あまりに恥ずべき安倍・ネタニヤフ会談―米国も呆れる「アパルトヘイト国家」イスラエルとの関係強化の愚
やはり安倍晋三首相は日本のリーダーとするにはあまりに恥ずべき存在だ。昨日、来日したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談し、日本の国家安全保障局とイスラエルの国家安全保障会議との会合を行うことで合意。防衛当局間の交流も進め、自衛隊幹部をイスラエルへと訪問させるという。イスラエルのあまりの暴挙の数々に、最大の支援国である米国ですら、イスラエルとの距離を置きつつある中で、安倍首相の言動は国際的にも奇異に映ることであろう。
◯「アパルトヘイト国家」イスラエル
安倍・ネタニヤフ両首脳が会談を行っている最中、首相官邸前では、両首脳の会談への抗議活動を行っている人々がいた。中東研究者や、中東和平を呼びかけている平和団体、パレスチナ難民支援などを行っている市民団体のメンバーらである。その中の一人、「パレスチナの平和を考える会」の役重善洋さんは「イスラエルは『アパルトヘイト国家』だとの国際的な認識が広がりつつある中で、安倍政権は何をやっているのか」と疑問を呈する。アパルトヘイトとは、狭義の意味では、かつて南アフリカ共和国で行われていた人種隔離政策及び、数々の人権侵害のことであるが、「広義的には南アフリカ共和国のことだけにとどまらない」と役重さんは解説する。1973年に国連総会で定められた、人種差別を犯罪とし、その禁止、処罰を定めた条約「アパルトヘイト犯罪条約」では、アパルトヘイトの定義を
としている。具体的には、特定の人種・民族等に属しているというだけで殺害し、身体の自由を拘束し、政治的、社会的、経済的及び文化的生活に参加することを妨げ、土地財産を没収して隔離し、アパルトヘイトに反対していることを理由に迫害する、ということだ。
「つまり、イスラエルがパレスチナの人々に対し行っていることはアパルトヘイトそのものだと言えます」と役重さんは語る。彼の見解には、筆者も大いに賛同したい。
‘08年末から‘09年頭の「鋳られた鉛作戦」、2012年11月の「雲の柱作戦」といったパレスチナ・ガザ地区への攻撃などで、イスラエル軍は、非武装、無抵抗の一般市民を虐殺し、国連の避難所や食料・医薬品倉庫を爆撃、医療関係者やメディア関係者への攻撃も繰り返した。これらの軍事作戦について、イスラエル側は「テロ掃討」としているが、一連の非戦闘員への攻撃は国際人道法に反する戦争犯罪である。戦争においても、何をやってもいいというわけではない。また、パレスチナのヨルダン川西岸地区でも、イスラエルは停戦合意に違反して、入植地を建設、元々住んでいたパレスチナ人達の家々や畑を破壊し、抗議する人々に暴行を加え、逮捕するということを続けている。こうした非人道的な行為があまりに躊躇なく行われているのを、筆者も現地取材の中で見聞きしてきた。
◯アパルトヘイト国家には制裁を
アパルトヘイト政策を行う国には、国際的な制裁が課せられる。「先日、米国のケリー国務長官が、非公開の会合で『中東和平交渉が決裂すれば、イスラエルはアパルトヘイト国家になる』と発言していたことに、イスラエルや米国の親イスラエル・ロビーは猛反発しました。それは、かつて南アフリカ共和国がアパルトヘイト政策を行っていた頃、同国に対する経済制裁や、武器輸出の禁止が行われていたからです。それと同じことが行われるとしたら、非常に大きな打撃と、イスラエルは危機感を抱いたのです。批判にさらされ、ケリー国務長官は発言の修正を余儀なくされましたが、米国においても、イスラエルがパレスチナの人々に行っていることはアパルト政策であるという認識が浸透しつつあります。例えば、昨年末、米国の大きな学術団体であるアメリカ学会が、イスラエルの学術機関に対するボイコットを行うとし、さらに対イスラエルボイコット・資本引き上げ・経済制裁などの運動(BDS運動)を支持、支援すると決議しました。国際的にも、家庭用炭酸水メーカー『ソーダストリーム』など、不法に入植地でつくられたイスラエル製品をボイコットしようという動きは広まっています」(役重さん)。
◯平和国家のリーダーとして著しい資質の欠如
本当に呆れるばかりだが、米国でさえも批判が高まっているイスラエルのアパルトヘイト的な振る舞いを、安倍政権はまるで意に介さないようだ。昨年3月、F-35戦闘機の共同開発への参加を、武器輸出三原則の例外とし、日本産の部品を組み込んだF-35戦闘機がイスラエルに渡ることを、事実上、可能とした(関連記事)。さらには、今年4月、安倍政権は武器輸出三原則自体を国会で議論することも無しに閣議決定のみで、撤廃してしまった(関連記事)。そして、今回のネタニヤフ首相との会談で、諜報・軍事分野での日本・イスラエルとの関係強化の合意。安倍政権には、アパルトヘイトが人道に対する犯罪であり、国際法の諸原則、国連憲章に反するもので、国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であるという認識が、あまりに欠如している。それは、「国際社会の中で名誉ある地位をしめたい」と憲法に謳った日本という国のリーダーとして、著しく資質を欠くということなのである。