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「専業主婦」の存在意義とは~このドラマに注目~

吉田大樹労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

安倍政権が発足して丸2年が経過し、議論の方向性はともかくとして「女性」の在り方が積極的に論じられている。

なかでも、特に焦点に当てられているのが「専業主婦」であろう。「専業主婦」に対してどのようにアプローチするかによって、女性の活躍だけではなく、少子化、離婚、子どもの貧困、虐待・・・など、様々な問題を動かすことにもつながっていくのではないかと考える。

そんな中、今年に入って、専業主婦や夫婦がテーマになったTVドラマがいくつか始まった。

「○○妻」(日本テレビ系毎週水曜22時から)

「残念な夫。」(フジテレビ系毎週水曜22時から)

「だから荒野」(BSプレミアム毎週日曜22時から)

上記のドラマに共通するのは、まさに「専業主婦」である妻に夫がどう向き合うかだ。

「○○妻」は、多忙を極めるニュースキャスターである夫を裏から助け、夫に尽くそうとするミステリアスな専業主婦の設定だ。「残念な夫。」は、育児や家事に疲弊した専業主婦の妻をフォローするため、こてこてな感じが否めないがイクメンを目指すべく悪戦苦闘するという設定。そして、「だから荒野」は、夫や子どもに散々尽くしてきた専業主婦が嫌気がさして放浪の旅に出るという設定となっている。

こうした「専業主婦」の在り方を問うドラマが重なったのも「女性の活躍」などの世相的な背景が大きいのではないかと考える。ただ、ここで問われているのは、女性・妻としての生き方だけではなく、男性・夫の生き方にも一石を投じているということだ。

女性が家族を優先にすることで成り立ってきたのが「専業主婦」という存在。戦後の高度経済成長期からバブル期にかけて、男女役割分業主義が台頭し、「自分のための人生」を捨てることが女性の生き方であるとされてきた。女性が家族よりも自分のために何かをやりたいというのはわがままとさえ見られてきた。アベノミクスの影響で、女性が働くことに対してどうも経済的な側面がクローズアップされがちだが、一番の本質は「女性が自分らしく生きること」にほかならない。自分らしく生きると決めた結果、それが「専業主婦」という場合もあろう。それは大いに尊重すべきだ。しかし、女性にとって「自分のための人生」を歩める道筋を主体的に選択できる、その可能性を構築することができるかどうかがまさにカギとなろう。ドラマの主人公となる女性たちがどう自分の人生を選ぶのかを比較して観ると面白い。

一方で、男性にとっても同じことが言える。これまで男性にとって「自分のための人生」とは、「イコール仕事(であるべき)」とされてきた。実は、男性にとっても「仕事だけの人生からの脱却」はそろそろ本格的にクローズアップされるべき課題だ。ただ、働き方を見直して長時間労働を削減したとしても、すんなりと「仕事だけの人生」から脱却できるとは思えない。それは家庭における家事・育児だけではなく、地域活動やボランティア活動など、仕事と対等な何かを見つけられるかどうかが重要となる。「残念な夫。」では、育児を疎かにしてNBAのバスケットボールをTV観戦したり、家計を気にせずにユニフォームを収集する夫がいて、「だから荒野」では、妻や子どもたちにろくに向き合うこともなく、趣味のゴルフに興じる夫がいる。仕事のストレスを解消する趣味を否定するものではないが、家庭とのバランス感覚も必要であるということを示唆している。ただし、家事や育児を「やらなければならない」というネガティブマインドだけでは乗り越えることはできない。「やって楽しむ」というポジティブマインドに変容させることがポイントとなるであろう。ドラマにおいて夫の変化がどう演じられるのかを見届けたい。

また、上記以外のドラマにも離婚問題を扱ったドラマや、

「全力離婚相談」(NHK毎週火曜22時から)

ライバルの男性たちに勝負を挑む女性応援ドラマもある。

「問題のあるレストラン」(フジテレビ系毎週木曜22時から)

これらのドラマをすべて最後まで観るのは正直厳しいだろうが、社会の意識を変革させる一助になればと期待したい。

最後に一言。たまたまだとは思うが、いずれのドラマも22時開始。子育て中であれば、22時にはすでに子どもとともに寝息を立てているという場合も多い。3児を育てるひとり親の筆者もすでに2回ほど途中で寝落ちしてしまった(面白くなかったわけではない)。録画しようにも、水曜22時は「○○妻」と「残念な夫。」が重なっていて、どちらかは起きてみなければならない。オンデマンドで放送するものもあり、なんとか這いつくばって観ようとは思うが、子育て世代が観るには少々辛い時間かもしれない。

労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

1977年7月東京生まれ。03年3月日大院修士課程修了(政治学修士)。労働専門誌の記者、父親支援団体代表を経て、16年3月NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。これまで内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を歴任。現在、こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ち部会」委員、「こどもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、東京都「子供・子育て会議」委員などを務める。設立したNPOで放課後児童クラブを運営。3児のシングルファーザー。小中高のPTA会長を経験し、現在鴻巣市PTA連合会前会長(顧問)。著書「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)。

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