【オートレース】トライアル前半の窮地からV字回復の鈴木宏和「7枠はむしろ歓迎」~川口・SGスーパースター王座決定戦
「芸は身を助ける」とはまさにこのことです。日本一のスタートマスター、鈴木宏和が2024年スーパースター王座決定戦で自身初となる大みそか戦士となった。 前半のトライアル2走を終えて5、7着。2回戦終了時点では、アメリカ横断ウルトラクイズ的にいえば、国内の野球場で脱落するような窮地に立たされた。しかし、この男は体は小さいがハートは太くもでっかい。 「まあ、ここまで来たら切るしかないですもんね。いきなり勝負駆けが続きますが、やってみます」と腹をくくった。そして、切って、切って、崖っぷちからのV字回復を大成功させた。3回戦は1着。4回戦11Rは道中2番手からひとつ着順を落としたが、ボーダーにかろうじてリーチする3着でゴールインした。 そして、ドラマが待ち構えた。12Rで3車が複合落車して誰が勝ち上がるのか、敗退するのか。絶妙に運命が動いて、最後の1議席は鈴木の手に渡った。「はい、運がありましたね。道中で松尾(啓史)さんにやられた時は、もうとにかく3着だけは絶対に守らないと!と願いながら走っていました!」 実際のところ、まだ車は合っていない。万全とは言いがたい。「ちゃんとは合っていませんが、逆にそんな状態で残れたことはうれしいですし、自信にもなります。GⅠを初めて勝つことができましたが(飯塚開設記念)、自分の中ではまだSGを獲れるとかいう実感は持っていません。GⅠ、GⅡは行けるという手応えはありましたが、SGまでは…」 そう本人は冷静に己の現在地を認識しているが、もしそうだとしても、男には最後の望みがある。それは、もちろんスタートに尽きる。「7枠になりましたが、自分はむしろ歓迎なんです。逆に内の方が切りにくいというか。一番好きなのは真ん中あたりです。なぜ?う~ん、時計の見え方だったり、自分の切り方なんでしょうか。だから、全然外はいやじゃないです!」 人が望まぬところを好む。達人とはそんなものなんでしょうか。彼がトップスタートなら、レース展開の潮目は変わる。確実に激変する。今年最後の大一番。陰の演出者は、実は鈴木宏和名人かと。(淡路 哲雄)
報知新聞社