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TOMOO 多くのアーティストが絶賛する、次代を担う最注目シンガー・ソングライターの魅力

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/IRORI Records(全て)

「Ginger」が多くのアーティストから絶賛され、一躍注目の存在に

その存在は、2016年にリリースした1stアルバム『Wanna V』から作品を発表する毎に、感度が高い耳を持ったリスナーや、音楽ライターの間で注目が高まり、2020年8月に発表した「らしくもなくたっていいでしょう」のMUSIC VIDEOが短期間で100万再生を突破(現在147万再生)。そして2021年8月にリリースされたデジタルシングル「Ginger」が、Official髭男dism・藤原 聡、Vaundy、マカロニえんぴつ・はっとり、幾田りらを始め、様々なアーティストから絶賛され、一躍注目の存在になったシンガー・ソングライターTOMOO(トモオ)。

2022年メジャーデビュー。瞬く間に次代を担うシーンの最重要アーティストに。満を持して1stアルバム『TWO MOON』発売

2022年8月3日、ポニーキャニオン・IRORI Recordsから1stデジタルシングル「オセロ」でメジャーデビューをすると、瞬く間にシーンの最重要アーティストの一人として脚光を集める存在になった。毎年1月にSportifyがその年に大きな飛躍が期待されるアーティストを選出する、これまでOfficial髭男dism、King Gnu、Vaundyなど国内外から注目を集める存在になったアーティストが選ばれている「RADAR: Early Noise」にピックアップされた。そしてまさに満を持して発売されたのが初のフルアルバム『TWO MOON』(9月27日発売)だ。

「Ginger」、「オセロ」を始め、「Cinderella」などの既発曲に加え、先行シングルの「Grapefruit Moon」、「Super Ball」「窓」といった新曲を含む全13曲で構成されている、名刺代わりというにはあまりに豪華で、厚くて熱い一枚。一曲目から最後まで彼女の迸る才能を感じることができる一作になっている。

自由奔放で、ハッとさせられるインパクトと温もりを感じるメロディを、豊潤かつ芳醇なアルトボイスで歌い、その歌の成分と温度感、“真実”を聴き手に届ける一流アレンジャーとミュージシャン。もちろんその歌詞こそが最大の聴きどころではあるのだが、神は細部に宿るというが約52分の収録時間の中で、とにかくひと言ひと言、一音一音に、曲と曲の“間”に至るまで、細部にまでこだわりを感じ丁寧に磨き上げた作品であることが伝わってくる。

そのアルトボイスから感じる親近感と信頼感。“現実的な声”でひと筋縄ではいかない“現実”に浮かぶ色、揺れる感情を描き、届ける

全編を通して感じるのは、そのアルトボイスから感じる親近感と信頼感。力強い、地に足がついた、一本太い芯が通った、クール、ソウルフレーバー……彼女の声を聴いて感じたことを書き連ねてみると、全てが当てはまっていると思うし、まだ何か書き足りない気もするが、その声によって自身が綴った歌詞が圧倒的な説得力を纏い、聴き手の元に届いている。“現実的な声”で、ひと縄ではいかない“現実”に浮かぶ色、揺れる感情を描き、届ける。

体験も経験も記憶も想像も全てが境界線なく、嘘がないTOMOOという“リアル”に昇華されている。それが聴き手の心の中の、行き場のない感情の拠りどころになっている

どこを切っても名曲揃いのアルバムだが、個人的にその声と歌が耳と肌から心に“浸透”してくるような感覚になる、アルバム中盤の「17」(アレンジ/トオミヨウ)から「ベーコンエピ」(アレンジ/sugarbeans)「Cindellera」(アレンジ/高木祥太(BREIMEN))、「Mellow」と続くバラードゾーンは、歌の“浸透圧”の凄まじさを改めて感じる。

『TWO MOON』(9月27日発売)
『TWO MOON』(9月27日発売)

生活をしていく中で、白黒どちらとも割り切れないシーン、感情と向き合うということは避けられない。TOMOOの歌詞はそこを偽りなく表現する。光が当たっていてもどこか哀しみが漂っていたり、哀しみの中にいても、遥か向こうに光が射しているのを強く感じたり、光と陰、どちらにも分け隔てなく寄り添っている。そして“気づき”を素直に表現していく。その景色の捉え方には外連味がなく、心象風景、そしてTOMOOという一人の人間の内面に存在する、彼女だけの独特の抽象的な風景が、ひとつの歌詞として完成している。体験も経験も記憶も想像も全てが境界線なく、嘘がないTOMOOという“リアル”に昇華されている。それが聴き手の心の中の行き場のない感情の拠りどころになっているのではないだろうか。バラードだけではなく、どの曲も歌詞のメロディへの乗せ方が絶妙だ。そこにTOMOOの真っすぐな眼差しを色濃く感じることができる。

自身でアレンジを手がけている代表曲の、モータウンビートの弾むようなリズムが印象的なポップチューン「Ginger」は、ソウルフルでクールなボーカルが炸裂。アルバムのオープニングナンバー「Super Ball」、先行配信曲「Grapefruit Moon」のサウンドプロデュースは小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)が手がけ、跳ねるようなピアノのリズムにブラスを絡ませたファンクの薫り漂うスケール感のあるサウンドだ。

「Super Ball」では抑制を効かせたボーカルが徐々に熱を帯びていき伸びやかなボーカルを聴かせてくれ、グッと引きつけられる。この一曲だけでも彼女の声の広く深い温度感を感じることができる。「Grapefruit Moon」はTOMOOが「ストレスフルな状況の中で拭えない枯渇感や憔悴感をもったまま、どう日々を満たすか、どう自分を癒していくか」と、曲に込めた思いを語っているように、ウェットなグルーヴに乗せ、心の奥に渦巻く渇き、苦さを表現したボーカリゼーションは圧巻だ。

『TWO MOON』は豪華アレンジャー陣の競演も聴きどころ

メジャーデビューシングル「オセロ」と「酔ひもせす」はmabanua、「17」「夜明けの君へ」(映画『君は放課後インソムニア』主題歌)はトオミヨウ、「Cinderella」「夢はさめても」(ドラマ『ソロ活女子のススメ 3』(テレビ東京系)オープニングテーマ)は、要注目バンドBREIMENの高木祥太が、「ベーコンエピ」はsugarbeans、そして「HONEY BOY」はTOMOOとKOBASOLOの共同アレンジ、TOMOOの静謐なピアノが印象的な「Mellow」と、曲を彩る豪華アレンジャー陣の競演も、このアルバムのトピックのひとつだ。TOMOOの歌とメロディの本質と、行間に漂う感情までをどう音にして、物語を完成させているのかにも注目して楽しみたい。

その好奇心が基点となって、現実と心象風景を鮮やかに描いた心模様を文学的かつ親近感のある言葉で紡ぎ生まれる、独特の“スペース”と“ペース”。それがTOMOO流ポップスとして昇華され、10~20代はもちろん、幅広い世代の感性にダイレクトに響き、共感を得そうだ。

11月2日東京・EX THEATER ROPPONGI を皮切りに、来年1月末まで続く(全8公演)『TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"』を開催する。

TOMOO オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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