焼鳥チェーンの鳥貴族対鳥二郎の争いに関する過去記事で、「鳥二郎ロゴの商標登録(5698660号)に対して鳥貴族側が異議申立を行なっており、現在進行中」と書きましたが、その決定が出ました。鳥貴族側にとっては残念でしたが申立は認められず、鳥二郎ロゴ商標登録が維持される結果となりました。念のため書いておくと、これは鳥貴族が特許庁に鳥二郎の登録商標を取り消すよう申し立てた件の話であって、鳥貴族と鳥二郎の間の裁判の話とはまた別です。
異議申立の審判番号は2014-900320です。J-PlatPatの審決速報メニューで文献番号に2014-900320を入力すると異議の決定を見ることができます(固定リンクが張れないので本当に不便ですね)。
鳥貴族側が主張した論点は簡単に言うと以下の4つです。
1. 先願の文字商標「炭火串焼き 鶏ジロー」と類似なので取り消されるべき(商標法4条1項11号)
2. 先願の図形商標(以下参照)と類似なので取り消されるべき(同4条1項11号)
3. 鳥貴族の業務と混同を生じるので取り消されるべき(同4条1項10号および15号)
4.鳥貴族による先登録商標(以下参照)と類似なので取り消されるべき(同8条1項)
結局、上記の4点とも認められなかったわけですが、個人的には1. の判断はちょっと微妙な気がします。読者の方にとって特に興味深いのは3. と思われるので以下に決定の関連部分を引用します。
鳥貴族側は以下の理由により出所の混同を主張しています。さすがに「鳥貴族」と「鳥二郎」が標章として似ていると主張するのは無理筋と思われるので、消費者が混同している点を主張しています。
しかし、特許庁側は、以下のようにこの主張を退けています。
「鳥貴族」と「鳥二郎」が、標章として明らかに非類似なのでしょうがないと言えましょう。なお、鳥の文字デザインにしても「本件商標の指定役務である飲食物の提供に係る業においては,「鳥」の漢字をデザイン化してのれんや看板等に表示し,「トリ」の読みをもって使用されている実情が看て取れるところである。」と述べられており、類否判断には影響なしとされました。
ということで、鳥貴族側については残念なことになってしまいましたが、鳥貴族商標の周知著名性については認定されましたので、不正競争防止法で争っている裁判の方で勝訴(あるいは有利な和解)の可能性もないことはないと思います(登録商標の仕様でも不正競争に該当するとした裁判例もありますし)。