隠れた名作を隠れたままにしない 映画愛溢れるインディーズ映画のサブスク『DOKUSO映画館』が話題
月額980円の定額観放題の国内最大級のインディーズ映画配信サイト『DOKUSO映画館』
月額980円でインディーズ映画が観放題の国内最大級のインディーズ映画配信サイト「DOKUSO[ドクソー]映画館」をご存じだろうか。“隠れた名作を隠れたままにしない”――映画界の将来を担う若手監督が競うインディーズ映画の中には“面白い”作品が数多く存在するのに、わずか数館でたった2週間程度の上映しかできずに、人の目に触れるチャンスさえつかめない作品も多いが、『カメラを止めるな!』の大ヒットを機に、改めてインディーズ映画への注目が集まっている。そんな中でデジタル映画館「DOKUSO映画館」では、インディーズ専門ならではの他では観ることができない独自のラインナップで、隠れた名作を隠れたままにさせず、多くの人に提案してくれる。さらに『DOKUSO映画館』は、映画番組『発掘!DOKUSOシネマ』を、BSフジで10月22日からスタートさせ、インディーズ映画の魅力をより多くに人に、より深く伝えていく。「DOKUSO映画館」を立ち上げた同社代表取締役・玉井雄大氏にこのサービスへの思い、意義、そしてオンライン映画館とテレビの地上波が組むことで生まれるシナジー効果についてインタビューした。
「インディーズ映画は、時間とお金をかけて作っても、なかなか上映されない。上映できる機会と、クリエイターにお金が行き渡る仕組が必要だと思った」
「僕自身も映画のプロデューサーをやっているのですが、お金と時間をかけて作品を作っても、なかなか上映されないという状況があるので、そういう人たちに発表の機会を与えたいという思いと、よりクリエイターが儲かる仕組を作りたいと思ったのがこのサービスを立ち上げたきっかけです」。
「DOKUSO映画館」(以下DOKUSO)の“支配人”玉井氏は、サービスをスタートさせたきっかけを教えてくれた。玉井氏は前職の広告代理店勤務時代に会社からOKをもらい、個人事業主として映画プロデュース業をスタートさせた。インディーズ映画のプロデューサーを約2年間続けて行く中で、どうしても今の日本の映画界のビジネスモデルでは、映画館を持っていないと、黒字化は難しいと痛感したという。
「ミニシアターが減り、インディーズ映画を上映できるスクリーンが減っている現状。でも映画の製作本数は増えているという供給過多状態」
「まずある程度完成した状態の映画がないと、劇場さんがお話を聞いてくださらないので、そこから初めて何館で上映できるかが決まります。ということは、最終的な収益見込みがいくらになるのか事業収支を作ることができない、ゴール地点がわからないまま作品を作り続けるというリスクが生じます。しかも今はミニシアターがなくなり、シネコンが増えているので、全体として劇場自体は増えてはいますが、インディーズ映画を上映できるスクリーンは減っていっている中で、映画の製作本数だけは増えているという供給過多の状態になってしまっています。劇場が空いていなくて、完成した映画を持っていっても、上映できるのは大体半年後。例えば製作費2000万円くらいで映画を作っても、結果上映できた劇場が3館で、2週間100席の劇場が満席だとしても、1劇場あたり数十万の収益しか入ってきません。最初から負けが見えている戦いで、数千万の借金を抱えてしまうみたいなことがザラに起きていて、一作だけで力尽きてしまう人も多く見てきました。これは、いわゆる劇場側の立ち位置にならないと、この人たちはずっとしんどいままだなって思い始めて、最初はリアルな映画館を作ることも考えました。でも資金的にも絶対無理なことがわかったので、インディーズ映画に特化しているデジタル上の映画館を作ろうと思いました」。
それまでになかった新しいサービス、インディーズ映画への注目が高まっているということもあって、玉井氏の考え方に賛同する、アイディアに魅力を感じたエンジェル投資家が表れ、文化事業支援という側面から「想像以上に、思いがけず」資金が集まった。玉井氏はサラリーマンをやりながら続けるのは無理な状況となり、プロデューサー業も忙しくなってきたこともあって会社を退社し、現在に至っている。
「何も起こらないけど観た後でじわじわ感動が広がるタイプの作品は、劇場にハマりづらい。そういう作品や短編はDOKUSO向き」
日の目を見ない、全く世に出てこない作品の中にも良作がたくさんある。チャンス、きっかけさえあれば、人の心を動かすことができる作品の多くが埋没し、消えていっている。
「劇場興行を目指していくと、コンビニの棚とかと同じで、劇場も番組表という名の棚が決まっているので、なるべく2時間に近い作品を作らなければはめ込みづらいというのは、当たり前ですけどあります。また、どうしても作品の内容が大きくなってしまいます。ある意味巨篇になっていくというか、大きなメリハリ、上がり下がりがないと、わざわざ劇場で観たいと思わないので、そこのモチベーションの高さを求められてしまうところが、難しいところだなと思っていて。逆にそうじゃなくて、もっと繊細な心の動きを、何も起こらないけど観た後でじわじわ感動が広がっていくというタイプの作品は劇場にハマりづらいので、そういう作品や短編ってDOKUSOに向いてるなということを、このサービスをやり始めてから感じました」。
「DOKUSOで注目を集めた監督が、いつかメジャーな作品を撮ってくれると嬉しい」
大手映画会社はどうしても“ビジネススケール”を考えてしまう。それは仕方がないとしても、大手が掬い切れていない才能をDOKUSOが発掘し、それをきっかけに大きく羽ばたいていって欲しいと玉井氏は言う。
「DOKUSOの中にはランキングシステムがあって、そこで上位になった監督がいつかメジャーな作品を撮ってくれると嬉しいです。代理店にいてわかったことは、やっぱり大手は大手で作品を作る時は映画製作委員会を組成しないといけないので、わかりやすく名前が売れてる監督さんや原作、キャストで作らざるを得ないという側面もあるということです。DOKUSOで注目を集めた監督が、そこに選んでもらっても、製作委員会から納得してもらえるように、僕らが箔をつけることができたら嬉しいです」。
「映画監督は劇場の大きなスクリーンで流すために作品を作っている。劇場の方と一緒にやりたいと思い、取り組んでいる」
作り手へのお金の流れも透明性が担保されている。当然DOKUSOに集まってくる作品は増え、2020年1月時点では約100作品だったが、年内には500を超える作品を調達し、最終的には1000作品を目指している。
「全体の売上げの35%をキープしておいて、それを作品の視聴時間に応じて山分けするというモデルになっています。これは通常の観放題のシステムで、『DOKUSOライブ』の方はチケット制なので、個別で割分でやらせていただいています。DOKUSOが大きくなれば入るお金も増えていくので、みんなで上を目指していきたいです。現状来るもの拒まず形式で、基本的には全部上映しますというテンションでやっています。ただ、上映作品の上限を1000と決めていて、各作品への分配額が下がり過ぎないようなシステムになっています。一番誤解されたくないのは、やっぱり映画監督ってあの劇場の大きなスクリーンで流すために作品を作っているので、劇場の方と一緒にやりたいと思って取り組んでいます。どうしても敵対視されやすいのですが、そこは理解していただきたいです」。
「DOKUSO映画館」には、作品への興味をそそられる様々なサービスが用意されている。スマホやPC、タブレットなど好きな端末で観ることができる手軽さを始め、投票&ランキング機能があり、ランキング1位になった作品は無料視聴できる。そして劇場スタッフが書くPOPやピックアップ記事で、作品の魅力をさらに伝えていく。また観放題サービスとは別に、オンラインチケットを購入することで鑑賞できる「DOKUSOライブ」は、上映中はチャット機能を使うことも可能で、映画をコミュニケーション取りながら観るという、新しい文化を提案している。その初上映作品は、豊田利晃監督作『破壊の日』で10月24日、25日、31日、11月1日の17時から、通常版に加えて豊田監督と映画アドバイザー・ミヤザキタケル氏のコメンタリー付きバージョンが同時上映される。
BSフジで、「独創的な映画」を発掘し「映画界を独走」する映画人が登場する映画番組『発掘!DOKUSOシネマ』がスタート
そして作品の魅力をさらに広く伝えていくという意味では、今後大きな武器になりそうなのが、BSフジでスタートさせる映画番組『発掘!DOKUSOシネマ』(毎週木曜25時~)だ。オンライン映画館とテレビ局とがタッグを組むというのも新しい試みだ。
「番組で紹介して、その後ネットで興行するというのは、新しい取り組みだなって思います。番組自体は5分番組ですがオンエア後はそのロングバージョンをYouTubeで配信させていただくのと、その週末に「DOKUSOUライブ」で、監督のコメンタリー付きの映画を観られるという流れです」。
『発掘!~』は、毎週「独創的な映画」を発掘し「映画界を独走」する映画人に話を聞く5分のミニ番組で、濃い製作裏話を聞くことができる。メインMCはお笑い第七世代のコンビ「ゾフィー」の、映画学校の監督コースに1年間通った経験があり、映画への造詣も深い上田航平、アシスタントMCは短編映画『触れた、だけだった。/純猥談』(再生回数500万回)への出演で話題の、まつきりなが務める。
「趣味趣向を深堀りする番組は“熱”があるので、実は観やすいし、色々な方に興味をもっていただけるはず。新しい才能との出会いが楽しみ」(BSフジ担当者)
第1回目のゲストに『破壊の日』の豊田利晃、第2回は『滝を見にいく』の沖田修一、そして第3回は『カランコエの花』の中川駿、第4回は『こはく』の横尾初喜監督がそれぞれ出演する。BSフジの担当者は「今は全国公開映画と、インディーズで単館でやっている映画の二つにわかれていて、インディーズ作品の中にもいい作品は多く、それをBSフジで周知させることによって、全国で観られる環境を整えて、その才能を世に知らしめることができたら、という気持ちはあります。我々も新しい才能との出会いを楽しみにしています。趣味趣向を深掘りしていく番組は、実は観やすくて、コンテンツ自体に“熱”があるので、みなさんに興味を持って観ていただけます。映画好きだけど、映画館に行っても観たい映画をやっていないとか、大手動画配信サイトでも好みのものが見つからないとか、そういう人たちに『DOKUSO映画館』はピッタリだと思います。配信だと全国で観ることができるし、BSも全国放送なので親和性があります」と、そのシナジー効果を教えてくれた。
「目指しているのは行きつけの本屋さんのようなイメージ」
「DOKUSO映画」が最終的に目指す場所は――「やっぱり大手動画配信サービスは、いい意味でも悪い意味でも作品がいっぱいあって、ユーザーと距離感があるサービスだと思います。僕らが目指してるのは、行きつけの本屋さんのようなイメージです。そこに行くと、毎回書店員さんが書いたPOPがあって、あの書店員さんがオススメしている作品だったら、自分も趣味が合いそうとか、そういう距離感になっていったらいいなと思っています。短編も多く、通勤時間とか20分くらいで観られるものがたくさんありますし、『ぴあフィルムフェスティバル』や『東京学生映画祭』ともコラボ、交流させていただいているので、若手の才能を見つけることができる。実験的で挑戦的な内容の作品もあって、なかなか劇場では観ることができないけれど、本当に映像的に面白いものがたくさん揃っています」と教えてくれた。
映画を愛するスタッフが集めてきた独創的なインディーズ映画を、情熱と愛情を感じるプロモーションで多くの人に伝えていく。音楽もメジャーとインディーズの線引きが難しくなっているように、映画も同じだ。いいものはいいと正しい評価をするのはあくまでユーザーで、ユーザーに伝える手段が劇的に変化している昨今、「DOKUSO映画館」も名作の発信源になりそうだ。