英語でコミュニケーションができることで得られる情報やチャンスは、まだまだあるといえるでしょう。
今回は、英語に本当に苦しんできた私が実践した「英語力を伸ばす方法」を解説します。
◇会話のボキャブラリーを増やす
英語を話せるようになるためには、3つの要素があります。
①文法
②ボキャブラリー
③発音
このうち「①文法」に関して、仕事で使う範囲という意味では、日本の学校教育で学ぶ英文法のレベルで困ることは基本ないと思います。こちらがネイティブではないことは相手もわかっているので、文法の間違いがあっても、ある程度は許容してくれるものです。
多くの日本人が最初に直面する問題は、「②ボキャブラリー」です。私が英語を勉強し始めたときに痛感したのが、「勉強で使うボキャブラリー」と「会話に使うボキャブラリー」とではまったく異なるということでした。
「いくらレッスンを重ねても、質問されたときにとっさに言葉が出ない」という状況が続きました。落ち着いて考えると徐々に言葉が出てくるのですが、考えている間が沈黙になると、どんどんプレッシャーがかかってパニックになってきて会話が続きません。そうなると、英語を話すこと自体が億劫になってしまいます。
そこで私が学んだのは、「とっさの時間稼ぎに使えるボキャブラリーを増やす」ことです。
会話のなかでとっさに出てくる言葉は、きちんとした文章というわけではなく、次のような「ちょっとしたフレーズ」です。
「なんて言ったらいいかな~」→ How can I say~
「ちょっと待ってね……」 → Hold on ~
「ちょっと考えてみるね」→ Let me see ~
「ちょっとそれやってみようか」→ Give it a try~
こういった、とっさの会話で使えるボキャブラリーは学校教育であまり学びません。
いくつかの言い回しを覚えておくと、いろんな場面で使えて便利ですし、「すぐに言葉が出なくて混乱する」という状況も回避できます。ネット上の英語の動画や英会話レッスンなどでもたくさん紹介されているので、よく取り上げられているものを中心に覚えていくのがおすすめです。
◇リスニングを鍛えるなら「話すこと」が大切
次の問題は、「③発音」です。よく「たくさん英語を聞くことで話せるようになる」といわれますが、私の経験上、英語をただ聞いていてもなかなか上達しないものです。
英語には日本語にない独特の発音があります。とくに日本人にとってハードルが高いのが、「リエゾン」と呼ばれる、単語と単語をくっつけて発音する方法です。
たとえば、「909-5068」という数字を普通に英語で発音すると、「ナイン オー ナイン、ファイブ オー シックス エイト」となりますが、実際には「ナイノーナイ、ファイボーシックセイト」というイメージで発音されます。
実際、2つ目の発音で読んでみると、より英語っぽく聞こえるはずです。こういう発音は日本語にはないので、自分で発声してみることで音を覚えておかないと頭に入ってきません。
リエゾンもある程度パターンがあるので、英会話のレッスンなどで基本パターンとその発音方法を練習しながら、発音の間違いをチェックしてもらい、自らどんどん話すようにしてみてください。自然と発音パターンに慣れて聞けるようになっていくはずです。
◇一定期間まとめて勉強する
私は英語しか勉強したことがないので、たくさんの言語を話す人の勉強方法はわかりませんが、自身の経験として、言語の習得は自転車に乗る練習と近いと感じています。ある一定のレベルまで達すると、その後は数年使わずにいても、また少し練習したら戻る。しかし、一定のレベルに達する前に勉強をやめてしまうと、またゼロに戻ってしまう。こういう感覚です。
実は、私が英語を勉強したのは、30代が初めてではありません。20代のときも何度か一念発起して英会話スクールに通ったり、英会話のラジオを聞いてみたりしました。ただ、いずれも上達を感じられずに、数カ月でやめてしまっていました。
30代になって仕事上、英語から逃げられなくなって勉強を続けていると、最初はやはりなかなか上達しなかったのですが、1年くらい経って「英語を使えるようになってきたな」と感じるようになりました。そしてそこから1年ほどで、さらに上達のスピードが上がりました。
つまり、勉強を始めて間もない時期は、なかなか成長実感がないものの、自分のなかにボキャブラリーや発音パターンが蓄積して、話す量が増えてきたタイミングで、いろんな情報がつながってぐっと伸びてくる。そんなイメージです。
そういう意味では、英語の勉強は、成功体験を短期間で得にくく、継続がもっとも大きなハードルかもしれません。単に聞くだけではなく、自分が話す機会のあるスタイルで、継続することがとても大切。というのが実感です。
私の場合、毎日短時間で、話す量を確保できるオンラインの英会話レッスンを3年くらい続けて、「かなり違ってきた」という感覚を得ました。
英語の勉強は挫折を経験してきた人も多いと思います。ただ日本人にとって、学校で英語の基礎文法をしっかり学んでいるのは意外とアドバンテージで、ゼロから他の言語を学ぶよりは効率が良いものです。「いつか勉強しないと」と思っている方は、来年の目標の1つとして、これまでとは考え方や勉強方法を少し変えて、年末年始にぜひ始めてみください!
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