米国側では日米安保をどこまで評価しているのだろうか
・日米安保を維持すべきとの意見は米国の一般人・有識者ともに8割強。
・日米安保は日本と極東の平和と安定へ貢献していると考えている人は一般人・有識者ともに8割強。
・日米安保が米国自身の安全保障にとって重要だと考えている人も一般人・有識者ともに8割強。
「日米安保を維持すべき」賛成派は8割強
米国の人達は日米安保についてどのような考えを抱いているのか。その実情を外務省が2017年12月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
現在において日本の安全(国防、軍事的な国の保安を中心とした「安全」)は、自衛隊、そして日米安全保障条約(日米安保)に基づいた安全保障体制の二本柱で守られている。このうち日米安保について、米国側がこのまま維持すべきか、そうすべきで無いのかを聞いた結果が次のグラフ。2008年度に一般人の意見でややへこみが確認できるが(これは2008年度に行われた大統領選挙において、オバマ前大統領を推す民主党が日本からやや距離を置く政策を取ったのが遠因と考えられる)、一般人は大よそ漸増、有識者は8割後半から9割の高水準で「維持すべき」と肯定的意見を持っているのが分かる。
2013年度分では一般人の「維持すべき」が前年度比で22%ポイント、有識者が前年度比で16%ポイントと大幅な下落を示しており、データが残っている1996年度以降においては一般人・有識者ともに最低の値となってしまった。また、2013年度分のデータを精査すると、その前年2012年度から「維持すべき」で減った分のほとんどが、「分からない」に流れていることが確認できる。
この下落については2008年度の時のような特段の理由も想定できない(日本におけるオスプレイに関する過剰な否定的報道が米国側の反発を誘った可能性はゼロでは無いが、その程度でここまで下がるような情勢には見えない)。多分にイレギュラー的なところがあったと見た方が道理は通る。
2014年度以降は一般人・有識者ともに、値は少しずつ戻しつつある。同時に「そうは思わない」、つまり安保維持に反対する意見は調査開始以来一貫して1ケタ台のままなことに留意しておく必要はあろう。
日米安保はアジア、さらに米国自身に貢献しているか
日米安保は、日本と極東の平和と安定へ寄与貢献しているものなのか否か。軍事的、戦略的、政略的な現実問題の上での判定は別として、「貢献している」と認識・判断をしている人の割合は次の通り。
有識者は高い値で安定、一般人は2008年度の大統領選時に多少のへこみを見せるも全般的には漸増傾向を見せている。一般人の方が選挙運動で心境を左右されやすいとの点でも注目するべき内容だが、ともあれ直近では一般人83%・有識者88%が「日米安保は日本と極東の平和と安定へ貢献している」と評価をしている。一般人の2008年度における急落は、上記の通り大統領選挙に絡んだ動きの可能性が高い。
最後に、日米安保が日本やアジア諸国では無く「米国自身の」安全保障にとって重要か否かの問題。これは日本サイドでも気になる項目だが、結果としては直近で8割強から「重要視している」との回答が得られた。
興味深いのは、この点、つまり日米安保におけるアメリカ合衆国への直接的な利益との観点では、一般人も有識者もさほど変わりないレベルで高評価を与えている点。これをどのように解釈するかは人それぞれだが、少なくとも日米安保はお互いにとって重要度が高いとの認識が、一般レベルでは浸透していると考えて問題は無さそうだ。
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※米国における対日世論調査
外務省がニールセン(Nielsen)社に委託し、米国内において電話により2017年3月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。