「成功哲学」を知っても、成功できない人の最大の理由とは「強制力」?
「成功哲学」を知っても、成功できない人の最大の理由とは?
私は企業に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。本人にやる気があろうがなかろうが、企業が定めた目標は達成しなければなりません。その支援をしています。
「逆説の成功法則」~ これまでの成功法則では成功できなかった人たちへで書いたように、巷にあふれる「成功哲学」「成功法則」の書籍やセミナーで扱われている内容は、どちらかというと個人の人生において「成功」を勝ち取るためのメソッドです。したがって「成功したい」と願う人は、主体的にそういった方法論を知ろうとする気持ちがあるわけです。私がコンサルティングしているクライアント企業の従業員とは、かなり受け取り方が異なると思います。
(今回扱う「成功」という定義は、富や名声、権力を手に入れることとします。この手の「成功」に興味のない人は読み飛ばしてください)
要するに、私のコンサルティングを受ける企業の従業員は、どちらかというと「受動的」であるのに対し、「成功哲学」を知って自己啓発しようとする人は「能動的」であると想像できます。しかしながら、能動的に「成功」を願う人が必ずしも思い描いたような成功を手に入れるとは限りません。今も昔と変わらず、ごく一握りの人しかいないというのが現実です。
この要因を探るため、まずは「成功哲学」に触れた後にとる態度で、3つに分解してみます。
●「成功哲学」を知っただけで満足する
●「成功哲学」を知って成功したいが行動しない
●「成功哲学」を知って成功したいから行動する
「成功哲学」を知って満足する人たち
巨大な富を築いた成功者や、そういった人の研究者が提唱する「成功哲学」を、純粋に知りたいという欲求は、誰にでもあることでしょう。たとえばイチロー選手や、本田圭佑選手の考え方や、独特の言い回しを知りたい、知って知的好奇心を満たしたいと思う人はたくさんいるはずです。浅田真央さんが競技に臨むときはどんな考え方を持っているのか、羽生結弦さんが金メダルを獲得するまでどのような労苦があったのか。参考にして生かしたいというのではなく、トップアスリートや著名人の考え方や思考プロセスに触れたい、味わいたいという願いと同じなのです。
ですから「成功哲学」が書かれた書籍や、「自己啓発」セミナーに参加するだけで満足、という人は必ずいます。そもそも自己啓発系のセミナーや勉強会に出席する人は、やる気に満ちていたり、人生に前向きな考えを持っている人が多く、その場にいるだけで満たされることは多いものです。私にもたくさんの経験があります。
「成功哲学」を知っても行動しない人たち
「成功哲学」を知ってもうまくいかない人のほとんどは、この部類です。「知って満足する」人たちとの決定的な違いは、「知っただけでは満足しない」という点です。この部類に入る人たちは、勘違いをしているとしか言いようがありません。
私は現場に入ってコンサルティングをしています。やる気やモチベーションなど関係がありません。結果を出すことが仕事である以上、そのための仮説を立て、行動計画を作り、そのためのマネジメントサイクルを正しく実施してもらいます。長時間労働をするわけでもなく、心身ともに苦痛を帯びるようなことでもありません。粛々と当たり前のことを当たり前のようにやってもらうだけです。「やらされ感」たっぷりでも、1年でも2年でも行動をし続ければやはり結果は現れていきます。最初はやる気がなくても、結果が得られれば楽しくなりますし、やりがいも感じられるようになっていきます。だんだんと主体的な行動に変化していきます。
能動的に成功したいと考え、「成功哲学」を知り、それでも動かない人は、単純に「やる気」がないのです。今の時代、なかなか「やる気がないのだ」「怠けているのだ」と指摘してくれる人はいないでしょう。ですから悩みが迷宮入りしていきます。単純に、「自分には成功する気がなかった」と思えばいいのです。今はその気になれない、と自己分析すればよいことです。それで問題はありません。目の前の仕事、家庭のこと、子育てのこと、親の世話、地域社会への貢献など……。目先のやるべきことは、「やる気」や「モチベーション」など関係がなく、やるべきことはやりましょう。しかし、富や名声を得たい、だから「成功」したいと考え、「成功哲学」に触れた、勉強した……。でも行動することができない、というのであれば、そこまで強い気持ちがなかった、というだけの話であり、それでいいのです。
やる気を出す気がない「やる気貧乏」の人の特徴と対策でも書きました。私も英語を勉強したいと思うときがありますが、どうしてもやる気が起こりません。ですから私は勉強しません。現時点で英語ができなくても困りませんし、誰からも強制されないからです。それと同じで、方法論を知っても行動さえできないなら、その感情を放置しておきましょう。「成功」などしなくても困らないから大丈夫です。決して「成功哲学の本を読みあさり、高額セミナーに何度も通ったのに、どうして行動できないのだろうか」などと自分を責めないことです。「成功哲学を知っただけで満足、満足」と受け止めておけばいいのです。
「成功哲学」を知って行動する人たち
結局のところ「成功哲学」を知って成功する人は行動する人たちです。そして松下幸之助の名言にもあるとおり「成功とは成功するまでやり続けることで、失敗とは成功するまでやり続けないことです」。
私は企業の従業員を相手にコンサルティングしています。最初、従業員の皆さんは現状維持バイアスにかかっているため、変化を恐れ、なかなか行動を起こすことはできません。しかしながら雇用されている以上、抵抗し続けることなどできません。渋々でもやり始めます。変化し、結果を出すための行動をしていけば、時間はかかってもこれまでうまくいかなかったことが徐々にうまく回り始めます。そして面白みを覚え、主体的に動き始めるものです。会社における「強制力」がうまく働くからでしょう。
いっぽう、自主的に成功したいと願う人には「強制力」がありません。やるかやらないかは自分次第であり、「成功哲学」「成功法則」を知ってもなぜ動けないかは、後付けで理由を作ることもできます。「なかなか時間をとることができない」「この半年は忙しいから、その後に考えようかな」などと言って自主的に後回しを続けることができます。
あまりにも長い時間、行動を変えられないでいると、「もともと成功したいなんて思っていない」「成功すればいいってもんじゃないしね」と自己正当化させていきます。私はそれならそれでいいと思っています。「成功哲学」を知って満足した、と思えばいいわけで、悶々とした感情を抱えないでいただきたいと思います。
行動を移さず、なんだかんだ言いながら実は成功したいと願っている人は、ついついキラキラ系「成功法則」に流れていきます。
(※ 参考:「逆説の成功法則」~ これまでの成功法則では成功できなかった人たちへ)
もともと行動力がないわけですから、キラキラ系を知っても当然うまくいきません。無限ループにはまっていき、時間とお金を浪費していくことになります。
世の中に出回っている「成功哲学」「成功法則」で決定的に欠けているのは、どのようにして行動をスタートさせるのかという技術です。方法論だけ示して「後はやるだけです」と言われても、ほとんどの人は行動しません。私のコンサルティングスタイルもそうです。支援の8割は行動改革のための手法です。行動を変えるためにどうすべきかを、行動が変わるまでレクチャーし、実際に一緒になって動きます。リバウンドしないよう、体で覚えるまで伴走します。
「役割分担をキッチリする」「お客様にこの提案をする」「行動したらこのシートに数字を記入する」「上司に客観的データに基づいた事実を報告する」「上司は部下と数値計画についてコミュニケーションする」……といった、ごく普通の行動でも、なかなかやりません。たとえ会社の強制力があっても、これまでやっていないとやらないわけです。そう考えると、自分が思い描く成功を勝ち取るための行動は、もっともっとハードルが高くなると考えましょう。
世の中の成功者は、「やれば誰だって成功できるはず」と思い、純粋にその方法論を広めたいと思うのでしょう。しかし一握りの人しか「成功」しないのは、このような理由があるからなのです。「強制力」の有無です。自由すぎるのは、不自由なこともまた多いのです。