1日千円手渡し、生活保護費の分割支給はあり? 群馬県桐生市で一部不支給も発覚、問題の背景は
群馬県桐生市。東部で栃木県境に接する人口約10万人の市が、生活保護費を月ごとに満額支給せず、1日千円などに分割支給していた問題が発覚した。のみならず、一部の未払いもあり、本来もらえる金額の半分ほどしか支給されなかった人も中にはいた。市側は、分割支給の理由を「パチンコや酒など遊興費の支出が多い受給者が生活不能に陥らないようにするため」などと説明するが、妥当なのか。 【写真】「しょうがいか(が)あります」「×ひとがたくさんいるとこわくてにげたくなります」 誤字脱字交じりの文字は震えて乱れ、何度も書き直した形跡も… 弟を死に追い込んだ、2枚のメモ
有識者や支援団体は「受給者の自己決定権を侵害する憲法違反だ」と批判する。そして背景に、不正受給を防ぐことに重点を置いた2013年の生活保護法改正があるとの見解を示す。問題点を探った。(共同通信=赤坂知美) 筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽週7千円振り込み、60代男性のケース 桐生市に住む60代の男性受給者が取材に応じ、実情を語った。 男性は持病があり、働くことが困難な状態。2017年に生活保護の受給を開始すると、毎日ハローワークに行くよう市職員から指導された。車は持っておらず、交通手段は徒歩か自転車。通える範囲で仕事を探すのは難しかった。就労先が見つけられないと「なんで仕事に就かないんだ」と責められ「嫌だったら生活保護をやめてもいいんだぞ」と言われたこともあった。「生活保護を受けている間、ずっとこの苦しみが続くのか」と思うとつらくなり、1年半後、受給を辞退した。
問題が起きたのは持病が悪化して入院し、受給を再開した2020年のことだ。退院後、市職員から電話で「キャッシュカード、通帳、はんこを持って市役所に来てほしい」と呼び出された。事前にどのような用件か説明はなかった。 市役所に行くと、資産や保護費の管理を行うNPO法人を紹介された。市職員は「住居の身元引受人が必要だから契約をするように」と説明。必要なのは身元引受人のみで金銭管理はいらないと思ったが、「市の言うことに間違いはない」と考え、言われるがまま金銭管理の委託契約を結んだ。持ってきたカードや通帳、印鑑も手渡すことになった。 男性は自分の金銭管理能力に問題を感じておらず、ギャンブルなどの浪費癖もない。 その後、男性が持っている別の口座に毎週7千円が振り込まれた。別途支給される交通費などを含めても、本来もらえるはずの月額約7万円の半分ほど。「食費や光熱費を切り詰めて節約に励んだが、物価高でやっていけないと思った」。口座への入金日前にはいつも残金が少なくなり、食事が十分に取れず頭がクラクラすることも。いつの間にかNPO法人宛てに郵便の転送もされていて、選挙の投票券や新型コロナウイルスのワクチン接種券も問い合わせるまで手元に届かなかった。