<クールジャパン>表現規制への懸念も
海外へ日本発のコンテンツを発信する「クール・ジャパン戦略」が政府主導で進む中、アニメやマンガの表現規制問題が、いま改めてクローズアップされています。
日本のマンガは「児童ポルノ」?
諸外国では一般に、日本より厳しい表現規制が敷かれており、暴力表現や性描写、特定の宗教・人種を戯画的に描く表現などは厳しくチェックされるのが通例です。未成年者の性的魅力をアピールする表現は「児童ポルノ」として認めない姿勢をとる国も少なくありません。 たとえばスウェーデンでは、2009年、自宅のパソコンに日本のマンガの画像を保存していた男性が、児童ポルノ所持の容疑で逮捕されるという事件が発生。最高裁まで争った末にこの男性は無罪となりましたが、表現規制の厳しさを象徴する例となりました。 こうしたことから、「クール・ジャパン」を海外発信する際にも、表現上の配慮が必要だと指摘する声もあります。 経済産業省商務情報制作室クリエイティブ産業課クール・ジャパン海外戦略室長補佐の小田切未来氏は、5/1付CNET Japanのインタビューで、「日本のアニメには、(表現によっては)海外でポルノ同様に扱われることで、ビジネスチャンスの可能性が狭まるものもあったということを聞いたことがあります。そういった点も含めて基準を設けないといけないでしょう」と述べ、クール・ジャパン戦略の支援対象には、表現上の基準を設ける必要があるという認識を示しました。
日本でも表現規制が進む?
日本でも、欧米諸国のような規制を求める動きが活発になっています。自民党政調会長の高市早苗衆院議員らは、児童ポルノ禁止法改正案を議員立法として近く国会へ提出する見込みです。この改正案は、児童ポルノの販売だけでなく所持も禁止することを盛り込んでいるほか、マンガ・アニメなどの二次元の児童ポルノ的表現についても、その影響を調査研究した上で、施行後3年をめどに規制を検討することとしています。 こうした動きに対し、懸念の声も上がっています。みんなの党の山田太郎参院議員は、5月8日の参議院予算委員会でこの問題を取り上げ、「マンガやアニメの中で想像上の登場人物の肌が少しでも見えていたら行き過ぎた自主規制が行われて、日本の漫画やアニメが面白くなくなる、また廃れてしまうのではないか」と発言しました。 現在、クール・ジャパン戦略を統括する稲田朋美内閣府特命担当大臣は、かねてより児童ポルノ問題に熱心に取り組んできたことで知られています。稲田大臣は、5月14日の会見で記者の質問に答え、表現の自由は憲法上の重要な権利だと認めつつも、「全て無制限というわけではないというふうにも思います」と述べました。 日本のアニメやマンガは、諸外国よりも緩やかな表現規制のなかで創造性を発揮してきた歴史があります。規制と、表現の自由との折り合いをどうつけていくのか。今後の議論の行方が注目されます。