決して博打ではなかった……賛否集まるポーランド戦西野采配の真相に迫る
耳をつんざくような大ブーイングのなか、1点ビハインドの日本がボールをちんたら回して時間を稼ぎ、有終の美を飾りたいポーランドがそれに乗っかった。 ある意味、前回王者のドイツが韓国に敗れた以上の衝撃を受け、無気力試合の末にスコアレスドローに終わったフランスとデンマークの試合が可愛く思えるほどだった。 誤解してほしくないのは、時間稼ぎや談合試合を嫌悪しているわけではないということだ。ルールに則っている以上、それは問題ない。 しかし、今回の場合、日本は0-1で試合を終えても、1-0でリードしているコロンビアがセネガルに追いつかれたら、グループステージ敗退が決まるのだ。 他力に委ねた談合試合――。極めて危険な、賭けだった。 しかし、西野朗監督の判断は果たして、本当に大博打だったのだろうか……。 ロシア・ワールドカップのグループH最終節。試合前の順位は、首位が勝点4の日本、2位は同じく勝点4のセネガル、3位は勝点3のコロンビア、最下位が勝点0のポーランドだった。 ポーランドはすでに敗退が決まっていて、日本とセネガルはともに得点4・失点3。当該対戦でも引き分けているため、フェアプレーポイント(※警告は-1、警告2枚の退場は-3、一発退場は-4、警告のあとの一発退場は-5)によって日本が優位に立っていた。 1、2戦目を同じスタメンで戦った日本は、6人を入れ替えてこの試合に臨んだ。引き分けでも決勝トーナメントに進出できるが、スタメンの選考に温情は一切ない、と西野監督は強調した。 「出てない選手を起用したいという気持ちだけでメンバー変更したわけでない。やれる、戦える、勝てる。勝ち上がることを前提で考えた。6人は良い状態だったし、同じようなチームスピリッツでやれる選手を起用した」 GK川島永嗣のビッグセーブに助けられながら、日本のほうが決定機を多く作った前半を終え、ハーフタイムでも引き分け狙いではなく、あくまでも勝利を目指すことを確認した、と指揮官は言う。 「このままで良いという選択ではダメだとハーフタイムに選手たちに伝えた。守り切る考えはここに置いてピッチに出てくれ。アグレッシブに、攻撃的に勝ちに行く、そのスピリットを持ってピッチに出てくれ。このままの状況はあり得ない、と」 後半が始まってすぐ、足を痛めた岡崎慎司がプレー続行不可能となり、代わって大迫勇也がピッチに入った。これで交代カードの1枚を使った。 ゲームが動くのは、59分のことだ。FKからベドナレクに先制ゴールを決められてしまうのだ。このとき、同時刻にキックオフしたセネガル対コロンビアはまだ0-0。この時点でセネガルが首位に躍り出て、コロンビアが2位、日本は3位に転落した。 その直後、宇佐美貴史から乾貴士にスイッチしたのは、あくまでも同点に追いつくための策だろう。この時点では、指揮官は攻めの姿勢を見せていた。 事態が急変するのは、残り時間が15分ほどになった頃のことだ。 コロンビアが74分に先制点を奪うのである。これでコロンビアが首位となり、勝点4でセネガルと並ぶ日本が、フェアプレーポイントの差で2位に浮上したのだ。