老衰による死亡者の人数動向、その実情を探る
直近における老衰による死亡者、死亡者率
歳と共に体が衰え、生命活動の維持が困難になることで死に至る状況を老衰(死)と呼んでいる。医療体系や高齢化の状況を推し量る一つの指針でもあるこの老衰の現状などを厚労省の人口動態調査における人口動態統計から確認していく。
まずは「老衰(死)」の明確な定義。歳をとるにしたがって体を構成する細胞や組織の機能が低下することを老化と呼んでいるが、その老化現象により生命活動能力が衰退し、生命維持が困難となり、多臓器不全で死に至った場合、それを老衰死と呼ぶことになる。厚生労働省が発行している、最新版の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルによると、死因として「老衰」が当てはまるのは、
高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います。
とある。ただし老衰から他の病態を併発しての死亡の場合は、直接死因はその病態、その病態の原因として老衰を記述することとなる。
最新値となる2015年分の年齢階級別・老衰による死亡者は次の通り。絶対人数と人口10万人対双方のグラフを生成している。後者は例えば女性の100歳以上は11.408とあるので、その年の女性10万人に対して11人強の100歳以上女性が老衰で亡くなっている計算になる。
なお調査直近年となる2015年は国勢調査も実施されており、「分母に人口を用いる人口動態諸率については、平成27年国勢調査の年齢別人口確定後に算出・公表する」との方針が示されていることから、一部の値は2014年分が最新値となっている。
女性の方が圧倒的に数・率ともに多いのは、ひとえに男性よりも女性の方が長生き(病態などで死ぬことが無く生きながらえる)するからに他ならない。老衰死亡者の動向をよく見ると、79歳までは男性の方が多く、80歳以降は女性の方が多くなる。その歳で老衰にて亡くなるには、それまで存命している、そして他の病症で亡くならない前提があるわけで、それだけ女性が長命であることの裏付けにもなる。
無論、法的、医療設備的に女性を優遇しているわけでは無い。また今件データのみから生物学上の特定要素を原因として、女性が長生きであることを裏付けたわけでも無い。
過去からの推移
全体としての老衰死の動向は次の通りで、昨今では医療科学の進歩に伴い、再び上昇を続けている。
次に示すのは、具体的データが取得可能な1999年以降における、年齢階層別の老衰を死因とする死亡者の動向。「不詳」あるいは60歳未満の老衰死亡者もごく少数確認できるのだが、今回においてはイレギュラー的事案として無視している。男女で縦軸の仕切りが異なることに注意。
今世紀に入ってからは男女ともに老衰死亡者が増加している。特に青系統(85歳以上)と一番薄い赤(80から84歳)が大きく伸びており、高齢化に伴い老衰に至って亡くなっている人が増えていることが分かる。
老衰死はある意味自然死と同義であり、生物としての耐久性・長期間の生存性が伸びている。その歳まで他の病態で亡くなることなく、細胞などの劣化・再生寿命で命の火が潰えたからだ。また同時に、医学や社会衛生環境の進歩整備に伴い、病気などで亡くなる人が少なくなったのも大きな要因ではある。
男女別では女性の方が絶対人数が多いのに加え、各年齢階級別の老衰死者数の動向でも、女性の方が高齢層による値が大きいのが分かる。つまりそれだけ女性が長生きをし、自然死により亡くなっている。
ある一定の歳で老衰を死因として亡くなるためには、その歳まで他の病態をはじめとした死因に遭遇しない(事故や事件に巻き込まれる事例も含む)ことに加え、その歳まで細胞や組織の老化が死に至るまでに進んでいないことが必要不可欠となる。例えば90歳で老衰で亡くなるには、75歳の時点で脳卒中で命を落としてもいけないし、80歳の際に交通事故で亡くなっても条件から外れるし、85歳の時点で老衰で亡くなってもいけない。
老衰者の増加、年齢の高齢化はさまざまな理由があるが、その一つに身体自身の機能の向上もあるのかもしれない。過去から現在における経年的な、高齢者を対象とした、肉体面での身体測定結果があれば、その裏付けとなるに違いない。
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