入社5日前に内定を取り消したのは、あの女性社長が率いる急成長アパレルだった
NHKが報じた「入社式まであと5日 突然の内定取り消し そして・・・」の当該アパレル企業が、DoCLASSE(ドゥクラッセ)だったことがわかった。
(NHKのサイト記事より一部抜粋)
入社式5日前の3月27日、突然メールが届きました。
そこに書かれていたのは、「内定取り消し」。
女性によると、この企業には25人の内定者がいてLINEのグループで連絡を取り合ったところ、ほかのメンバーにも内定取り消しを告げるメールが届いていたということです。
この企業はNHKの取材に対し、「一切お答えできない」とコメントしています。
突然の内定取り消しを受けて、女性は会社に連絡したものの人事担当者には連絡がとれませんでした。
この女性を含めて、店舗でインターンシップを行っていた内定者もおり、スタッフや本社との交流もあったという。新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、外出自粛や休業などがあり、厚生労働省からは最大限の経営努力をして内定取り消しを防ぐようにとの呼びかけもある。入社の延期という措置をとる企業も多い中で、なぜ一方的にメールで内定を取り消し、連絡が取れないような状況が生まれてしまったのか。
事実を確認すべく、林恵子CEOと岡田峰昌COO宛に取材を依頼し、質問状を送ったところ、CEO秘書兼HRグループ責任者から下記のような「回答」が返ってきた。
まず先に、この度は、アパレル業界の皆さまに多大なるご迷惑をお掛けしましたこと、
心よりお詫び申し上げる次第です。
当社としては、これまでもこの先も、あらたな取材要請に応じる予定はございません。
その真意は、我々が何かを語ることで、これ以上、ご入社予定だった皆さまに心痛をお掛けしたくない。
という思いです。
言えることがあるとすれば、全ては我々の経営力のなさが招いた結果であり、何年、何十年経とうがご迷惑をお掛けした皆さまへの謝罪の気持ちを忘れてはいけない。ということだと思っています。
社会に選ばれる会社かどうか、が今、正に問われております。
犠牲を払い、経営とは何か?を、あらためて私達に教えてくれたご入社予定だった皆さまには、
心から感謝しております。
ご要望にお応えできず恐れ入りますが、ご理解いただけますと幸いです。
ドゥクラッセは40~50代の女性に向けた婦人服の通販ベンチャーとして2007年にブランドをスタート。カタログや新聞広告などを通じて顧客を開拓し、EC、さらには積極的な店舗展開に乗り出し、10年間で売上高を210億円(「ドゥクラッセ」が156億円、シューズの「fitfit」(フィットフィット)が54億円。2017年8月期)まで急成長させた。そのタイミングで林恵子CEOは「ドゥクラッセ」を2年で倍増させ、売上高300億円突破を目指すと「拡大宣言」をしていた。
しかし、その拡大戦略が裏目に出て、利益を圧迫し、業績は赤字に。fitfitは2018年12月に雄渾キャピタル・パートナーズに売却。雄渾の創業者である櫻井歩身代表パートナーが代表取締役を務めるffホールディングスが事業を引き継いでいる(雄渾がffホールディングスを設立しfitfitと合併→ffホールディングスが存続し、fitfitは解散、というスキーム)。今も「ドゥクラッセ」と同じサイト内で販売し、林(浜)恵子CEOが継続して表に立っていることから、見た目は変わらない。が、経営が安定し、福利厚生も充実し、働き方にもゆとりが出ていると、実はfitfitチームは歓迎ムードだ。
売却益も得て、経営資源を集中してきた「ドゥクラッセ」だが、新型コロナウイルスの影響で、売上げが急失速。先行きも見通せないため、赤字会社に入ってもらうよりはと、入社5日前に内定取り消しの判断を下したようだ。
もちろん、苦渋の選択だったことは理解できるが、この対応は誠実とはいいがたい。同じ判断をするのであっても、もっと誠意のある対応の仕方があったはずだ。今いる社員を守るためにも、きれいごとは言っていられないだろうし、正義感を振り回すつもりもないが、とても残念であり、ただただ、悲しい。ファッションとファッションビジネスを通じて人々をエンパワーメントするという業界人の使命はどこにいってしまったのか。
感染者が増え、緊急事態宣言が全国に出され、自粛期間は長引いている。コロナとは長い戦いになりそうだ。withコロナ、Afterコロナに際し、倒産する企業も増え、継続した企業でも雇止めや解雇なども相次ぐだろう。けれども、有事の際こそ、経営者や企業の本質が露呈するもの。
ドゥクラッセの今春のTシャツキャンペーンのスローガン、「大人の品格」が滲んで見える……。